二年目の君3
その後、話は自動で進んで行く。「次の日が休みの方がゆっくり出来るよね」と、もう次の金曜日には自宅に行く事が決まっていた。なんでこうなるの? と考える間もなく、君の押しの強さは凄まじい。そして、あっという間にその日はやって来た。
二回目の君宅訪問は意外に早く日も暮れ初め、周りがだんだん薄暗くなって行った。駅から降りて、まだ、そんなに歩いてもいないのに、僕の足はやたらと重くなって行く。
「……いったい、どんな顔してあの親父に会えば良いのだろう。俺の事ニコニコと迎えてくれるのだろうか?」
しかしどう想像しても、狂暴親父のニコニコ顔など脳裏に浮かんで来ない。
君は、掴んだ獲物を逃がすまいとするかの様に、先にたって僕の手を引いたままどんどんと歩いていく。でも、恋人同士が手を繋ぐのとは違って、監守に引っ張られる囚人の様に歩く僕の姿は、きっと異様に見えた事だろう。
僕の心配もよそに、家に着いたら君の母親がニコニコと迎えてくれた。だが、君は僕の手を離さず家の奥にどんどんと引き込んで行く。その為まともに挨拶も出来なかったが、手ぶらではと持って来たおみやげを渡す間もなく、僕はあっと言う間に奥の居間に通された。
みやげは、田舎の母親がかなりの陶器好きで、「あんたもお茶ぐらいやりなさい。生前贈与よ」と送って来た薄汚れた色の茶碗。値打ちの程は解らないが、十万円のお礼も兼ねて年寄りには良いかもと持参したものであった。でも、これが意外にも大好評でかなり喜ばれた。こんなの何処が良いのだろうと思ったが、少なくともこれでもう殴られる心配はなさそうだった。
夜も大分更けてきたが豪華な料理が次々に運ばれてくる。おいとまするチャンスをなかなか切り出せなかった僕に「今夜は泊まって行きなさい」と母親が言い出した。君も「泊まって、泊まって」とハシャギナガラ攻めてくる。
いつの間にか、柔らかそうな布地の、ピンクのワンピースに着替えていた君。制服姿しか知らない僕には刺激的だったが、でも変な気持ちになりそうな僕を、目の前にいる親父が怖い目で見つめていた。
母親と君が空いたお皿を台所に下げ始めたので、自然に僕と怖い親父の二人きりになる事が多くなっていく。僕は不安になったが、案の定さっきまで機嫌が良かった親父の目がいつの間にかすわっていた。
「娘とは、もうやってしまったのか?」いきなり親父が僕に聞いて来た。
「やるもなにも、娘さんと個人的に会うのは今回が二回目で、まだ付き合ってもいません。会社でも殆ど会わないし……」
僕も少しお酒が入っていたし、今日は言いたい事は言うぞと隙を見せずに構えていると、親父は下を向いたままボソッと僕に喋りだした。




