混沌の戦場 11
「オーギュストは何をしているんだ!」
苦々しげにそう言うと遼南帝国宰相の椅子に座ったガルシア・ゴンザレス将軍は手にした葉巻を灰皿に押し付ける。
「南都はできる限り部外者を装おうとする……最初から読めていたことでしょう」
浅野英次はそう言うといつものようにソファーから顔を出した。
「だとしてもだ。敵の布陣に穴が多いのは誰が見てもわかる。あれだけの数の無人偵察機を飛ばしておいて勝てる戦いもできんのか!」
「なら我々に働けということでしょう。それに息子のアンリの動きも気になります。ラスコー殿下を『兼州王』に封じるという線で議会の有力者と話をつけて回っているそうです」
「議会の古狸共がそれに乗るとは思わんが……一番乗りそうなのは」
再び机の引き出しから葉巻を取り出し吸い口をナイフで切り取り静かに先をガスライターで炙るゴンザレス将軍。その姿を凝視しながら浅野は口を開いた。
「東海です。花山院直永は気の小さい男です。戦争で乾坤一擲の勝負に出ることはないものの政治的決着で負けずに済む方法があるならそちらにつくでしょう」
「わかっている。だが今は我が軍を動かす時ではない。火が付いた兼州軍を相手にすればやけどをする。東モスレムと北天への脅しとなる戦力は残しておきたい」
「ですから現在兼州との国境線の封鎖を遼北に頼んでいるんです……あのアカと話をするのはしゃくにさわりますが……現実はそうも言っていられない」
「まるでこちらが追い込まれているような状況だな」
「楽に勝つことが目的ならそれなりの苦戦はするものです。力押しでよければ三日で兼州くらいなら落とせるでしょうが」
浅野の言葉に葉巻を吸い続けているゴンザレス将軍はニヤリと笑ってみせた。




