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嵐の前に 5

「隙が出来てどうするおつもりですか?」


アンリの問いにオーギュストは笑みを浮かべながらパイプを燻らせる。


「ゴンザレスに取って代わる。決まってるじゃないか」


はっきりときっぱりと言い切った父にアンリは少しばかり呆れるような表情を浮かべた。


「ゴンザレスに取って代わるくらいなら今動くべきでしょう。あの男はその先を考えているはずだ」


「ゴンザレスが帝に取って代わる?そこまでの野心は……」


「あの男にはその位の野心はあるでしょうね。まあ帝にはなれないから共和制を布いて大統領にでもなるでしょう……その時南都に生きる余裕はあるんですかね」


「アイツが大統領?馬鹿馬鹿しい!」


オーギュストはそう言い切るとパイプを机に置いた。明らかに苛立っている父の様子を見ながらアンリは言葉を続ける。


「それを阻止するにはやはり兼州の東宮を推すべきかと」


「切れすぎる皇帝は押しにくい」


絞り出すようにしてオーギュストが呟く。アンリはさらに畳み掛けた。


「所詮は十四の餓鬼ですよ。実権はこちらが握ればいい。それに最初はカグラーヌバが邪魔ですがあの老人はそう長くはない」


「するとアンリはやはり兼州を推せと?」


「その方が南都のためかと」


「しかし……地球が黙っていないだろう……地球の国連ではゴンザレスの息のかかった連中が工作を続けている」


「確かにカグラーヌバの地球嫌いは有名ですからね……地球の傀儡に徹するのですか?」


「南都には遼南の地球との架け橋の役割がある」


再びパイプを握る父にアンリはため息をつく。


「どうしても央都に付くわけですか」


「それが時代の趨勢だ」


父の言葉にアンリは身を翻す。


「どうするつもりだ」


「父上はすでに気持ちを固めているのでしょ?仕方がないです」


力ないアンリの言葉にオーギュストは静かにパイプを燻らすことで応えた。

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