混沌の戦場 12
「ここまでゴンザレス将軍が慎重だとは読みきれなかったようだね」
東海の首府新東の陸軍局の局長室。局長の花山院康永中将は頭を掻きながら自分を見つめてくる胡州外地憲兵隊長真田少佐を見つめていた。
「紅籐太も計算外でしょうな……だからこそ兼州東部三県が無防備になっている」
「現状の央都への突出部の戦線を維持するためでしょう……ともかく突出部が央都に突き刺さっている限り胡州浪人の士気は落ない」
康永は口の前で手を組みながら複雑そうな表情で真田の言葉を待った。
「東海には動いていただきたい」
「見返りは?南都のアンリは東海の自治権の保証と空軍三個航空隊の設立許可を出してきてるみたいだがね。まあ兄貴は迷っているみたいだが」
「迷っているのは康永侯の方だと思いますが……自治権も空軍力も東海の独立を想定しての提案でしょう。直永侯は東海の胡州編入の方が喜ぶことですね」
「確かに……だがそれを言うなら胡州の遼南での窓口の中で最もダークな『外憲』の隊長はなぜ私に兼州進撃を期待する?」
相変わらずじっと目を見開いて目の前に立つ真田の顔を見つめる康永。
「胡州には遼南に直轄領を持つほどの実力も関心もありませんよ、今のところ……。外惑星とのアステロイドベルトの小惑星の所有権確定が最大の関心事です。うちもすっかり冷や飯を食わされることに慣れていて……」
「謙遜する必要はないよ。東モスレムに対してもうちと同様の工作を行っているんだろ?」
「良くご存知で」
『東モスレム』という言葉にぴくりと眉を動かしながら真田は応えた。元々『外憲』は東モスレムにおけるイスラム過激派掃討を目的として設立された経緯もあり、東モスレムにおける主流派であるイスラム穏健派、仏教徒、遼州在地信仰信者三派の構成する三派連合に『外憲』がある程度の影響力を持っていることは公然の秘密だった。




