聖野と二人のロッセニム覇者
(戦い始めてからずっとピョンピョンと跳びまわってる獣人の方はまぁ何とかなる。問題はもう一人の方だ。あっちは厄介だ)
ラスタリアを中心に置き、東西南北で核戦力の代表者たちの戦いが始まっていたが、その中で最も苦戦を強いられていたのは西エリアを任されていた聖野であった。
これは他の場所と違い一人だけ二人のロッセニム覇者の相手をしなければならないという単純な理由もあるが、最も重要なのはそのうちの一人。
最初に現れたマビアガランではなく、後に現れた存在が得体のしれない存在であったからだ。
「そこの奴はさ」
「あん?」
「鎧を着こんでいるってことは実体は持ってるってことでいいんだよね。そのクセどれだけ攻撃を受けても微塵も怯む様子がないけど、もしかして痛覚が壊れてる感じ?」
「おいおい、邪魔者であるお前さんに、わざわざ情報を渡すと思ってんのかよ!」
後から現れ、聖野の腹部に手持ちの治療薬ではすぐに直せないほど深い傷を与える事になった理由である存在。
彼は実に奇妙であった。
聖野よりもさらに小さな体躯をした、木製の古ぼけた鎧を着ている存在であることくらいはわかるのだが、足の指先から頭のてっぺんまで全てを覆っているため男か女かさえわからず、右手に両刃の剣を、左手にラウンドシールドを持っている癖に、一度たりとも使っていない。
聖野が攻撃を仕掛けたとしても防御する姿勢を見せることは一度たりともなく黙って攻撃に当たっているし、攻撃の際は正体不明の力でどこからともなく切り裂かれたり殴られており、そんな不思議な事の数々をしているというのに、十年という時を経て神器を得ていた聖野の能力無効効果に引っかからないときていた。
「ウォーフォウ! 一気に決めるぜ旦那ぁ!」
「品がない笑い方だな。そんな笑い方でロッセニムの覇者を名乗れるのか?」
「憎まれ口の勢いがねぇぞ小僧!」
「うるせぇ」
最も厄介なのは、そういうわけのわからないだらけの相手が決して欲張ってこない事であった。
数々の謎現象の絡繰を解かれるのを嫌っているからか、はたまた別の理由があるのかまでは聖野にはわからない。
しかし事実として、戦闘開始から今まで一度たりとも言葉を発していないその存在は、自分が主体となって動くことは一度もなかった。
先頭に立ち派手に暴れ回るのは木々の間を跳びまわる奇声をあげるマビアガランのみで、絡繰りのわからない謎の存在はといえば相棒が大ぶりな一撃の間に産んでしまう隙間を埋めるような立ち回りが中心で、他にやることがあるとすれば聖野が繰り出した一撃にカウンターを撃ち込むくらいであった。
「…………まだ叩き込まれた脇腹に重さが残ってやがる。どういう種だよホント」
そのカウンターを受けた際に食らった衝撃の残り香に対し憎まれ口を叩く聖野であるが、木々の間を跳びまわる獣人がそれを黙って見守る理由はない。
「そこだおらぁ!」
自慢の脚力で聖野を攪乱しながら距離を詰め、行けると思ったタイミングで一気に飛び出て鋭利な爪か自慢の脚力を活かした蹴りをお見舞いする。
「………………………………」
(また! 見透かしたようなタイミングで!)
それだけならば聖野は完璧に把握できるのだが、それをさせまいともう一方が動き出し、わけのわからない謎の攻撃が体のどこかに当たり、血が噴き出す。
そんな展開が既に十数度。時間にして五分以上続いており、
「………………クソッ。故人の死体は綺麗にして遺族に渡すのが通例だってのに。覚えてろよお前ら!」
舌打ちをした聖野が二つ、諦める。
一つは周囲に及ぼす被害を最小限に抑えるという事。
もう一つは死んだ兵士たちの今後に関してで、
「タイラントスペル」
その二つの縛りから抜け出した聖野は発動するのだ。
十年経ち新たな力を得た自身の真骨頂を。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
本日はマジで体調が崩れてしまったので短め。
聖野側の戦いにおける疑問提示回ですが、今回短かった分、次回はちょっと長めの解答回を一気に進められればと思ってます。
まぁこれは、予定程度で聞いていただければと思いますが。
聖野の得た神器に関してはまた今度語れればと思います。
なんにせよ次回からは反撃のターン。
今回様子見を続けていたせいでほとんど動かなかった聖野の、十年という月日を経た動きを発揮できればと思います。
それではまた次回、ぜひご覧ください!!




