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戦いの序章 10

「本当にこれで良いのでしょうか?」


ラスコーの問いに作戦会議の議場で苛立たしげな視線を浴びてうんざりしていたという孝基がのんびりと伸びをする。


「まあ殿下の面子のために死ぬ人間がいる……そのことは忘れてはならないことだな」


「わかっています」


静かにラスコーは応えた。孝基は満足げに頷き静かに窓の方へと向かった。


「王族なんかに生まれなければこんなことにはならなかった。そう思っているんでしょう。まあその通りなんですがね……ただ事実は消せない」


そう言って孝基は窓の外の木々に手を伸ばした。


「こうして手を伸ばしても届くものと届かないものがある。殿下の場合は普通の人並みの生活。そして自分の意思」


「余は自分の意思でここにいる」


「本当ですか?」


孝基に言われてラスコーは自分自身を振り返った。西園寺康子が亡命を勧めたときなぜ自分は断ったのか。それが本当に自分の意志なのか。


「もしかしたら違うのかもしれない」


「そうでしょう。ただ……あなたのために死ぬ人間がいることだけは忘れないでください。それを忘れればゴンザレス将軍と変わらないことになる」


「父上ともでしょ」


わざとらしいラスコーの笑みに孝基は困ったような顔をして応えた。


「この戦い……勝ち目はあるんですか」


「無い……正直そういうしか無いですね。南都を央都から引き剥がせば代わりに胡州が動き出す。地球が央都を見限れば今度は胡州本国が動くでしょう」


「重基卿のお力は……」


「オヤジは完全に政界を引退しました。跡を継いだ義基ですが……まだ若すぎる。地盤のリベラル勢力をまとめることで手一杯でしょう。とても外交までは手がまわらない。まあ元遼南大使館職員ですから情報は掴んでいるでしょうが……動き回るのは無理でしょう」


「そうですか……」


ラスコーは力なく窓の外を見つめた。鳥のさえずりが響く離宮。ただ虚しく時間だけが流れていった。

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