即位 5
「あれを担ぐんですか?大変ですね」
吉田の言葉に憮然とした表情のゴンザレス将軍。
「貴様は気楽でいいだろ。傭兵は戦争が終わればそれでひと仕事終えたことになるのだから」
「そう言う割には口元が笑ってますよ」
「わかるか」
ゴンザレス将軍の表情が不意に緩んだ。
「あれではワシ以外の誰が実権を握れるというのだ?南都のアンリは賢いに過ぎる。東海の花山院兄弟は愚直だ。どこまでもずる賢くなければあの御仁を動かすことはできんよ」
「まあそうでしょうな。金はもらっているんだから俺が何を言うわけでもないですが」
吉田はそう言うとそのままゴンザレス将軍の座っている首相執務机に寄りかかる。そのまま当然のように置かれたゴンザレス将軍の私物の中からパイプを一つ取り出すとそのまま手に取って眺め始めた。
「だが……これで兼州も即位をするでしょうな。自分が正統なのだと」
「構うものか。勝った方が本当の帝だ」
そう言うとゴンザレス将軍は吉田の手からパイプを奪い取って手前のパイプ用灰皿に置いた。
「ただ……それを東和とかに分からせるには……」
「そうだ。ラスコー殿下には死んでもらわないといかん。亡命政府でも作られた日には目も当てられない」
「巡洋艦、『央都』。完成したそうじゃないですか」
それとない吉田の振りにゴンザレス将軍は笑みを浮かべた。
「本来はアステロイドベルト近辺の権益拡大に使うつもりだったが……兼州離宮掃討が初陣になりそうだな」
ゴンザレス将軍はそう言うと手にした葉巻にハサミで吸い口を開けた。
「ラスバ帝の遺産。それをラスバ帝が定めた東宮を討つために使う。皮肉なものですね」
吉田の言葉に頷きながらゴンザレス将軍は悠々と葉巻に火をつけて吸い始める。
「時代とはそんなものだ」
タバコの煙はゆっくりと立ち上り、吉田は眉をひそめながらそのまま首相執務室を後にした。




