混沌の戦場 5
「どうもイライラしていけないな」
西園寺孝基は廊下で偶然出会った共を連れたムジャンタ・ラスコーにそう語りかけていた。
「戦争の話ですか?」
「まあそんなところだ。そうだ、時間はあるか」
「ええまあ」
日課の運動の時間だったがラスコーはそれとなく侍従の顔色をうかがうとそう答えていた。
「ならついて来てくれ」
孝基の言葉に少しばかり不安を感じながらラスコーは孝基に付き従った。
「要塞化も終了しました」
「ああ、それでも敵が来れば気休めにもならないだろうな」
不甲斐ない自分を恥じているように孝基が俯く。ラスコーはそれとなくそれを察して沈黙した。
通路は以前孝基が案内した格納庫へと向かっていた。
「あの『アサルト・モジュール』とか言う兵器のことですか」
「まあそうとも言えるがそれ以外にもある」
通路が突き当たり、それまでの木目調の落ち着いた雰囲気から金属の無骨な扉が違和感を持って感じられる。
孝基はすぐに指紋認証をすべく扉の隣の窓に手を突っ込んだ。
『指紋認証終了しました……声紋認証です。合言葉をどうぞ』
「『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり』」
『声紋照合……西園寺孝基少佐……間違いありませんね』
機械の音声に無表情を浮かべたままの孝基。扉は開き中は活気に満ちていた。
「大将……いつになったら俺等の出番になるんですか?ここの連中仕事が早いのはいいんですがろくに遊び相手にもなってもらえ……殿下?」
「いや、どうも」
まくし立ててきた孝基の右腕とも言われる相馬慎吾大尉の言葉にラスコーは苦笑いを浮かべつつ挨拶をした。
「なんだ……ここは兼州離宮だ。その主がどこに居ようが勝手だろうが……こっちだ」
ラスコーをちらちら見ながら背後の部下達と何やら話し込んでいる相馬を無視して孝基は歩き続けた。
「最新型ですか……」
「まあラスバ帝はこのことあるを予見していたみたいですよ。とりあえず十機の1式がある」
「あの奥の機体は……」
赤黒く塗装された毒々しい色の機体にラスコーは目を惹かれた。




