即位 1
「引いたか……西園寺孝基一人では何もできまいて」
余裕を持って葉巻を燻らせながら央都の首相執務室の椅子に座るガルシア・ゴンザレス将軍。そばにいる首相、浅野英次も懐刀の傭兵吉田俊平少佐もにこやかに微笑んでいた。
「ここで一つイベントが欲しいですね」
吉田の言葉にゴンザレス将軍は少しばかり戸惑った表情をした。
「イベント?」
「そう、イベント」
吉田はそう言うと応接セットに置かれたコーヒーを一息で飲み干す。
「もしかして……即位の儀では?」
こちらも戸惑ったような表情の浅野の言葉に吉田は静かに頷いた。
「即位か……確かに今ならその効果は大きいだろうな」
「カバラ様が帝位にお付になればその言葉は帝の言葉だ」
「帝の言葉?正確には将軍の言葉が帝の意志となるわけでしょ?」
意地悪い吉田の言葉にゴンザレス将軍は思わせぶりに微笑んで見せた。
「確かに帝の言葉となれば兼州の命脈だけは保ちたい南都の連中も黙らせることができるだろうな。そうなれば……」
「そこで初めて将軍直参の軍を動かして勝利する。それが最良の策かと……」
「吉田君。君も随分と悪い奴じゃないか」
「悪ぶっているつもりは無いんですがね。ただ状況を冷静に分析しているだけ……」
「そう言うが、カバラ様の即位。胡州はどう動く」
ゴンザレス将軍の問いに吉田はしばらく目を瞑り考える素振りを浮かべた。
「ラスコー殿下の母君、今は亡きカグラーヌバ・ラスタ妃の妹君は西園寺家の次男の嫁です。そして今の胡州では西園寺家は斜陽の大君に過ぎません。主流派の烏丸派としてはカバラ様の即位に異を唱えることは無いかと……」
はっきりと断言する吉田に満足げにゴンザレス将軍は頷くとそのまま手にした葉巻を灰皿に押し付けて火を消した。
「ならば決まりだ……浅野。占術師を呼べ……日を決めるぞ」
そのまま精力的な表情を浮かべてゴンザレス将軍は立ち上がった。




