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即位 16
「あれ……なんで涙が……」
「それよりもだ」
感傷的な雰囲気を嫌ってか不機嫌そうに孝基が切り出した。
「『外憲』だな問題は」
バスラもまたすぐに孝基の考えを読んだように呟いた。
「派手な即位式をやれば恐らくは刺客を送り込んでくる……さきのラスバ帝とは攻守を入れ替えた形にはなるがな」
「破壊工作は『外憲』の十八番だ。何があってもおかしくない」
孝基の複雑そうな表情を見てラスコーは笑顔を取り戻した。
「即位式などいりません。今この場で即位します」
「そんな……殿下」
慌てる様子のバスラを包み込むような笑みでラスコーは頷いている。
「そもそも玉座が無いのに即位式も何もないでしょう。余が即位すると言えば即位したことになる」
「なるほど、仮初の朝廷には相応しいことかもしれませんな」
「西園寺卿まで……」
孝基までラスコーに応えるようにしているのを見てバスラもまた唖然としながら呟いた。
「所詮戦争を有利に運ぶための段取りですから、お祖父様が心配なさることではありません」
「はあ……」
バスラのため息に諸官もまたため息をついた。勝ち目のない戦いの先には何が待っているのか。誰もがそれを考えないようにしていただけに吹っ切れたようなラスコーの表情に癒される余裕すら彼らには無かった。




