混沌の戦場 16
「もうそろそろ……」
孝基がつぶやく瞬間だった。通信画面の中の相馬の表情が変わる。
「敵影三!央都方面から進行中!」
「央都のアサルト・モジュール部隊か……」
そう言うと孝基は少し考えた風をしたあとそのまま操縦桿を倒した。
「引くぞ」
「いいんですか?このままでは東海軍の進撃を完全に挫くことは……」
「無駄な消耗はしたくない。それにこちらの手もあまり見せたくないからな」
「こっちがアサルト・モジュールに慣れていないことが分かれば対策も立てられると……」
相馬の言葉に渋い表情を浮かべながら孝基はそのまま機体を兼州離宮に向けた。すでに東海の航空部隊は撤収し、地上も混乱に陥りつつもなんとか立て直しつつある状況だった。
「あと十分あればな……」
「欲張るなよ。どうせ物量に任せてこられたらおしまいなんだ」
孝基はそう言うとそのまま地上すれすれに機体を進める。相馬はそのやや上方を続いた。
「東モスレムに向かった連中ですが……」
「まああちらも無理はするなと言ってあるからな。たった七機の一式だ。使いどころは間違えないようにしないとな」
ガイドビーコンが孝基の真紅の機体に向けて伸びる。そのままビーコンに従って真紅の機体は離宮の外苑に着陸した。
「まだまだ戦いは続くんだ」
孝基はそう言うとガイドに固定された機体のコックピットのハッチを押し開けて蒸すような日差しの中に飛び出していった。




