戦いの序章 3
「学校だ」
孝基はそれだけ言うと力なく笑った。それを見たラスコーは少しばかり不審に思いながらも孝基の運転するバイクに乗って校門を入る。
「なんだ?」
「バイクかっけえ!」
小学生達があっという間に孝基とラスコーを取り巻いた。
「赤い百足の塗装……まるで紅籐太じゃねえか……おっさん、紅籐太」
「そうだ」
「嘘だ!紅籐太は今頃南部の基地で訓練しているはずだぞ!」
あっさり肯定したはずだというのに孝基を認めない小学生達を見てラスコーに目をやる孝基。ラスコーはゆっくりとバイクから降りると見慣れない自分より少し年下の子供達を珍しそうに眺めた。
「兄ちゃん何者?この人本当に紅籐太」
「余……いや、僕は……」
「彼こそが兼州ひいては遼南の主、次期皇帝ムジャンタ・ラスコー殿下だ」
「はっは!嘘ばっか……おっさん達嘘ついてそんなに楽しいか?」
少年達が大声で笑い合う。ついラスコーも釣られて笑っていた。そこに突然教師が駆け寄ってきた。
闖入者はそのまま少年達をラスコーから遠ざけるとそのままその場にひれ伏した。
「知らぬこととは申しながら……ご無礼の数々……」
言葉を飲み込んでは吐き出しながら緊張し尽くしている教師。さらにその後ろからは暑い夏だというのに背広姿の禿げた教員が遠くで同じように土下座をしていた。
「先生……じゃあこの人達本当に……」
「紅籐太……本物だ……」
「お兄ちゃんは東宮殿下……」
少年達の表情にいっぺんに生気がなくなっていくさまをラスコーは黙って見つめていた。
「いいのですよ。僕が学校を見たいというから西園寺卿に案内を頼んだんです」
「まあそういう訳だ」
「はあ」
なんとも緊張感のない孝基の態度に教師は顔を上げたまま首をかしげていた。
「しかし……元気だな、お前等」
そう言うと呆然と立ち尽くしている手前に立っている少年の頭を孝基は乱暴にかきむしった。




