戦いの序章 4
「まるでヒーローですね。伯父上」
皮肉を込めたラスコーの言葉に心底嬉しそうな顔をする孝基。
「まるでヒーロー?ふざけたことを言う。傭兵は嫌われ者さ……どこでだってゴミでも見るような目で見られてきたさ」
「紅籐太はヒーローだよ!」
「そうだ!地球の悪い連中から僕等を守ってくれるんだ!」
「あ……あはは」
子供達の声に孝基は力なく笑った。
「勝ちますよね……ゴンザレスのデブなんかに兼州が負けるわけがない!」
「そうだよ勝つよ」
信じきっているような目はラスコーから見ても痛々しく感じられた。
「まあ君達がちゃんと勉強していればね」
軽く手を振る孝基を見て教師が立ち上がった。
「これ以上殿下達を困らせるんじゃありません!」
「はーい」
仕方がないというように少年達は校舎へと向かう。教師は何度となく頭を下げて手を振る孝基に答えていた。
「あのなあ……坊主」
「坊主?」
「なあに俺から見たら東宮殿下もあの餓鬼共も同類さね……お前さんの意気地があの餓鬼共に地獄を見せることになる……それについてはどう思うね」
急にどすを効かせた孝基の言葉にラスコーはハッとさせられた。
「お前さんが亡命していればあの餓鬼共は……まあ屈辱にはまみれるだろうが命は助かった。だが、お前さんが亡命を拒否した今、間違いなく央都からの暴力は怒涛となってこの街を押し流すことになる……」
「余が間違いを犯したと?」
「人生に正解なんて一つもねえよ。お前さんが亡命を拒んだおかげで俺は傭兵としておまんまが頂ける。それもまた事実だ」
そう言うと孝基は再びバイクにまたがった。
「ひとつだけ言っておく……これからは暴力が支配する世界だ。お前さんの理想や意気地はただ人を傷つけるだけに終わるだろう」
「国家とはそもそも暴力機構ですよ。行政学の基礎の基礎です」
「そんな机上の空論を話してるんじゃねえ……これからのお前さんの一挙手一投足で人が何人かくたばることになる……学問なんかじゃねえ……現実の話さ」
孝基はそう言うとバイクのエンジンをかけた。ラスコーは仕方がないというようにそのままバイクの後部座席に乗り込んだ。




