修羅達の目覚め 12
「奴らはまだ詰んじゃいない……」
ゆっくりと確かめながらゴンザレス将軍は呟いた。
「彼等には政権の『正当性』と言う切り札がある。ラスバ帝が残した遺産だ。これを否定するには並大抵のことでは済まない」
「随分と寄り道をしますね。それよりズバリ言ったらどうですか?ラスコーの首を獲れと」
「そこまでは言わんよ。私も遼南帝国の臣下に過ぎない」
「随分とご身分のいい臣下ですな」
吉田の皮肉にゴンザレス将軍はニンマリと笑うことで応える。
「力ではすでに帝国を支配できるよ、ワシは。ただ正当性だけが足りない。そしてその正当性は兼州にある。それをどうにかしなければならないんだ」
「だからって十四のガキの命を獲るわけですか……非情ですね」
「情けが何の役に立つ。すべては力だよ。正当性もまた力だ。それをなんとか手に入れたい」
「欲深いですな」
苦笑いでにらみ合う二人。
「まあそうだろう。ただここまで来た以上行くところまで行かなければ話は終わらないということだ」
「毒を食らわば皿までもということですか」
「まあそんなものだ」
吉田はその言葉を聞くと静かに右腕を摩った。その腕にはニードルガンが内蔵されている。それを知ってか知らずか、執務机に頬杖をついてゴンザレス将軍は眺めていた。
「その義体。維持するにも金は掛かるんだろ?」
「痛いところを突きますね。まあその通りですが。だから俺は仕事を選ぶ」
「仕事を選んでるんじゃなくて収入を選んでるんじゃないか?」
ゴンザレス将軍の図星をついた言葉に吉田は苦笑いを浮かべた。
「全面的軍事行動。いつですか?」
「そう遠くはない。兼州では胡州浪人が集結しているそうだ。いつまでも抑えが効くとは思えん」
「相手に仕掛けさせるんですか……どこまでも悪党ですね」
「悪党で悪いか。悪党は悪党らしくふてぶてしい顔で状況を眺めているもんだ。まあこれからはこちらの筋書き通り動きそうだが」
肉厚な頬を揺らしてゴンザレス将軍は笑う。それに合わせるようにして吉田は立ち上がった。
「どうされた」
「状況の分析に入りますよ。どの状況でラスコー東宮の首が獲れるかシュミレーションをちょっと」
「仕事熱心なのはいいことだ。よろしく頼むよ」
ゴンザレス将軍の言葉に弱々しい笑みを浮かべると吉田は部屋を後にした。




