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嵐の前に 1

「今日は勉強よりも大事なことを教えようと思う」


夕方と呼ぶには少しばかり早い時間。椅子に腰掛けて経済学の書籍を読んでいたラスコーに西園寺孝基は語りかけた。


「勉強より大切なことは世の中にはいろいろありますよ」


「減らず口を」


ラスコーの言葉に苦笑いを浮かべながら孝基は手招きする。ラスコーは手にしていた厚い研究所をテーブルに置くと孝基のあとに続いた。


「しかし宮殿を要塞化するのか……」


「仕方ありません。いつゴンザレス将軍一派の襲撃があるかもしれませんから」


塞がれていた通路を見ながらの孝基の言葉にラスコーは諦めたように呟く。


「まあその為に俺がいるわけだからな」


そう言うと孝基は急ごしらえの扉を開いた。


中には新型の人型兵器『アサルト・モジュール』が並んでいる。


「随分と物騒なものがあるんですね」


見慣れない機械に表情をこわばらせているラスコー。その様子を少しばかり安心したような顔をしながら孝基はその中の赤い機体の前で足を止めた。


「随分と派手な機体ですね」


ラスコーの言葉のとおりその真っ赤な機体にはその胴体に巻き付くような百足の絵が描かれていた。


「なあに、死装束ですからね。派手に越したことはない」


それだけ言うと孝基はエレベータに乗ってラスコーに手を伸ばした。


「すみません」


ラスコーはそう言うと孝基の手を握る。か細い手が引っ張られて二人はエレベータでアサルト・モジュール「1式」のコックピットにたどり着いた。


「狭いな……まあ座席の後ろにはスペースがあるからそこに乗ってください」


そう言うと孝基はラスコーを座席の後ろに押し込んだ。


「これって動くんですか?」


「今朝も動作チェックをしましたから。間違いなく動きますよ」


孝基は素早く手元の計器をチェックし始める。


「西園寺卿……出るのですか?」


「そうだ。ちょっと社会見学にな」


「社会見学?」


管制官は狐につままれたような表情をモニターの中で浮かべていた。


そのまま孝基は1式を歩かせて格納庫を出た。


「いい日和だ」


思わず出た孝基の言葉にラスコーは頷いていた。全面型モニターの中の夕暮れに染まる直前の太陽が二人を照らし出す。


「それじゃあ行きますか」


それだけ言うと孝基はそのまま機体を浮上させた。

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