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即位 6

悠然とロッカールームを出ようとした西園寺孝基を待ち構えていたのは少年ムジャンタ・ラスコーだった。


「殿下……言って頂ければ良かったのに」


「良いのです。訓練だったんでしょ?」


「まあ出来るうちに出来ることはしておく主義なもので……その様子ですとまたもめましたねカグラーヌバ卿と」


タオルを肩から担ぐようにしてぶら下げて歩く長身な孝基を追いかけながらラスコーは何も口にできないでいた。


「央都はほぼカバラ殿に帝位を継いでいただくことでまとまったようです。そうなれば……」


「父上は……」


「?」


神妙な表情で立ち止まった少年に孝基は不思議そうな表情を持って接していた。


「父上はそんなに余が憎いのでありますか?余は父上にそんなに憎まれることをしたのでありますか?」


少年の口から出た言葉にただ孝基は呆然とするしかなかった。考えてみれば対立している央都とは少年の父を担ぐ一党のことである。そうなればその行動は父の意志と感じてもおかしくない話だった。


「憎み憎まれる父子……自分の境遇が若干幸福に思えてきましたね、殿下の言葉を聞いていると」


「そうかもしれませんね……余は父上を憎む気にはなれません」


「そりゃそうでしょう。あの御仁に何かを決めることなどできやしない。ただ担がれてゴンザレス将軍の操り人形として勅命を下すだけ」


「そういう意味ではないのです……いや、そういう意味なのかもしれません。父上は何もお分かりになっていない……お分かりになることもできない」


「まあ境遇的にもゴンザレス将軍に不都合な話はカバラ殿下にはもたらされないでしょうな。それ以前に能力的にそんな判断ができるようなお方では無いと聞いています」


「暗君……」


ラスコーの言葉に孝基はつい吹き出していた。


「なんで笑うんですか?」


「ハハッ!父を暗君呼ばわりとは……しかし確かにあの御仁は暗君以外の何者でもないさもなければ東宮の位を失うわけがない」


孝基は腹を抑えながらなんとか廊下の壁に寄りかかって態勢を持ち直した。

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