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タイラントスペル・ネオ


 当然の事ではあるが、今回の襲撃にあたり仕掛ける側のロッセニム連合軍が対戦相手を選ぶことはできない。向かって来る相手を待つことしかできない身であったのだが、抵抗勢力として放たれる刺客が誰であるかに対して大まかに予想することくらいはできた。


 ゆえにその面々に関しての情報を頭に叩き込んでおくことくらいはしており、六代ロッセニム覇者マビアガランの目の前にいる聖野も、そのうちの一人に名を連ねていた。


(来るか! チビ助の真骨頂!!)


 となれば当然の帰結として聖野が近接戦闘を主体としている事。そのクセ非常に強力な飛び道具として希少能力『暴君宣言タイラントスペル』を有していることくらいは知っており、


「問題ねぇ。来るといいさ」


 それが放たれると承知の上で嗤う。無意味であると。


(無効化した瞬間に見せるアホ顔がお前の死に顔だぁ!)


 内心でそこまで断言できる理由、それはロッセニムの覇者たる人物が全員、神器を有しているからである。


「食い尽くせ!」


 ゆえにいつだって目前の黒い暴威を消し去ることが彼とその相棒たる人物は可能なのだが、あえてすぐには消さない。

 最も効果的な瞬間。つまり『必殺』を確信し撃ちだされる攻撃を無効化する事を目論み、その前段階であるあらゆる物質の吸収は見送る。

 木々を喰い尽くすようすはおとなしく見送り、自分らの側に迫って来たタイミングで大きく距離を取り、『暴君宣言』を無効化しないよう細心の注意を払い、


(来い! 来い来い来い来ぉい!)


 彼が足場としていた木々を一通り吸収し終え聖野の頭上にまで戻っていく光景を黙って見届けた後、彼は上記のように念じながら聖野へと向け疾走。


 能力を無効化された直後に聖野が見せるであろう決定的な隙 


 その瞬間に自身の爪が顔面に届く距離にまで肉薄。


「当然知ってるよな。俺の能力くらいは」

「!」

「だから不用意に近づいた」


 直後、全身の毛を逆立てる悪寒が彼の全身を突如襲い、


放出リリース


 その正体がやってくる。


 黒い球体の中に入っていた無数の木材が飲み込んだ時と同じ姿のまま、雪崩や土砂崩れのような勢いで聖野の側にまで迫っていたマビアガランの全身を包み込み押し流す。


「こいつ、は!?」


 聖野が新たに得たこの力は能力の『発現』でも『強化』でもない。『改造』や『ルールの追加』に当たる行為。

 希少能力『暴君宣言』は通常、飲み込んだ物質を粒子に変換し『終末エンド』や『裁き(エグザ)』のように決まった形に変換して吐き出すという力なのだが、ここに聖野は新たなルールを付け加えた。


 それが飲み込んだ物質を分解せずそのまま保存しておくというルールで、『放出』と唱えれば好きな時にある程度指向性を与えた上で吐き出す事ができるというものなのだが、当然ながらこれは既存の姿形を変化させた場合と比べれば威力は劣る。

 だが威力減少というデメリットを背負ってでも得るほど大きなメリットがそこには存在していた。


(神器の持つ能力の無効化が………………効果を発揮しねぇ!)


 それが全ての神器が持つ全ての能力の天敵たる効果。


 能力の無効化という網をかいくぐる事ができるというものだ。


 なぜなら『全てを飲み込む黒い球体』という部分は能力判定に引っかかるが、『飲み込んだ物をそのままの形で吐き出す』という現象は異能の判定を受けるようなものではなく、これにより聖野は『暴君宣言』が抱えていた大きな弱点を克服するに至った。


「――――そこ!」

「!」


 聖野の声がマビアガランの耳に届いた直後、勝敗が決する。

 大量の木材に飲み込まれ自由を失っていたロッセニム覇者の胴体に千を超える拳が突き刺さりその意識が刈り取られ、木々という障害がなくなり地平線が見えるようになった彼方へと向け飛んでいき、戻ってこない。

 こうして聖野は襲い掛かる二人の刺客の内の一方を退けるに至るが、息をつく暇はない。


「さて問題は………………」

「――――」

「アンタだよ!」


 既に全身を鎧で包んだもう一人のロッセニム覇者が迫っており、繰り出される鋭い一太刀を躱すと百八十度反転し、真正面から対峙し反撃の拳を撃ち込んでいく。


(防御が早い。こっちの人は完全に俺の動きについて来てる!)


 それらを対処する動きに迷いはなく、聖野は確信する。

 此度の襲撃において厄介なのは、正体のわからぬこちらの刺客であると。


(………………なんだこいつ。ちょっとおかしくないか)


 とここで聖野は疑問に思っていることがあった。

 それが目の前の存在の持つ得体のしれない感覚に関してだ。


(至近距離で能力が発動できない以上、相手が神器持ちなのはわかる。その神器が体に纏ってる鎧だっていう事も把握できる。けど………………こいつはそれだけじゃない。何か大きな秘密を抱えてる!)


 戦闘開始から今まで、目の前の存在はいつだって完璧なタイミングで様々な行動を繰り出していた。

 攻撃するタイミングは勿論の事、聖野がかく乱する動きや背後を取って攻めた際も視線を合わせることなく正確な防御を行っていたし、マビアガランが攻撃した際に生み出してしまう隙とて完璧な援護で潰していた。

 それは仲間との息の合った動きや敵対者と呼吸を合わせるというレベルのものではない。もっと違う答えであると聖野は確信していた。


(ただ強いからっていう理由なら、もう俺は負けてるはずだ。だから必ず種と仕掛けがあるはずなんだけど、それは一体なんだ?)


 圧倒的な実力差でもなければ、賢教から貰った神器を持ってるゆえの能力でもない。


 もっと違う仕掛けが施されている。


「せいっ」


 そう考えながら攻撃を捌いていた聖野が、正体のわからぬ相手の伸ばした右腕を掴むとマビアガランの吹き飛んでいった方角へと投げ飛ばす。


「………………」

「!?」


 直後、変化が訪れた。

 着地する際に生まれた僅かな隙を利用し放った聖野の飛び膝蹴りが、初めて顔面にクリーンヒットしたのだ。


「今のは………………」


 直後に怯むことなく繰り出された一太刀を躱した聖野が距離を取り、続く連撃を後退して躱しながら聖野は考える。

 攻撃が見事に当たった謎に関して解明しようと躍起になり、そうして頭を回転させ続けていると更に気づくことになる。


 自分達が最初にいた位置。

 つまりあの凄惨な光景が広がっていた場所に近づくほど、攻撃の精度が増していると。


「まさか………………そんな簡単な答えなのか。いやでも、それなら無駄に死体を汚した理由だってわかる!」


 瞬間、聖野の脳裏にある閃光が奔る。

 あまりにも単純な、けれど否定しきれない一つの案。

 次いで脳裏に浮かんだのは歴代ロッセニム覇者の中でも一際目立つ存在に関してで、迫る鎧武者を引き離すように走りながら『暴君宣言』で地面を抉り始め、それが終わると一度の跳躍で詰め所全体を眺められる高所にまで移動し、


「解放!」


 命じる。己が使役する黒い球体に。


 中に貯蔵した物を吐き出すように。


 すると四肢をもぎ取られた数多の死体を呑み込むように土砂は降り注ぎ、それがしばらく続いたところで聖野は見たのだ。

 そこから伸び出た一つの砂柱を。


「凄惨な死体の数々は趣味趣向によってやった物じゃない。忌避感から相手を近づかせないため。それに隠れる場所を作るためだ。一度だけマビアガランを『兄弟』と呼んだのだってその場に自分が居ると思わせるため!」

「………………!」


 その影へと勢いよく距離を詰め真正面に立つと、自身の至った推理を語る聖野であるが、実際に目にして驚いた。


「歴代ロッセニム覇者に関する資料、読んどいてよかったよ。でなきゃ絶滅した種族から出たチャンピオンの事なんて頭に浮かばなかっただろうからさ」


 なぜならその人物は――――――あまりにも小さかった。


 『巨人族』動揺絶滅した『小人族』から排出された稀代の傑物。

 第二十二代ロッセニム覇者は、身長百六十センチ少々しかない聖野の人差し指と同じくらいの体躯であったのだ。

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


聖野編第二話目。新たに得た力の紹介回。かつマビアガラン撃破&本命登場回。


一話で一気に状況を進められ、その上で聖野の強さもある程度描写できたので、作者は勝手に満足しちゃってます。やっぱり十年経ったうえで成長した姿を見せれるといいですね。


と同時に登場しましたもう一人のロッセニム覇者。

絶滅した種族などという悲劇はあれどロマンも兼ね備えた設定を持っているのは小人族が生み出した傑物!

正体を晒し戦いは終盤戦に向かいます。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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