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混沌の戦場 10

「それとアンリ。本当にゴンザレス将軍はラスコー殿下に刺客を差し向けるつもりなのか?」


オーギュストのたどたどしい調子の問いにアンリは笑顔を浮かべた。


「ラスバ帝に続いてラスコー殿下を亡き者にする。まああの御仁ならやりかねませんし近くに傭兵軍団をいくつか束ねていますからやる可能性はあるでしょう」


「やるなら今のうちが良いな」


「父上は正直者だ……ただ今の段階でラスコー殿下を消せば東海は離反するでしょう。東モスレムも独立の志向を強めるでしょうし……父上は?」


「ワシの持ち札も増えるからな」


「だったら今のうちは無いでしょう。四面楚歌になるくらいなら多少の犠牲は出しても央都の兵力で兼州を屈服させるでしょう」


アンリはそう言うと静かに頷く。


「なら我が軍は……」


「動かないに限りますな。これ以上兼州は戦線を広げる力はないでしょう。早晩央都軍が動くのですから父上は黙って座っていればいい」


「人を置物みたいに言う。それでも息子か?」


「父上だから本音を申し上げているのです。身内でなければ持ち上げて総攻撃を進言している」


「食えない奴だ」


アンリの言葉にオーギュストは冷や汗を浮かべながら吐き捨てるようにそう言うと通信を切った。


「君、戦線に動きは?」


参謀を見つけたオーギュストは急にしゃっちょこ張って敬礼する士官に尋ねた。


「現在のところ特に動きは……」


「こちらからは仕掛けるな。戦線を維持しつつ消耗に備えよ」


「は!」


オーギュストの言葉に士官は走って消えていく。


「央都での工作はアンリに任せてワシはじっと戦線で黙っていよう」


自分自身に言い聞かせるようにオーギュストは呟いた。

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