戦いの序章 6
「なんです?まるで俺に会わせたいみたいじゃないですか」
吉田の言葉を無視してゴンザレス将軍は煙草をふかした。
「まあ会えばわかりますよって来たか」
ノックの音に静かにうなづくゴンザレス将軍。浅野は察したように立ち上がり執務室の扉を開いた。
「会いたかったよ……吉田俊平」
胡州陸軍の詰襟の茶色の軍服に吉田は身を固めた。
「胡州陸軍……外事憲兵隊……」
「その節はどうも」
顔を引きつらせながら憲兵少佐の軍服を着た男が吉田に手を伸ばしてくる。それを握手と理解した吉田は静かに手を伸ばした。
「ラスバ帝暗殺は見事としか言えないねえ……パイロキネシスとの牝ガキの自然発火でボン!考えたもんだ」
「それはどうも」
固く握り締めてくる手を振りほどくと吉田はそのまま恨みがましい目でゴンザレス将軍を見つめた。
「あの時の警備で……うちの部下も三人死にましてね。警戒線近くの検問所で……喉笛を一撃。恐らくはあんたが手を下したと思いますが」
「ああ、あの連中ですか。胡州陸軍『外憲』があの程度のレベルとは……」
「きついお言葉だ……まあおかげで西園寺卿は失脚。うちとしては抑えがいなくなってラッキーだったとも言えますが」
皮肉を言ってやったとはしゃぎそうな憲兵の顔を吉田が睨みつける。
「真田少佐。そのへんにしておいてもらえますか。今後は共同歩調をとっていただくんですから」
浅野のとりなしでようやく落ち着いたというように吉田の正面に真田が座った。
「昨日の敵は今日の友。まあ仲良くやってくれたまえ」
いかにも取ってつけたようなゴンザレスの言葉に吉田は恨みがましい目を向けた。
「そんな目をするなよ。これは真田少佐からの提案だ」
ゴンザレス将軍が手元のスイッチを押す。すぐに部屋の電気が落ち、応接セットの中央の上空に兼州と央都の境界線が映し出された。
「今更何を……」
そう言いながらも吉田は次のゴンザレス将軍の言葉が待ちきれないというように手を握り締めた。




