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幸せを呼ぶは青い鳥


 今この瞬間において最良の選択が何であるかと言われれば『何もさせない』ことだ。

 これは優が神器を発動させた場合、彼女の持つ神器『アムリタの目』の効果対象外となってしまい、ここまで保ち続けていた有利な状況が崩れてしまうのだから当然だ。

 加えてただ単純に相手を倒す事だけを目的とするならば力など発揮させる前に潰してしまうのが当然かつ一番楽な選択肢だ。


 だから今アサギ・クサマツが取るべき最適解は動く事だ。

 優がしようとしている何かを阻むため必死になるべきで、実際に戦場に出た経験が少ない彼女とてその辺りに関してはしっかりと理解している。


「いえここは状況を見守るべきでしょ。不用意に手を出して、思わぬカウンターを食らう可能性だってあるわけだし。神器の能力無効化? それは………………知らなーい」


 けれど彼女は動かない。

 体を突き破るほどの勢いで繰り返される胸の高鳴り。

 その正体を知り自身の知的欲求を埋め満足する事を最優先とし、脳内に響く念話に真っ向から反し、優が掲げられた腕にやってくる『何か』を待ち続ける。


「アンタの持ってる神器の能力は未来予知で、それを成してるのはたぶん目よね。だから視界外から撃ち込んだ水の斬撃は当たってるんだろうし」


 その最中に語られた内容を聞き彼女は真っ黒な眼帯の奥にある両目を見開くのだが、賞賛の言葉を投げかけたりするよりも早くやってくるのだ。

 二人が待ち望んでいたものが。


「青い………………鳥?」

「そ、綺麗でしょ」


 掲げた右腕の人差し指をフックのような形に折り曲げた優が歓迎したのは、彼女の握り拳よりもやや小さな小鳥で、頭のてっぺんからつま先までが青一色に染まっていたのだが、ゴマのようにつぶらな眼だけは己が存在を主張するように真っ赤であった。


「正直なところね、アタシって昔ほど好戦的じゃないの。年を取ったからか結構穏やかな性格になったし、直さなきゃいけない怪我人がいっぱい出る戦いって面倒なだけだって思うようになったの」


 そこまで観察していたアサギ・クサマツの耳に届いたのは対峙する優の告白で、


「………………それで?」

「こっから先は、アンタの好きなようにはさせないってことよ」


 先を促した後、優は告げるのだ。

 ここから先の戦いで、彼女の思うような展開になることは二度とないと。


「行きなさい!」


 呼び出した青い鳥が人差し指に止まった状態のまま、優は大きく右腕を振り抜く。

 するとその投げつけるような動きに合わせるように青い鳥は飛翔し戦場から離れていくのだが、このタイミングで対峙する紳士服を着込んだ麗人は気が付いた。


 優の次の動きが、また見えるようになっていると。


「手元から離しちゃうと神器の持つ能力に対する絶対的な有利性も失われちゃうようね。ずっと手元に置いておいた方がよかったんじゃない?」


 安堵する思いが半分。落胆する思いが半分という具合でそう告げるアサギ・クサマツであるが、知的好奇心が満たされたのは事実であるため気持ちを切り替える。

 持っている武器を、生前万人を処刑するために使い続けていた愛用のハルバードへと変化させると、大きく振りかぶりながら跳躍。


「え!?」


 これまで通りであればそのまま真下に待ち構える優へと向け振り下ろすところであったのだが、今回は異なった。

 これまでとは段違いの速度で優が真横へと移動する未来が見えたからで、空中に身を預けたまま、彼女は体を強張らせた。


「――――――右!」


 もちろんこれは失態だ。敗北に繋がる大きなきっかけとなることだってあるだろう。

 ただ今回の場合、その選択はなもの幸運だった。

 もしも振り下ろしていたのならば、次に見えた優の一手。


 視界の外から繰り出された跳び蹴りを、持っている武器を盾にして防げなかったのだから。


(お、重い!?)


 不運であったのは、その威力と重さが想定外なこと。

 降って来た優の勢いに押し負け、砂上に自身の体を突き刺す結果になってしまったことだ。


「さあさあ行くわよ!」

「は、や、い!?」


 そうして目を離したことで目標の一手先を読めなくなってしまったアサギ・クサマツに対し、優は猛攻を仕掛ける。

 空に浮かんだままの彼女は、虚空を足場として跳ねまわり、速さと威力を兼ね備えた超一流の蹴りを何度も撃ち込んでいく。


(お、おかしい。おかしいわ! 私が今いるのは本当に何もない砂漠なの? ジャングルのど真ん中だったりしない!?)


 それはジャングルに生えている全ての木を足場にしている野猿が如きフットワークの軽さであり、繰り出された踵落としを交差させた両手では耐え切れず、アサギ・クサマツの両足が地面に沈むのだが、戦場全体を見渡せるだけの余裕を得た彼女は見たのだ。


 己がさっきまでとは打って変わって押し込まれている事になった理由を。


「あれは………………確か彼女が得意としてる『紋章展開』とかいう術式。でもちょっと待って。なんなのあの数は!」


 空を見上げた彼女が目にしたのは無数の紋章。

 十や二十程度ではない。少なく見積もってもその十倍はくだらない数が様々な模様を既に描かれている状態で空に浮かんでおり、その上を踏んだ優の体が、ピンボールもかくやという勢いで跳ね、一本の矢と化しながらアサギ・クサマツへと向け降下していく。


「に、逃げなきゃ!」


 様々な欲求を上回る勢いで『恐怖の感情』が膨れ上がり、足元が柔らかい砂であるため動きづらいが、その場から逃げようともがきアサギ・クサマツ始める。


「………………え?」


 そんな彼女の機体を裏切る体が――――――跳んだ。

 いつの間にか足元に設置してあった『跳弾』の刻印が刻まれた紋章を踏んだ事によって。


「あれは――――――」


 危機的状況が目の前に迫っており、すぐに体勢を整え逃げ出さなければならないと考えたアサギ・クサマツであるが、そのとき彼女は見たのだ。

 無数の紋章を敷いていたのが尾羽優ではなく、彼女が今しがた使役していた青い鳥であることを。


「!?」


 再び満たされた知的好奇心により、胸の中を充足感が埋める。

 言い換えればそれは、対応せねばならない目前の脅威から愚かにも意識を外していたということであり、


「!?」


 跳ね上がった彼女の腹部に、『速度』と『重量』の二つを倍加させた跳び蹴りが食い込んだ。



 

 




ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


申し訳ありません。昨日は色々と遊んでいたら作品の完成が深夜4時を超えちゃったので、この時間に投稿します。


さてさて、今回の話は明確な十年後優の真価発揮回。前回出た時のようなチョイ役ではなく、しっかりとした戦闘となります。

この青い鳥の名前や能力は次回で紹介になるのですが、本来の神器のように相性を重視した物が出ない賢教大樹製の中では結構な当たり側です。

詳しくは決着編になるであろう次回ですが、これは今回分の投稿は遅れましたが明日投稿する予定です。


それではまた次回、ぜひご覧ください!


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