↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かわいい生意気女 しかたがないので側にあったバケツの水をぶっかけてしまいました。  作者: 古門まさごろう
1章 新入社員

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/26

新入社員4

挿絵(By みてみん) 

 それ以来、危険で変人の烙印を押された僕には、誰も話しかけて来なくなったが、遠くからみられる事もしばしばあった。でも、もともと普段も誰とも交わらず一人で黙々と作業していた自分には、なんの影響もない。この事件が無くても、「なんか暗いよね」と最悪に近かかった評判は、これでダントツ最下位に転落したのは確実であった。


「……よく首にならなかったね」と皆は噂し、自分自身もそう思ったが、新入社員にバケツの水をぶちまけた僕は、院内で一躍有名になったのは間違いない。その後も、色んな人がその理由を尋ねてきたが、その事を尋ねられると不機嫌になるので、そのうち誰もその話をしなくなった。


 しかし変わったのは、君が僕に向かって、ちゃんと挨拶をする様になった事だ。


「……おうおう、お前もやっと真面(まとも)になったか」


 そうゆう感じで、僕はニヤリとするだけだったが、だからと言って、こちらから話かけたりする事は一切なかった。だいいち仕事は外がメインだし、君はいつも忙しい受付。仕事が終わって病院を出る時に、たまに挨拶をする事はあったが、普段は遠くから君を見かけるだけで、院内ですれ違う事も滅多になかった。


 その後、思った程”危険人物で有名男”? の評判が落ちなかった事が意外だったが、相変わらず一人で黙々と作業する毎日が続いていた。


 高城にとって、この仕事の良い所は、相手が機械や植物なので気を使わなくて済むとこである。地下の広大な空間はいつも一人締め。病院内の庭はまるで小さな公園の様。管理は大変だったが、もともと体を動かすのが好きなので、広い庭の掃除もまったく苦にはならなかった。むしろ色々な植物や花に囲まれ、自然の中で出来る仕事は楽しかった。


 必要な事以外喋らないで済むこの仕事は、気楽だが友人も出来なかった。だが、もともと、誰とも積極的に付き合う気もないので、こんな環境が気に入っていたし。それに、その頃の高城は色々と悩みのデパート状態。この仕事をするまで人生が楽しいと思った事は一度もなかったけれど、時間薬と言うのか、最近は好きな海の事を考える余裕も少しは出ていた。普通のサラリーマンの様に、人間関係に気を使う事もあまりない。お花ちゃん今日も元気だね、と草むしりする今の仕事は、知らず知らずに、過去の傷を癒していたのかも知れなかった。

 

 そんな感じで現在の仕事に不満は無かったが、欠点は二百人もの女性に囲まれながら女子に縁がない事だった。母親は小学生の時に離婚していて、今はその頃生まれたばかりの弟と田舎に住んでいたが、月に一度は必ず電話があった。


「あんた何時になったら結婚するの、もうどっぷりアラサー男子なのに、誰か良い娘おらんのね、ほんと、モテんね~」


「申し訳ない」


 僕はその度に、ごめん、わるい、そのうちに、と口には出すのだが、結婚など、そんな気は全くない。趣味のウインドサーフィンが唯一の娯楽で逗子に住んでいるのもその為。休みの日は殆んど海に出ているので、周りは日本でも有数な観光地であるにも関わらず、女子が好きそうなお店など一つも知らないし、勿論、行った事もなかった。


 でも今の人生、いつも自然に囲まれ幸せだったし。毎年二月にもなると海に出たくてソワソワしてくる。とても海に出る気温でないのは解っているが、部屋の窓から海を見る度に、もうそろそろ良いかと思ってしまう。医療事故で負わされた数千万円の借金と、罵倒中傷の嵐からやっと抜け出したばかりの自分には考えられなかったが、最近は朝が来るのが楽しみになって来ていた。


 そうゆう意味では、結構幸せな毎日を送らせてもらっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。