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戦いの序章 11

「南部に通る街道だが……」


「警備は十分。検問は十分すぎるほどだよ。どうせ央都軍の新兵が暴れるくらいだろ……王宮守護隊出のあんたの鍛えた連中だ……万に一つも不覚は取らないよ」


地元の警察の所長の言葉にナンバルゲニア・アサドは笑顔で応えた。


「まあ相手が央都の新兵ならな……」


どことなく気に食わないというように足元に視線を落とす。


「おとう!」


切通しの崖を駆け下りてくる少女。ナンバルゲニア・シャムラードの姿を見るとアサドは軽く彼女に手を振った。


「なんだ……もう夕方だな」


「そうだよ、一緒に帰ろう!」


元気よく答えるシャムの言葉にアサドは彼女の頭を撫でながら頷いた。


「勉強……少しはやったか?」


「うん、少しだけ……」


「まあ小学校でビリにならないようにするんだぞ」


「うん!」


元気よく答えるシャムに頭を軽く撫で応えるアサド。夕暮れの空はどこまでも晴れ渡って三人の姿を朱に染めていた。


「しかし、戦争になりますかな」


「なるな……この辺りには胡州浪人が少ないからわからないかもしれないが兼州離宮や北天州境にはかなりの数が集まっているらしい」


「他人の国に来て戦争とは迷惑な話だ」


「連中は他人事だとは思ってはいないでしょう。名目だけとは言え、胡州帝国の元首は遼南皇帝が兼ねることになっている。誰も暗愚で知られえた皇帝を元首として崇めたい人間なんていない」


「皇帝の権威を利用できる立場にいる人間を除いては」


署長の言葉にアサドは唇を噛み締めた。


「戦争……嫌だな」


シャムはそう言うとそのまま駆け出して切通しの向こう側へと消えた。


「確かに戦争になればニュースでやっているような誘拐殺人どころの話じゃなくなりますな」


「それこそ堂々と武器を持って暴れまわるんだ……村の避難路ももう少し練り直したほうがいいかもしれませんな」


そう言いながらアサドはそのままシャムの曲がった木々の生い茂る道を進んだ。

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