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混沌の戦場 17

「撤退?」


目の前の強気の士官の言葉にカグラーヌバ・カバラは苦い表情を浮かべた。


「しかし東海と東モスレムの動きは封じることができたわけで……」


作戦参謀の言葉にカバラは大きく頷く。だがあくまで強気に西園寺孝基は机を強く叩いた。


「今のうちならば余裕を持って部隊の撤収が可能です。一旦は引いたとは言え東海東モスレムが物量で押してこられたらそのときは完全に終わりですよ」


「そうなれば勝てる戦いも勝てなくなる……」


「そこまで分かっているなら迷うことは無いでしょう」


孝基の言葉に兼州の将軍達は顔を見合わせた。


「伯父上……勝てると思って引くのですね」


それまで黙り込んでいたムジャンタ・ラスコーの言葉に場は緊張に包まれる。


「負ける戦をするつもりでここにいるわけじゃないんですよ俺は」


その言葉にラスコーはニコリと笑うと視線をカバラに向けた。


「お祖父様……西園寺公の言葉をここは信じてみてはいかがでしょう?」


「うむ……」


自分の侵攻作戦が退けられたこともあり、カバラは簡単には引くつもりはないように見えた。


「みなさんもお忘れかもしれませんが作戦の成否はゴンザレス将軍の命一つで決まる。ゴンザレスの首を取れれば我々の勝ち、例え央都が落ちてもゴンザレスが生き延びれば我々の負け……」


「それは相手も同じことだ」


カバラはやけくそのように呟く。


「同じこととは?」


「殿下の首一つで勝負が決まるということだ……」


「そこまで分かっておられるのなら話は早い。今は兼州離宮の守りを固めるとき……違いますか?」


そんな孝基の言葉にカバラは苦笑いを浮かべて頷いた。


「ならば決まりですね。突出した部隊は州境まで撤退。撤退の間我々が上空から支援します」


「うむ、頼む」


カバラはそれだけ言うと不服そうに立ち上がり孝基を一瞥したあとそのまま何もなかったように作戦会議室から姿を消した。

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