奔る車輪と新たな参加者
「ところでさ、次の場所はどこなのさ~?」
「そういや実際の予定はお前さん任せで、俺達は何も知らねぇんだよな。詳しい予定を教えてくれよ」
賢教を発ってから二時間程過ぎた午後八時過ぎ、電車に乗るのに飽きてきたイレ・スペンディオが背伸びしながら尋ね、それまで目を瞑っていた兵頭我龍がそれに追従するが、聞かれたシェンジェンは答えない。
「ヒ・ミ・ツ。こういうのって予定がわからないからこそ楽しめるものがあると思うんだよね」
今回の旅行の主催者である彼は、唇の側にまっすぐに立てた右手の人差し指を持っていきながらそう告げ、けれど数秒して思い直したのか自身のこめかみを人差し指でグリグリと押し、
「といってもあれだね。流石に今日の宿くらいは行っておくべきだと思うから発表しちゃうけど、今夜の宿はこの列車になります!」
「寝台列車という奴ですか。いいですね。初めての経験ですわ」
両腕を大きく広げながら堂々と言い切ると、猫目メイや狗椛ユイなどの大富豪な親の元で育った面々を含めた全員が初の経験であったようで、目にした反応で心を満たされたシェンジェンは、普段と比較して遥かに軽やかな足取りで立ち上がると、他の者について来るよう手招き。
他のお客さんに迷惑をかけないよう気を付けながら奥へ行き、次の車両へと続く扉を開いた。
「ここが今夜の寝床だよ! 貸し切りだからよっぽど大きな声をあげない限り周りに迷惑をかけることもないから、昨日みたいに遊んじゃおう!」
辿り着いた部屋はビジネスホテルを連想させる空間で、ガルゴネシアや我龍のような巨体の者でも眠れるほど大きなベットがニ十個左右に敷き詰められた部屋には、男女を分けるための柵もしっかりと準備されていた。
「机の上に乗ってるのは駅弁だね」
「電車の旅にぴったりというわけですね。やりますわね」
「奥にあるのはシャワールームに洗面台ですね。お風呂がないのは残念ですが、貴重な寝台列車の旅なんです。その程度は大目に見るべきでしょうね」
それから各々が好きなように部屋の中を見渡してみれば、それぞれのベットの上には夕食の代わりとなる駅弁が置かれてあり、奥に行けばトイレにシャワールーム。それに洗面台が三人分ずつ用意されていた。
「朝食はまた明日運ばれてくるらしいから今は気にしなくていいとして、遊ぶにしても昨日とは違うタイプ以外の物がいいな。おススメとかある?」
「ボードゲームとかどうかな? いくつか持ってきてリュックサックの中に入れて来てるんだ」
「いいねいいね! おススメとかある?」
こうして車両内の案内や確認を終えたところでシェンジェンが肩を並べていた良照にそう提案し、シェンジェンと同じように遊びたいと思った物は二人の側へ。
「ご本人に聞かれると気まずいですが、このタイミングでリイン殿が居なくてよかったですね。絶対に恐ろしい不運が来るでしょ」
「それはそうですけど………………あまりそういう事は言うべきじゃないと思いますよ東一郎さん」
「おっと失礼。許してくだせぇアレクシィ殿」
そうでない者は食事を取るなり読書するなり、はたまた外の景色を見続けるなりして、二日目の夜を過ごしたのだ。
問題があったのは次の日の朝。
運ばれてきた朝食を食べ終え、次なる目的地まで迫った時の事だ。
「悪いねシェンジェン君。私はこの辺りで帰らせてもらうよ!」
側にあったカーテンを開き外の景色を見たところで、ヌーベが声を引きつらせながらそう宣言。
シェンジェンの返事を聞くよりも早く、脱兎の如き勢いで駆け出そうとしたが止められる。
この反応を前もって予期していたシェンジェンによってである。
「本人からこうなる可能性があるって聞いてたけど、思ったより拒否感が凄いね。そんなに彼女の事が嫌いなの?」
「そういうワケじゃないんだけどね。今はそう! 会うタイミングじゃないと思ってるんだ。だから離して欲しい! 後生だ! 僕にできる事なら君の願いを叶えて――――――」
続けて尋ねかけると彼は普段のマイペースな態度を崩し、機関銃の掃射の如き勢いで喋り出すが、次なる目的地、すなわち倭都に辿り着いた瞬間に現れた人物。
「また私から逃げるつもりか貴様!」
「逃げない………………逃げないよ。…………………………もう諦めました」
天地勇美を見た瞬間、諦めたように肩を落とし項垂れた。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
文章量が少なくてすいません。体調をちょっと崩し気味な影響です。次回投稿までには直せればと思います。
さて話題は変わり今回の話は第二の目的地、すなわち倭都への移動までのお話です。
と同時にこれまで出て来てなかった最後の参加者が合流。
彼女が最初からいなかった理由は、今回の話で見せたヌーベの反応、これを封じたかったという思惑が合った故です。
次回は倭都観光です。お楽しみに!
それではまた次回、ぜひご覧ください!




