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依頼:最後の星の捜索 一頁目


「お客様ですか? 内部見学のお時間は終了しています。申し訳ありませんが日を改めて伺っていただければ………………」

「はい、これ」

「………………失礼しました。中へお入りください」


 古賀蒼野が神の座になり十年。

 それだけの日々が経ち大きな変化を見せた賢教であるが、それは教皇の座が住む居城『賢者の栄華』に関しても同じであった。


「進入禁止エリアに関しましては近づいた際に警告音が鳴りますので、速やかにお立ち去りください。万が一警告を無視した場合、守衛の者がやってきますのでご注意を」

「はーい。ありがとうございまーす」


 かつてのこの場所は、賢教の住民であっても入るのには苦労のする場所で、他の勢力に属している者の場合は、賢教に所属している高官の許可があってやっと入れるような場所であった。

 加えて言えば、そうして入る事が出来たとしても、少しでも不審な動きをした場合、警備用のトラップが作動し殺しに来ることがあったのだ。


 しかしである。


 ガーディア・ガルフが起こした世界を巻き込む大事件の際に他勢力と共同戦線を張ることができ、その上で神の座が蒼野に移りエルレインに他勢力も訪れることが出来れるようになったことで、この場所にも大きな変化があった。


 各所に仕掛けられていたトラップの類は全停止。

 日中ならばどの勢力から来た人物でもしっかりとした身元確認を行いチケットを買えば、内部の解放されたエリアの見学ができるようになったのだ。


「………………着いた。えーとノックは………………七回か。間違えないようにしなくちゃね」


 一階一階奥にある魔法陣に乗り、シェンジェンの体が紅色の光に包まれる。

 その際に訪れる景色の急激な変化に酔わないよう目をつぶったシェンジェンが数秒経たところで目を開ければ、そこに広がっていたのは通って来た道と同じ廊下。

 されど置いてある調度品の数と値段の桁数が大きく異なる場所で、彼はやや緊張した足取りで最奥まで辿り着くと、口にした通り七回ノック。


「来てくださったのですね。どうぞ中へ」


 怜悧な声が扉の先から聞こえ中に入ると、彼を迎え入れたのは空に浮かぶ無数の書類に分厚い本。それに天まで伸びる年季の入った本棚であり、


「ようこそ。お待ちしておりましたよ」

「神教所属シェンジェン・ノースパスです。本日はお招きいただきありがとうございます」


 そして教皇アヴァ・ゴーント亡き後、仮とはいえ賢教を統治していた、死の寸前まで彼の主治医だった人物。

 栗色の長髪を紫色の髪留めで留め細いフレームのメガネをかけ、銀色の刺繡が施されたカソックではなく黒いスーツを身に纏った美女、枢機卿エインセルが彼を迎えた。


「いや違う。は、初めまして」


 アヴァ・ゴーントが病死したのは今から三年前のことで、それから今まで賢教は彼女が統治していた。

 その手腕は専門分野が回復術である者とは思えぬもので、アヴァ・ゴーントやクライシス・デルエスクが居た時ほどの統治とまではいかずとも、各勢力と協力し賢教という巨大な勢力の意見を纏め、各勢力と友好関係を結べるところにまで漕ぎつけていた。

 シェンジェンがそんな彼女と会うのは今回が初めての事で、様々な情報媒体で見たことがある鋭い視線や言葉の数々に、柄にもなく緊張しているというのが今の状況だ。


「楽にしてください。今はティータイムの時間だったのですが、貴方もいかがですか?」

「あ、えと、いただき、ます」

 

 そんなシェンジェンの心境を察したのか、はたまた友好的な関係を結ぶためであるかはわからないが、彼女はシェンジェンがやや言葉を詰まらせながらそう告げると念動力。

 いわゆるサイコキネシスで部屋の奥にあった食器棚からコーヒーカップと白磁の皿を取り出し、机の上に置いてあったコーヒーポットに入っていたコーヒーを注ぐと、シェンジェンを自分の側に来るよう目配せ。

 近づいてくる間に手元に置いてあったスコーンをカップと一緒に持ってきた真っ白な更に移すと、イチゴジャムと生クリームの入った小皿を彼に差し出した。


「お味はいかがですか?」

「あ、これ………………凄くおいしいです」


 シェンジェンは促されるままそれを食し、感想を聞かれるとそう返答。


「駅前にある焼き菓子屋『グランママン』で売っている物です。もしよろしければ、お土産に買っていかれるといいでしょう」


 夕日が沈むのを見届けながら二人は時折そんな他愛もない会話を行い、お皿に乗っていた物を全て食べ終えた時には、シェンジェンが抱えていた緊張感は消え去っていた。


「緊張はほぐれましたか?」

「お心遣いありがとうございます。というかダメですね僕。教皇様にここまで気を使ってもらうなんて、すごく申し訳ない………………!」

「お気になさらず。私など相応しい者がおらず、席を開けておくことができない故にこの玉座に座っている代理です。かしこまる必要はあるません」


 腹が膨れ、心も落ち着いた。

 そうなれば零れるのは自身の失態に関してなのだが、エインセルはシェンジェンを掌で制しそう発言。その優しさを前にすると更なる罪悪感が湧いてしまうシェンジェンであるが、


「えっと、それで依頼と言うのは?」


 ウジウジし続けても時間を無駄に浪費してしまい、それは目の前の女性にも待ってくれているであろう友人にも悪いと思い、話を前へ。

 それを聞いたエインセルは自身の手で机に設けられていた収納スペースを開き、クリアファイルから書類を取り出しながら告げるのだ。


「人探しをお願いしたいのです」

「人探し、ですか?」

「ええ。賢教が誇る最大戦力の一人。消えた最後の星の捜索をお願いしたいのです」


 監獄島に閉じ込められた康太とアビスが出会うきっかけとなった恩人ゴロレム・ヒュースベルト

 部屋に閉じこもり出てこなくなった聖騎士の座シャロウズ・フォンデュ

 そして千年前の戦いを経験し生き延びた生き字引、雲景


 彼らに並ぶ最後の一人に関する情報を。

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


今回の話はシェンジェンサイド!

出される依頼は、これまで長いあいだ出てこなかった最後のピース。

四星最後の一人の捜索依頼であります。

更に言えば少年時代編では本当に少し、それこそ名前くらいしか出てこなかった人物アヴァ・ゴーントの主治医エインセルの登場です。


そんな新キャラ新情報だらけの賢教旅行編。

次回は引き続きシェンジェン側。そしてホテル側に関しても進めて行ければと思います。


それではまた次回、ぜひご覧ください!


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