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即位 12

沈黙が戦場を支配していた。


一週間前の兼州軍の州境への撤退のあと、散発的な衝突はあるものの央都、兼州ともに積極的に仕掛けることはなかった。


「今日も歩哨ですか」


兼州軍士官の言葉に中年の徴発兵は苦笑いを浮かべた。


「ベルルカンに比べたら本当に平和だよ」


「まあ飯が食えるだけマシということか」


そう言うと士官はそのまま州境の向こうに目をやった。視線の下には鉄条網と塹壕が見えた。


「このままではすまんだろうな」


「すみませんか」


「央都と兼州で即位となれば衝突は避けられないだろうな」


「下々のものには関係のない話だ」


中年下士官は吐き捨てるようにそういった。


「そうだな……だが偉い人はそうは思っていないだろうな」


「つまらぬメンツですか……戦って死ぬのは兵士だというのに」


「喜んで死ぬ馬鹿もいるみたいだがな」


士官の言葉に下士官は視線を味方の監視塔の下に並ぶ兵士達に目をやった。そこには談笑しながら花札をしている若い兵士達の姿があった。


「胡州浪人……迷惑な話だ。連中がこの州に来なければ……」


「確かにそうだな。連中は死ぬ気でここに来ているからな。命を惜しむな名を惜しめ……連中の合言葉だが」


「理解できませんな」


下士官はそう言うと肩に下げた銃の位置を直した。空はすっかり晴れ渡っている。


「早く終ってくれないものですかなこんな時代」


「なあに、偉い人が決めることだ。俺達はただ従うだけ」


士官の言葉に下士官は静かに頷くしかなかった。

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