二年目の君2
そんなある日、僕のアパートに君の実家からお中元が送られて来た。
「なんで俺の住所を知っているのだ」
僕は少しイラッとしたが、大好きなアサヒドライが二ダースも入っている。
「イッパツ殴られたくらい、もう良いのに。でも、やはりお礼を言うべきか……」
少し迷ったが、君はその頃は社内でもかなりの人気者。特に今年の新入社員からは優しい先輩と慕われているだけに、近くで見ても話しかける事はしなかった。
僕の仕事は結構ハードで食事は唯一の息抜タイム。だから周りに気を使うのが嫌で、いつも一人で飯を食っていた。
だが、そんな貴重な食事タイムに、君は明るい笑顔で割り込んで来た。
「お母さんがビールを送ったと言ってたよ。なんで家に来てくれないのと気にしてた。お父さんも勘違いして高城さんを殴ったこと、凄く後悔していて本当は誤りたいのよ。あの封筒にお金を入れたの、実はお父さんなんだ。お母さんが手紙を書いていると、いきなりやって来て封筒にねじ込んでいったの。お父さんって、いつもあんな感じなんだ。不器用と言うか何て言うか……。
一度家に遊びに来て! 私もごはん作るよ」
この娘にこんなに神妙な顔して言われると少し迷うが、でも、あの凶暴親父には、もう会いたくない。娘の事で意識過剰になっていたのは解る。でも初対面で何も事情を聞かず、いきなり胸グラ掴むか? 俺からきちがいと言われてもしょうがないだろう。
僕は忘れかけていたその夜の事を思い出し、また顎が痛くなった気がしたが「普通、あんな事があれば、誰だって二度と会いたくないのは、当たり前だろう! 家に来いなんて正気か」と言いかけたが止めた。
「もう、気にしないで良いと言ってくれる。それに下北沢遠いし。俺のアパート逗子なの知ってるだろう。だいいち、二人で君の自宅に行くのも可笑しいよ、付き合っている訳でもないのに」
と、そう重ねて言うと、いきなり君の大きな目がウルウルになって来て、周りからひそひそ話も聞こえて来る。まるで僕が泣かせたみたいに、皆の視線が僕達に集まって来た。
女と言うものは難しい。古今東西、女を泣かせた男は周りから責められて、いつの間にか言いなりにされてしまうのは何故か?僕は、離れようとせず、いつまでもいる君に場が持たなくなって、つい言ってしまった。
「解った、解った、今度行くよ」
「ほんとう!」
騒がしい社員食堂。あまり話は聞かれなかったと思うけど、何人かの、こちらを見る不思議そうな目が気になって自分の返事も上の空。いつの間にか、又あの暴力親父に会うことを承諾させられてしまった。




