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即位 10

「今回の事態に対し東和の態度は一定していない。飛行禁止区域の設定で兼州に寄ってみせると思えば兼州の色の濃い在東都大使を追放処分にしたりする」


「難しいですな、政治は。ですが」


花鳥はそう言うと視線を再び康子に向けた。


「時に理屈だけで動くのではなく感情で動くのもいいかもしれませんな」


「感情で動く?」


康子は花鳥の言葉がわからないというように繰り返した。


「そう、自分の意に沿って動いてみる。行き詰った時にはそんなことも必要かもしれません。まあ出来損ないの絵師の言葉、聞き流して頂いても結構ですが」


「自分の意に沿って動く……お義父様」


声をかけられた重基はゆっくりと自分の湯呑に茶を注いでいるところだった。


「東都に行ってもよろしいでしょうか?」


「東都?なぜ兼州離宮じゃないんだ?」


「法術師がこの戦いに関わるのは良くないと思いまして……それにこの戦いは兼州に勝ち目はない」


「そうだな。だがそれで東都になぜ?」


重基の問いに答えるわけでもなくそのまま康子は部屋の奥へと消えた。花鳥も重基もただ黙って座っている。


奥から戻ってきた康子の手には薙刀が握られていた。静かに鞘を払い、白銀の刃が赤い胡州の空に晒される。


「花鳥さん。絵は今描いていただけますでしょうか?」


「今ですか?」


花鳥のとぼけた答えを無視するようにして康子は白足袋のままで中庭に降り立った。


瞬時に薙刀が振り下ろされ、そして振り上げられる。その尋常ならざる速度のために風切り音がその場に広がった。


「用意をしてまいります」


驚いたとでも言うように花鳥はそのまま食客達が暮らしている奥の棟に向かって走り出した。


「ラスコーを助けるつもりか?」


「私に出来る最大限のことをするつもりです。でもご安心ください。兼州離宮には近づきませんから」


「そうしてくれると助かる」


重基はゆったりと構えて茶をすすった。康子は再び薙刀を振り下ろし、そしてそのまま振り上げてみせた。


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