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ラスタリア防衛戦 二頁目


「ここに集められた理由は分かったよ。なら次は敵の戦力に関してだ。といってもそこの不死女が『ここまで集まるのは過剰戦力』と言ったくらいだ。大したものではないんだろ?」

「不死女ってまとめると、貴女も当てはまっちゃうんだけどね。なんにせよコレが今回の相手の戦力よ!」


 蒼野がこれだけの布陣を集めた理由を告げたところで、未だ完全には事情を知らぬエヴァがアイビスを指さしながら質問を投げかける。

 すると指さされたアイビスが目の前にある円卓を人差し指で小突き、それに呼応し空中に四つのモニターが出現。

 十年前まで存在していた白亜の壁を撤去し新たな形となった円形都市を囲うように、東西南北へと移動していった。


「彼らの潜伏場所は四ヶ所よ。自然を利用したり、そこらに存在していた採掘場の残骸を利用したりして、小さな要塞を組んでるわ。人数は一か所につきおよそ五百人の合計二千人ほどで、強い力をいくつか確認できるわ」

「なるほどななるほど…………………………ほかには?」

「んー今のところ見当たらないわね」

「………………………………………………いやホントに弱くね? 過剰戦力どころか、ワタシと隣にいるデカブツだけで十分対処できるレベルだぞコレ」


 腕を組んだ状態で耳を傾けているエヴァは、最後まで聞いてしばらくのあいだ閉口。

 口を開き告げたのはそのようなもので、その発言を受けたシュバルツはと言うと『全部任せていいぞ!』とでも言いたげな雰囲気で胸を張った。


「いや待ってくださいエヴァさん。そもそもお二人は世間には隠してる切り札じゃないですか。ですからそうほいほいと使えませんって」

「そういえばそうだったな。ならワタシらはもしもの時の控えってことか」


 次いで聖野が苦笑しながら指摘しエヴァが納得すると、シュバルツは肩を落とした。『とても残念だ』とでも言いたげな雰囲気で。


「お二人の扱いに関してはまさしく聖野の言った通りです。ですから残った面々で対処に当たるわけですが、正直なところ俺は、この四つの戦力は『餌』の類だと思ってます」

「陽動というわけか。なら本隊は」

「少人数の精鋭が、気配を消して潜んでるって感じだと思ってtます」


 そこまでの話を受けて話を纏めるのはまとめ役である蒼野で、アイビスがやったように円卓を叩き、手元に出現した四つの青色の駒を各モニターの前へと移動させる。


「今回の作戦の基本は、ここにいるメンバーを一人ずつ現地に送って、現地に控えている哨戒や周囲の兵と協力して各個攻略となります。メンバーは北エリアをレオンさん。東エリアを優。西エリアを聖野。南エリアをアイビスさんで行きます」

「お前さんはともかくとしてゼオス・ハザードも留守番か。温存戦力が多すぎやしないか?」

「ゼオスの待機には確かに戦力の温存の意味合いも含まれているんですけどね。本命はフットワークの軽さを活かした各所への援護です。こういう時『時空門』はすっごく便利なんですよ」


 それから次々に指示を出していくがその内容に関して異論を挟む者は居らず、蒼野は各エリアへと行く面々に対し、付近の戦力に関してまとめた資料を配布。レオンや聖野、それに優が真面目な顔で目を通し、アイビスだけは欠伸をしながら眺めていた。


「作戦の開始はどうする。宣戦布告が悪戯の可能性を考慮して、奴らが動くまで待つのか?」

「その場合、相手に先手を打たれて被害が出るリスクがあります。それは避けたい。なので先手を打ちましょう。悪戯だった場合は、そんなことをした自分らが悪いという事で、ちょっと痛い目を見てもらいます」


 途中でレオンが視線を蒼野に向けながら尋ねればそう答え、


「ハイハイ質問。敵さん達はぶっ殺しオッケー?」

「ダメに決まってるでしょ。全員が情報源になる可能性があるんで一人残らず生かしてください」

「少しくらい殺した方が、こういう騒動は収まりやすいんだけどねー」


 アイビスの気軽ながら物騒な提案は即座に否定。

 それから一分ほどで全員が渡された資料を読み終え、


「よし、じゃあ移動を始めましょうか。ゼオス、みんなを予定していたエリアに」

「…………心得た」


 蒼野の発言を聞きゼオスが能力を発動。四人が指定された位置へと移動した。




「おい! そっちの方はどうだ! 怪しい影はないか?」

「あーはい。敵影は見えません。どうぞ」

「気が緩み過ぎだ。やっぱバイトはダメだな」

「はいはーい」


 ラスタリアを囲うように設置された四つの要塞であるが、実のところ、そこに集まっている面々は全員が全員ロッセニムの関係者というわけではなかった。


 『世界を十年前まであった闘争に満ちたものに変えたい』という彼らのスローガンを聞き、各地で燻っていた者達。

 それに高額なバイト代に目がくらんだ者らが、参加者の中に混ざっており、南エリアに建てられた急造の石の要塞では、その中にいた探知能力が優れた者。もしくは戦力としてはあまりアテにならない者。


「こうやって周囲の探知を行ってるだけでまとまった金が入ってくるなんて、いいバイト先を見つけたもんだぜ」

「だな」


 はたまた上記の王にやる気が著しく欠けている者達を、最前線に建てた鋼鉄の監視塔の中に待機させており、五分ごとに周囲を探知した結果を送らせていた。


「出動時間まであとどのくらいだっけ」

「十五分だ~」

「ならあと三回周りを探れば俺達の仕事終了か。ホントにぼろい仕事だぜ」

「だな。あ、そこにあるガム取ってくれ」

「おうよ」


 高額のバイト代に惹かれてやってきた面々の中には、十代中頃の戦場などロクに経験したことのない者達やお菓子を頬張りだらけている者も存在していたのだが、彼等のような者がさして考える事もなくこのようなアルバイトに参加していたのは、蒼野が行っている治世における問題点と言ってよいだろう。


 といってもそれは『平和過ぎるゆえに戦時下の事を知らない子供が増えた』という事でもあるので、強く批判できる事でもないのだが。


「………………あん?」

「どした?」

「いや、なんか向こうの空が光って………………!?」


 そんな彼らの全身に冷や水をかけるように、己が下した甘い選択を咎めるように、天罰が如き光柱が彼方から襲い掛かる。


「う、あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


 遠方より光の速さで迫った粒子の塊は五十メートル近い高さの監視塔を丸々飲み込み、その中に隠れていた者達に直撃。

 大半は味わった事もない凄まじい痛みを前に意識を失うが、これは不幸ではなくむしろ幸運だ。


「ひーふーみーよー………………意外と残ったわね。まぁ殺さないよう気を付けたらこんなものかしら」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 南エリアのに送られてきた者。すなわちアイビス・フォーカスは、神教に歯向かう敵対者に対しては最も苛烈な性格をしており、意識を残していた者の四肢を貫くように鉄杭を発射。

 貫かれた全員が絶叫をあげるが顔色一つ変えず意識を失うところを見届け、


「よし。傷も治した! 言いつけ通り死傷者ゼロ! えらいぞ私!」


 回復させたかと思えば両腕を持ち上げそう宣言。

 やってくる追っ手も言葉通り手首を捻るだけで退けるその姿には恐ろしさだけでなく一種の神々しさが含まれており、


「さてと、親玉を早く潰して戻っちゃいましょ」


 そんな彼女の一方的過ぎる蹂躙が今、始まった。






 

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


無双回、開始。

本当に僅かではありますが、久しぶりにアイビスの戦闘が書けたので嬉しかったりする筆者です。

続けて聖野や優の戦闘もありますし、それなりの強敵も出るのでご期待ください。


それではまた次回、ぜひご覧ください!


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