戦いの序章 7
「それで、憲兵さんのアイディアって?」
不機嫌にそう言った吉田に立ち上がった真田は静かに州境にポイントしてみせる。
「浸透作戦です。現在私の部下の一部が州境を越えて兼都近辺まで浸透しています」
「はあ?だったらご自分でラスコー殿下を暗殺するなり拉致するなりすればいいじゃないの」
吉田の言葉に真田は残酷な笑顔を浮かべ、静かに首を横に振った。
「こちらの勝利は単純にラスコー殿下一人の命で得られるものではありません。二代続いての暗殺。央都の権威の失墜、ひいては遼南の弱体化を引き起こします。その為には今回の戦いは全面戦争による徹底的な破壊による勝利しか出口は無い」
「徹底的な破壊?敵の胡州浪人を煽るのか?」
ようやく話が読めてきた吉田の顔が曇った。その姿を予想していた真田は話を続けた。
「すでに目星はつけていますが……民間人を拉致します。それなりに物語が作れそうな境遇の若者を数名マークしています。これらを拉致し……州境を超えたところで殺す」
「うわー『外憲』らしいえげつないやり口ですこと」
「でも確実は確実でしょ?戦いを起こす大義に飢えた胡州浪人は暴動を起こしてでも越境作戦を行う。そこでこちらは自衛のために軍を動かす」
「随分とひでえ戦場の作り方だな」
明らかに気分が悪くなったという表情の吉田の肩をいつの間にか立ち上がって彼の後ろまでやってきたゴンザレス将軍が軽く叩いた。
「我々は勝たねばならんのだよ……手段は選べん」
「まるで敗軍の将のお言葉ですな」
振り返りながら吉田は苦笑いを浮かべていた。
「なあに格好なんてどうでもなるんだ。勝てば官軍ということだ」
ゴンザレス将軍の言葉に吉田は力なく頷いた。




