混沌の戦場 4
「この年には雨は堪える」
苦々しげにそう呟きながらオーギュスト・ブルゴーニュは天幕の中に入った。
「情勢は……どうなのだ」
オーギュストの問いに一同の表情は暗い。
「良くはありませんね。一時的な侵攻で終わると思っていましたが……胡州浪人もなかなかしぶとい」
「それは命を惜しまない連中だからな。装備は一昔前のものでも使う者の気持ち次第で最新型と互角に渡り合えるようになる。それで……我が軍はどう動く」
先ほどのオーギュストの問いに答えた青年士官を制して年配の参謀が口を開いた。
「とりあえず戦線を広げます……士気は高いが数では圧倒的に劣る兼州軍に対しては戦線を広げ穴を作らせてからそこを討ちます」
「穴はできそうか?」
「はい……東海州境と東モスレムの飛び地」
「ダメだダメだ!どちらも我が軍が向かえば後々ややこしいことになる」
政治的な配慮を口にするオーギュスト。だが参謀はもう一つの答えを用意していた。
「ゴンザレス将軍は隠していますが『外憲』が4つの村を襲って壊滅させています」
「4つ……報告では3つのはずだが」
「いえ、ゴンザレスの右腕の吉田とかいう傭兵からの情報なので間違いありません」
「自国民より傭兵を優遇する……この国は危ういぞ。まあそれはいい。それよりゴンザレスはその一つをなぜ我々に隠していたんだ」
「はい、ここではゲリラの抵抗にあい相当な損害を受けたと……指揮官は近衛隊にいたナンバルゲニア・アサドだとか」
「ゲリラの村を襲えというのか?しかも精強な『外憲』の実働部隊を倒した連中だぞ」
「だからこそです。『外憲』の連中の襲撃で今はその村は無人です。周りは峻険な山ばかりで大軍同士の戦いには向きませんが敵主力を迂回して背後を突くには最適な地形です」
「地の利は我等にありか……任せる」
時折散発的な銃声の聞こえる天幕の中。オーギュストは余裕のある表情で一同を見回した。




