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再誕の代償

申し訳ありません。前回の話で抜けがありました。

極信は自分から離れた位置にある木片を真っ二つにして聖野をおびき寄せましたが、その部分が説明不足でした。


この部分は『極々単純に風属性粒子の刃を自分から離れた場所に設置した』というものなのを、ここで説明させていただきます。


「文句を言うなどとんでもない。使える物は何でも使う。これは戦いの鉄則だ。だというのにお主の心臓を射抜いた時点で気を抜いてしまったのだ。己自身の失態と言うしかあるまいよ」


 二度にわたり降り注いでいた木片の雨が止み、辺りに静寂が訪れる。

 と同時に吐血していた極真の口から発せられるのは潔い敗北宣言で、その言葉を聞き聖野は確信を抱く。


「そっか。ならこっちの質問に答えてくれよ」

「なに?」

「貴方の生きた時代はどうなのか知らないけどさ、現代は『負けた方が勝った方の言う事を聞く』もんなんだ。ここは現代の流れに合わせて、正直にゲロっちゃってよ」


 この人物が相手ならば交渉の余地があると。

 なので少々小狡い事を言っていることを自覚しながらもそう提案するが、反応は芳しくない。

 何事か思案している様子を見せ、


「………………一つ聞きたいのだが、お主はさっき何か悔しがっていたな。あれは何だ?」


 かと思えばそう尋ね聖野はやや逡巡した素振りを見せたあと頬を掻きながら口を開き、


「貴方が正々堂々とした戦いを好んでる武人なのはわかってたからな。可能なら小手先の戦術抜きの真っ向から勝ちたかったんだよ。それができなかったって話ですよ」

「………………………………なるほど」


 話を聞き終えしばらくしたところで短い呟きを零し、しばしのあいだ口を閉じる。

 そうなれば聖野は正直に話してもらうのを諦め、時間はかかるが本部に持ち帰り記憶を覗く方法を取るしかないと考え一歩前に踏み出すが、


「拙者とて蘇らせて貰った恩義がある。ゆえに話せぬこともあるが、可能な限りお主の問い掛けに答えよう。何を知りたい? やはり此度の戦いにおける目的あたりか?」


 その手段を取るよりも早く、側にある木片まで移動し背中を預けた小人族の猛者がそう告げるが、これは聖野の答えを気に入ったから。

 任務があったゆえに勝つことに拘ったが、その気風は自分にとって好ましいものであり、敬意を称するだけの価値があると思ったからである。


「もちろんそれは知りたい情報だ! ぶっちゃけなんで?」

「我々はお主らに戦いを挑むにあたり、ある程度ではあるが情報を集めていた。しかし事細かな事までは知らぬ故な。戦力に関して知るために偵察として今回の戦いを仕掛けたのよ」


 とすると聖野は嬉しそうな表情をしながらそう尋ね、極信は語り出すのだ。

 可能である範囲に入っていた今回の戦いに関する情報を。


「先に行っておくと、どれだけの戦力をどこに伏せているかまでは言わんぞ。そこまで詳しい情報を話す義理はないし、そもそもすぐにわかる事だからな。他に聞きたいことはあるか? もう一つくらいならば答える猶予があろう」


 かと思えばそれ以上話せることはないと告げるが、聖野はここで眉を顰めた。

 快く応じた極信が『もう一つ』『猶予』という言葉を口にしたためだ。


「一つしか答える猶予がないってのはどういう事?」


 直後、聖野はさほど考えることなくそう口にしていた。

 彼の直感が、限られた時間の中で、それこそが最も聞くべき事情であると判断したゆえに。

 そしてその予想は、極信が次に発した言葉を聞き的中する事になる。


「二度目の生を受けるにあたって中々の無茶をしているのでな。拙者の命は数分後には尽きるのだ」

「え!?」

「おっと、止めようとしても無駄だぞ。これは回復しようがない事であるし、封印術で封じたところで無意味なことだからな」


 それは蒼野達全員が抱いていた疑問。

 既に死去したはずの過去の猛者たちが、どうやって現世に蘇ったのかという問いに関する答えである。


「………………っ」


 正直に言えば聞きたいことがいくつかあったが聖野は口を挟まない。

 その時間がないと理解しているゆえに無言を貫き後を促す。


「無駄口を挟まない、か。優秀だな。であれば拙者も伝えるべきことを伝えよう」


 その意図を察し微笑んだ極信であるが、異変は直後に起きた。彼の小さな小さな体の足先が真っ白になったかと思えば、細かな灰へと変化して虚空へと消えていき、


「死者の蘇生に関して思う事に関しては色々あるだろう。闘技場の歴代覇者の中には死体を確認された者も数多く存在する。なのにこうして蘇っている。そもそも消えた魂が返ってくることことはないではないか、とかな」

「………………そうだよ。気になるよ。うん」

「それはつまりだ『魂を残しておいて』『体さえ作り上げれば』蘇るという事でもある」

「!」


 その光景を見届けたあと彼は語り出したのだ。此度の戦いにおいて最も重要な点における絡繰を。


「我々ロッセニムのチャンピオンはな、死する直前に聞かれるのだ。二度目の生を望むかどうかを。そしてその際に『生きる』事を答えた場合、魂を抜き取られ保管される。そして時が来れば用意した肉体に入れられ蘇るという寸法だ」


 魂も肉体も、時が立てば消えゆく定めにあるものだ。


 肉体は不死者でない限り老化には耐え切れず最後は寿命という運命が待っている。

 魂は長い時を経る事でよほど強靭でないかぎり摩耗するし、肉体から離れた場合、僅かな時間で消えてしまう。


 ただしこれは、何の対策もしていない場合のことである。


 肉体も魂も様々な方法で保存する事が可能で、それ等を時を経て再利用することで現代に蘇る事が可能である。


「いや言うほど簡単じゃないでしょ。そのくらいの方法なら誰だって思いつくけど、実際にできた人がいるなんて聞いたことがない。つまり不可能ってことでしょ」


 ただこれは言うだけなら簡単だが、実際に行う場合、聖野の言う通りかなり困難なことだ。


 肉体の保管ならばただの冷凍保存で可能だが、魂の保管をする場合、超高度な術式や能力を求められる。

 加えて狙った通りの時間に目を覚まそうと思うのならば別の術式の準備をする必要がある。もしくは協力者が必要だし、そもそも眠っている途中に不慮の事故や他者による妨害に遭い上手くいかない可能性だってある。

 なにより最大の問題として『蘇ったとしても肉体が全盛期から遠い』という問題がある。


 ロッセニムのチャンピオンが引退する場合というのは、大抵の場合次の代に代わるタイミングなわけだが、その大半は全盛期を過ぎた事によって起きる事だ。

 その状態で蘇ったとしても意味がないというのが聖野の見解であり、もはや膝の辺りまで消えている極信に対し時間がほとんど残されていないと理解した上で上記のような質問を投げかける。


「お主の疑問は当然のものだがその辺りの対策はしているさ。そもそも最後に挙げた問題点は、元々の体で戻った場合に起きる問題であろう。ならば新しい体に乗り返れば問題ない」


 直後に呼吸が荒くなっていた極信が答えると聖野は目を見開き口を開き、


「その場合、魂と肉体が綺麗に一致せず魂が壊れるか肉体が崩壊して………………あ!」


 気づくのだ。だからこそ今、極信は死に向かって進んでいるのだと。

 先ほどまで元気に戦っていた彼がいきなり死に瀕しているのは、今しがた自分が口にした事が原因であると。


「拙者の声と肉体が合わないと疑問に思ったであろうが、それとて元来のものではないためだ。本来の拙者は六十を過ぎた老人。もはや戦場に立つことの出来なくなっていた老害よ」


 そんな聖野の察しの良さを前にして苦笑する極信であるが、聖野の顔は晴れない。

 どんよりとした曇り空のような表情で、聖野は自分の人差し指に似たサイズの猛者を見る。


「指示撫でして蘇った貴方にとって………………この結末は満足なのか?」

「無論だ。勝つことはできなかったが、最後に二度目の生を望んだだけの価値がある戦いを堪能できたのだ。これが満足でなくてなんとする」


 直後にもう一度だけ質問を投げかけると極信は一切の迷いなくそう答え、再度口を開くのだ。

 死にゆく自分の事を最後まで気に掛ける優しい青年に対し、『話すつもりのなかった』情報を語るために。


「この戦いに参加しているロッセニムの覇者達は残された時間の少ない者達ばかりだが、その中に一人だけ例外がいる」

「え?」

「活動時間に制限をかけられている者というのはな、全盛期から遠のいていたゆえに新しい体を求めたのだ。つまり全盛期の体を保ったまま最前線から身を退き、そこで未来に向かい眠った者ならば新しい体を用意する必要がないわけだ。例えば先日殺されたエスカッティ・バンピーロはその類であったし、東エリアで暴れているアサギ・クサマツもその類だ」

「!」

「この情報、上手く使えよ心優しき少年よ」


 そこまで語ると彼の残っていた上半身が真っ白に変色し、胴体から首へと向け勢いよく灰になっていき、


「さらばだ………………」


 微笑みながら別れの言葉を告げた直後、塵一つ残さず消えていく。


『ねぇみんな弁解させて! 生け捕りで仕留めた相手がね、いきなり灰になって消えちゃったのよ! ホントよ! お姉ちゃん嘘ついてないから!』

『こちらレオン・マクドウェル。対象を仕留めたんだが………………異変が起きた。少し説明させてくれ』


 それから僅かに間をおいてラスタリアにある蒼野達や作戦参加者に対し、北エリアと南エリアに出向いていた二人の戦士からの通信が入り、戦いは佳境を迎えた事を聖野は知った。



ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


西エリア編終了。此度の戦いにおける大目的の一つ、蘇りの謎に関する答えの提示回です。


言ってしまえば彼らの復活はかなりの無茶をした半端なもので、魂や肉体が滅んだ場合の『万全の死者の蘇生』は無理だって話ですね。

一番うまくやってるのは千年前のエヴァで、千年という時間を設定した上で現代に蘇っているので、ここら辺はやっぱ凄いですね。


次回は北エリアと南エリアがダイジェストで終わり残る東エリアでの激闘へ。

更には予期されていた件に関しても進んでいきます。


それと、前書きでも書きましたが前回はすいませんでした。

気にしない方もいらっしゃるかとは思いますが、明確なミスだったので書いておきました。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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