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西エリア大勝負 聖野VS極信!


 繰り出された神速の一振りが、射線上に広がっていたあらゆるものを切り裂く。

 なびく雑草も、堅牢な詰め所も、聖野の手によって上空から降り注ぎこんもりとした山を作っていた土砂も、全てが上下に分かれた。


「し、死ぬかと思ったぁ………………」


 聖野はと言うと攻撃が振り抜かれる直前に極信が振り抜く腕の軌道を見切っており、屈んだ事で九死に一生を得る事が出来ていた。


「いやまだか!」


 当たっていれば上半身と下半身がお別れしていた。


 直感でそう悟っていたため思わず息の一つでも吐きたくなっていた聖野だが、それを寸でのところで抑えたのも同じく直感であり、地面にしっかりとへばりついていた両足に力を込め後方へと跳躍。


「察しがいいな! その通り!」


 直後、幼い見た目に相応しくない渋さと重厚感を漂わせる声が着物で身を包んだ小人族の猛者の口から発せられ、聖野のいた場所に風属性ゆえに不可視に極めて近い刃が奔り、それから続けざまに百度、聖野を狙った斬撃が振り抜かれ、聖野以外の全てを両断する。


(手にしてるあれも神器か!)


 それらを極信が振り抜く腕の軌道だけで見切り寸でのところで回避をし続けていた聖野であるが、その際に頭に浮かべた予想は正しく、小人族において史上最強と名高い彼は、再び現世に姿を表したのにあたり二つの神器を有していた。


 一つは蘇ったロッセニムの覇者達の大半に配られた、賢教が所有する神器産みの大樹を原型としたもの。

 聖野が得たものと同じく薙刀を基本とした物で、『自身が装着する』のではなく『操作し援軍として利用する』事に主軸が置かれた動く鎧の神器『体無し騎士』。

 もう一つが生前剣術を磨き抜いたことで正規の手段を辿り得た針の剣『迅針』であるが、この神器の能力は『粒子放出(刃)』というもので、粒子を注ぐ事で刀身部分を延長し射程を伸ばせるというものである。

 問題なのは粒子を込めてから刃が生成されるまでの速度であり、この速度が本人の速度と同じく光を超えている。

 ゆえに聖野の身に到達する瞬間に勢いよく伸びたかと思えた次の瞬間には霧散しており、刀身を掴んで腕から叩き落とすという聖野の目論見が叶う事はなかった。


「さあさあさあさあ!! 速度を上げて行くぞ!! ついて来い強者よ!!」


 そうして攻めあぐねている聖野を前に、極信が勝負を仕掛ける。

 自身が自由に操作できる動く鎧の神器に、聖野の動きを阻害するよう指令を出し、そのすぐ後に斬撃を幾度となく繰り出してくるのだが、これらは先ほどまでと大きく異なる点が一つだけあった。


(姿が見えねぇ! 小さすぎる!)


 先ほどまでは一か所に留まったまま固定砲台として斬撃を撃ち込んでいた極信であるは、今は動く鎧の神器を相手に足を止めた聖野を囲うように動き回っていた。

 地面の上を、崩れた建物の瓦礫の上を、何もない空を、自身の足場として利用すると聖野を囲うよう動き回り、目に見えぬほど薄く鋭い斬撃を絶え間なく撃ちだしていく。


 これぞ生前から今まで彼を支え続けた奥義『死円』である。


(一分野だけに限るならレオンさんやシュバルツさんを上回るか! 半端ないな!)


 それを受け続ける聖野が思い知らされるのは、移動しながら絶え間なく繰り出される斬撃の精度。

 光速を超える速度で跳ねまわっているにもかかわらず全てが正確に聖野に届いているという事実で、その一点だけを見た場合、目の前の小人族は彼が遭遇した全ての剣士の中で断トツ一位であった。


「お、おぉぉぉぉ!」

「木偶人形を盾として使うか。全く、慣れぬものを実践に持ち込むべきではないな!」


 このまま戦い続けた場合、自分に勝ちの目は存在しない。


 そう理解した直後、聖野が動く。


 邪魔ではあれど繰り出される動き自体はさして脅威ではない鎧の神器に全身でぶつかっていき、目標の両手を自身の肩と腕で固定しながら前に突き進む。


「弾の貯蔵が目的か!」


 彼の行く手に広がっていたのは、マビアガランを仕留めるきっかけになった大量の木材で、これを呑み込み、再び土砂崩れもどきを起こし自身を呑み込もうとしていることを察した極信が追従。

 聖野の足を切り落とそうと画策するが思うような結果を得る事は出来ず、


「飲み込め『暴君宣言』!」


 聖野が急いで生成した黒い球体が、目の前に広がる廃材全てを呑み込んでいく。

 と同時に能力を無効化される事を危惧した彼は、背負っていた鎧の神器『体無し騎士』をマビアガラン同様彼方へと向け投げ飛ばし、


「勝負だ!」


 告げる。

 次の一手が自身の繰り出す秘策であると。

 この戦いの行く末を、それに預けるとでもいうように声高に叫ぶ。


「受けて立とう!」


 応じる極信はといえば、それを真正面から返す意気を見せる。

 当然逃げも隠れもしないその選択は彼にとって危険なものであるが、小さな小さな闘志たる彼にとって二度目の生というのは強者と心ゆくまで戦うためにあるもので、そんな彼が強者の繰り出す全身全霊を無視するわけがないのだ。


「放出!」

「!」


 直後、空に昇り黒い太陽と化した『暴君宣言』が内に秘めた木材の数々を吐き出すが、これは先ほどまでと異なる姿をしており、大小様々な木片として降り注いだ。


(考えたな! 確かにそれでも拙者にとっては致命傷になりえるからな!)

 

 小人族が滅んだ原因はその弱さにあるのだが、中でも体の脆さは致命的なものであり、聖野はその点に注目。


(これだけあるのなら必ず何らかのアクションを起こすはずだ。そこを叩く!)


 脅威を退けるため極信が動く事に確信を抱き、ただただ待つ。

 無数の木片が様々なものに当たるのを、木片が自身に降り注ぎたんこぶを作るきっかけになった事なども気にせず眺め続け、絶好の好機を逃さんと再度意識を研ぎ澄まし、


「――――そこだ!」


 降り注ぐ木片の一つが地面にぶつかる直前、真っ二つに切り裂かれた光景を前にして駆け出す。

 二つになった木片が地面に接触するよりも早く距離を詰めると、逃げ場を奪うために周囲一帯を拳の雨で粉々にする。


「弱点を突いている事は認めるが拍子抜けだな。そんな甘っちょろい策など、拙者には通用せん」


 それが終わる直前、自身の身を守るため極小の風の結界を作っていた極信がその中から飛び出し、ガラ空きの背中を見せる聖野の心臓を突き刺し抉る。


 これにより聖野の心臓は破裂し口や鼻から血が溢れ、


「クソ、やっぱりこうなったのか。悔しいな」


 彼の口からはそんな言葉が零れるが、ここで極信は不審に思う。

 発せられる言葉に悔しさはあれど悲しみや絶望の感情が籠っていなかったのだ。


「貴様、一体何を………………ぬぅ!?」


 その正体を探るべく、既にこと切れていてもおかしくない聖野に対しそう尋ねるのだが、最後まで言い切るよりも早く、彼の人差し指よりも小さな体が凄まじい力で地面に叩きつけられた。


(馬鹿な! 溜めていた物は全て吐き出したのではないのか!?) 


 風の結界の中に籠っている際、極信は吐き出された木片の量がその前に飲み込んでいた木材と同等の量であることをしっかりと数えていた。

 だから外に飛び出し勝負を決めに行ったのだ。


 しかし彼の知らなかった、いや聖野が仲間内にさえ話していない情報があった。


 分解せずに内部に貯蔵しておいた物質の数々は、好きな時に吐き出したり分解して別の形に変わるためのエネルギーとして使える事ができるという事実。

 つまり今回の戦いに挑む前から溜めていたものが大量にあり、それを使う事こそ聖野の本命であったということで、


「俺の勝ちだな。上手くいって良かった………………いやできればその前段階の木片で潰したかったな。これじゃ勝った気になれねぇ」

「なっ!?」


 自身の勝利を盤石な物とするため、聖野が立ち上がる。

 破裂したはずの心臓を再生した状態でだ。


「馬鹿な。お主はそれほど高度な回復術は使えぬはず! なぜ生きている!?」


 するとこの事態に関しては完璧に想定していなかった極信が、全身の痛みさえ忘れ血反吐を吐きながらそう告げるのだが、返答は懐から取り出された物と共に行われる。


「賢教にある大樹から授けられた薙刀が変化した俺の神器。『デッドライフ(死に代わり)』なんて名前なんだけどな、使用者が致命傷を負った際、失った部位の代わりに三度だけ変わってくれるんだよ」

「!」

「一度失ったストックの補充に一週間かかる欠陥品なんだが、それでも便利だよな。こういう風に使えるわけだからさ」


 聖野が手にしていたのは信号機に似た細長い物体であり、点灯していた三つの光の内の一つが、聖野の言葉に従うように消えていく。


「悔しいかもしれないけどさ、勝負事ってのはいつだって、相手の知らない手札を用意していない方が強いもんでしょ」


 次いで口にしたのは自身の勝因に関してであり、反論がなく立ち上がる事もできないのが、この勝負が終わったことを明確に示していた。



ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


一気に決めちゃいました聖野VS極信の戦い。

最後の最後に勝負を決めるのはいつだって同じ。

隠していた手札による一発逆転でございます。


ただ聖野自身としては話にもあった通り、木片の雨の時点で決めた勝ったという本音なので、その目標を壊した極信はかなり強かったわけです。それこそ隠していた手札を全て無理やり表にするくらいには。


次回は優サイドのお話です。お楽しみに!


それではまた次回、ぜひご覧ください!!



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