即位 7
「暗君の子として生きていく……苦労が多そうだ」
「事実苦労していますよ」
孝基の言葉にラスコーは苦笑いで答えた。孝基はそのままロッカールームの隣に置かれた飲み物の販売機の前に立つ。
「庶民の飲み物でも飲みますか?」
「いえ、いいです」
「まあこの機械のコーヒーはマズイですから」
そう言いながらも孝基はアイスコーヒーを選ぶ。出てきた缶を無造作に取り出すとそのままおもむろにプルタブを開けて飲み始めた。
「父上が即位されるということは……」
「ラスコー殿下が即位を拒まれる理由も無くなったということです。遼南の正統を示さなければならない。その為には殿下にも覚悟をしていただく」
「覚悟……」
ラスコーは難しい表情を浮かべながら黙り込んだ。コーヒーを飲み終えた孝基はそのままラスコーを見つめていた。
「そうです、覚悟をしていただく。恐らくこの戦争は勝てない。それでも即位するということは……」
「負ければ万死に値しますね」
「そう。負ければ死が待っている……普通に行けば」
「死の覚悟をしろと」
緊張した面持ちのラスコーに孝基は笑みで答える。
「覚悟はしてもらうに越したことはないですが、死なせませんよ……この命にかけても」
「しかし……叔父上には多くの命が掛かっているのですから」
「それ以上の命を殿下は背負っていらっしゃる。俺の命も含めて」
孝基の言葉にラスコーはただ黙り込むよりほかになかった。




