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嵐の前に 4

「父上」


アンリ・ブルゴーニュはいきり立っていた。南都庁舎の州知事執務室に入るなり父親であるオーギュスト・ブルゴーニュに食ってかかった。


「アンリ、お前の言いたいことは分かる。央都の肥満体に頭を下げるのはやめろという事だろ?」


「分かっているなら話が早い。なぜですか?」


息子の憤慨に火に油を注ぐように手にしたパイプをゆっくりと燻らせて煙を吐く。


「煙草も辞めた方が良いですよ」


「こちらの方は趣味の問題だ」


それだけ言うとオーギュストは再びパイプを咥える。その悠然とした態度にいらだちを隠せないアンリはそのまま部屋を行ったり来たりしていた。


「大義は兼州にある。それは事実だ。ラスバ帝の時代に東宮位はラスコー殿下のものとなった。それは否定できない」


「ならなぜ?」


執務机に両手を叩きつけて憤るアンリを少しばかり可哀想なものを見るような目で一瞥したあと、オーギュストは再びパイプを手にとった。


「第一にラスコー殿下は幼い。まだ十四だ……そうなると摂政を立てなくてはならなくなる。どうせ摂政には父であるカバラ殿下が立たれるだろう。そうなると結果は同じじゃないか?」


「少なくとも野蛮なゴンザレスの顔を見なくて済むだけマシだ」


吐き捨てるようにそう言うとアンリは再び部屋を行ったりきたりし始めた。


「央都のゴンザレスの腰巾着達とカグラーヌバ・バラダ。どちらが御しやすい?」 


父の言葉にアンリは言葉を詰まらせた。本来はラスバ帝即位の際に執政として全件を握ろうとしたこともある外戚、カグラーヌバ・バラダの野心が消えているとはアンリにも到底思えなかった。


「御しやすいから……父上はそれだけで簒奪者を支持すると言うのですか?」


「悪いかね?地球諸国もそもそもラスコー殿下が東宮となったこと自体に疑問を持っている。確かにカバラ殿下は暗愚だが逆にその分帝に左右されずに国内の民主化を進めることができる」


「ゴンザレスの奴がそんなことに同意するわけないじゃないですか?」


アンリの言葉にオーギュストは静かに頷いた。


「そう、だからチャンスがある。地球諸国と新帝の間で摩擦が起きれば我々にも動く隙ができる」


得意げにそう言ってパイプを燻らせる父にようやく納得が言ったという表情をアンリが浮かべた。

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