嵐の前に 2
空が一瞬で大きくなった。
「うわ!」
思わずラスコーは叫んでいた。それを満足げに一瞥すると孝基はそのまま機体を一気に上昇させる。
「すごい……これが重力?」
急に訪れたGに苦笑いを浮かべながらラスコーは呟く。
「これでも遠慮しているんですよ。対Gスーツを着けての戦闘ではさらに一気に加速減速をしますから」
そう言うとそのまま離宮の敷地を出て街へと機体は進んだ。
「これが街?」
「見たことが無いんですか?」
「私は離宮から出たことがないですから」
寂しげにラスコーが呟く。その様子を見た孝基は一気に機体を加速させた。
「しっかり捕まっていてくださいよ」
そう言うと孝基はそのまま街を越えて田園地帯へと機体を進めた。
「これが外界」
「そうですよ。まあ兼州は田舎ですからそう光景は変わりませんが……それにこいつなら宇宙でも行動できる」
「宇宙に出られるんですか?」
「いや、単独での大気圏離脱は無理ですから、シャトルに載せることになります」
「宇宙……行ってみたいですね」
心底諦めたというようなラスコーの口調に孝基は機体を揺らしてみせた。
「何をするんですか!」
「辛気臭い顔は子供には似合いませんよ」
「すみません」
「すぐに謝るのも良くない」
そう言うと孝基はそのまま機体を山の方に向けた。
「この山を越えれば遼北」
「そう、そしてこの山脈を西に向かえば東モスレム。東に向かえば北天になります」
「どちらも今は敵対勢力ですか」
少しばかり諦めたような調子でラスコーが呟く。孝基もその事実は消せないのでただ黙って機体をホバリングさせていた。
「誰が……こんな国境なんか決めたんでしょうね。空気や大陸は地続きだというのに」
「まあそこから先は政治の話ですよ。そうなるとカグラーヌバの旦那の領分だ」
孝基の言葉にラスコーは力のない笑みを返した。
「それにしてもすごい加速ですね」
「まあ1式の売りは機動性ですから。航空装甲砲台以上の加速性、機動性、装甲、そして四肢を持つことによる格闘性は段違いですから」
「なるほど」
納得行ったというようにラスコーがつぶやくのを見ながら孝基は今後の展開をじっと予想していた。




