混沌の戦場 6
「どうもこの仕事をしているとげんを担ぐと言うか……習慣みたいなもんですよ」
孝基はそう言うと自分の愛機の前に立った。
濃い赤色の地に黒い墨ではいたようなタッチで百足の絵が描かれていた。
「百足は前にしか進まないそうです。日本の戦国時代にも百足は珍重されたとか……」
「戦争は前だけを見ていれば勝てるんですか?」
「これは手厳しい!」
孝基はそう言って笑った。すぐに整備員がヘルメットを手にラスコー達に歩み寄ってきた。
「ヘルメットはいい、今回は偵察が任務だ」
そう言うと孝基はそのまま機体の前に設置されたエレベータに乗り込んだ。
「そちらのモニターに俺の機体の画像を送りますから。戦場とはどういうものかよく見ていてください」
叫ぶように放たれた孝基の言葉にラスコーは孝基が示したモニターに目をやる。
「発進します。さがって」
整備員の言葉にラスコーはそのままモニターが並んでいる管制室に入った。
すぐさま孝基の赤い機体が空中に浮き上がり始める。
「赤い機体……紅籐太」
『まあ人はそう呼びますね』
モニターの中で笑っている孝基。その姿に少しばかり安心しながらラスコーは隣の外部を表示するモニターにも目を向けた。
あっという間に上空に上がり、視界が開ける。かつて孝基に乗せてもらったのと同じ光景が広がっていた。
『これから州境まで進みます。東和が高度制限をかけていますからかなり慌ただしい映像になりますが』
孝基の言うとおり一気に高度を下げ住居や木にぶつかりそうになるくらいの低空をひたすら進む画面が映し出された。
「大丈夫ですか」
「殿下……うちの大将……じゃなかった西園寺卿をお信じください」
いつの間にか隣にいた相馬がラスコーの頭を叩きながら呟く。あまりいい感じは受けなかったがそれでも相馬の言葉にラスコーは静かに頷いた。




