即位 13
ゆったりとしていて荘厳な管楽器をメインとする遼州音楽の響きが央都王宮に響いた。
「殿下……いえ、皇帝陛下」
下女の言葉にムジャンタ・カバラは静かに頷くと歩き始めた。
廊下には遼州各国の大使達が頭を垂れて彼を見守っていた。その間を当然のようにゆったりと音楽に合わせるようにしてカバラは歩みを進めた。
「暗君と言うが……なかなか立派なものじゃないか」
「なあに、儀式だけではわからんよ」
大使達の陰口がカバラの耳にも届いていた。だがその度に唇を噛み締める以外の動作は取ることがなかった。
『奴らはここにラスコーがいればいいと思っているのだろうな』
カバラはそんなことを考えながら歩みを進めていた。遺伝子が覚えていたとでも言うように歩みに迷いはなかった。その迷いのなさが逆にカバラを不安に陥れた。
「殿下……」
玉座の手前では首相を差し置いて一将軍に過ぎないガルシア・ゴンザレスがカバラを迎え入れようとしていた。
「ゴンザレス」
「なんでしょうかな?」
「貴公は下座のはずだが」
自分の口から出た最大の支援者への言葉にカバラ自身が驚いていた。だが、ゴンザレス将軍はそれが当然というようにそこに立ち尽くしじっとカバラを見つめていた。
「殿下……」
「ならばそれも良いだろう」
それだけ言うとカバラはゴンザレス将軍を避けるようにして玉座へと向かった。
天窓から落ちる日差しが緑色の翡翠製の玉座を照らしている。静かに彼が玉座に座ると一斉に臣下達による万歳がなされた。
「浅野……」
ゴンザレス将軍の陰に隠れている宰相に声をかけた。カバラの様子を静かに伺っていた文官の長はそのまま静々とカバラに寄り添った。




