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バットデイズ・ピリオド


 朝起きて、知人友人と待ち合わせ場所で顔を合わせ、楽しみだった一週間にも及ぶ大旅行が始まる。

 シェンジェン・ノースパスにとって今日という日はそれだけの事であった。

 列車に乗り最初の目的地である賢教の総本山に辿り着き、旅行中にやらなければいけない仕事があり一時場を離れはするものの、夜になれば持ってきたトランプやらボードゲームで遊んで夜更かしをする。

 一日目の予定などその程度の、ありふれてはいるものの幸福なものであったはずなのだ。


「本当に、本当にすいませぇぇぇぇぇぇん! こ、これ! これ全部絶対にワタシのせいです! ワタシがいるから! こんなことにぃぃぃぃぃ!!!!」


 年に似合わぬ激しい戦場を潜り抜けてきたものの、未だに年相応な面も備えているシェンジェン・ノースパスの構築したそんな予定は、けれど容易く崩れ去った。

 俄かには信じがたいことであったが、案内役に選ばれたリイン・アンリアルの持つ異能『不幸』によって、宿泊先のホテルが崩れ落ちるという事態によって。

 となればシェンジェンも含め不平不満を口にしたいと思う者らもいたのだが、それも中々難しかった。


「顔を上げてくださいリインさん。なんにせよ宿を探しましょう」

「んだな。夏とはいえもう夕方になる時間だ。ここで足を止めてたら、あっという間に夜になっちまうぞ」

「お、お二人共………………ありがとうございますぅぅぅぅ!! わ、ワタシ! 足が千切れてでも走り続けますね」

「あ、いや、それは止めて欲しいかな。できれば目の届くところに居てもらうとありがたい」

「足が千切れるまで走り続ける人の姿なんて見たくありませんしね」


 なにせこの事態を引き起こした本人はかなり真剣に悲しんでいる。

 繁華街から幾分か離れ、今は消防隊らしき面々は到着したホテルからしばし離れ、人気のない場所で土下座している彼女は、おそらくそれなりに力があるのだろう。

 頭をガンガンと地面にたたきつけ地面に亀裂を奔らせているのだが、その顔は涙と泥、それに額から零れた血が混ざり、ぐちゃぐちゃで見てられないほど酷い物になっていた。

 とすれば最初に声をかけたレウや我龍と同じ意見を大半の者らが胸中で抱いており、神の座になった古賀蒼野のように、一瞬で建物を修復する力を持っていない学生十数名は今宵の宿に関して考え出す。


「あ、ごめん。その会話に僕はちょっと入れないかも」

「ありゃりゃ。どしたのさシェンジェン」


 このタイミングで頬を掻き申し訳なさそうな表情で口を開いたのは此度の旅行の主催者であるシェンジェンであるが、これに関しては仕方がない。

 なにせ彼は、エルレインについてすぐに、賢教の本拠地たる古城『賢者の栄華』にまで足を運ぶよう言われていたのだ。


「実は今回の旅行を行う際に用事をいくつか貰っててね。夕食時までには帰るからさ。泊まる宿だけ決めて、連絡してくれない。用事を終えたらそっちに向かうからさ」


 ゆえに事情を説明したシェンジェンは一時離脱。残った面々が今夜の宿に関して探し出すのだが、幸運だったのはこの手の話題に関して役に立つ者らがいた事だろう。


「まー突然の事で困っちゃったけどさ、流石に野宿は止めたいよね~。キャンプは別日で行う予定だったし………………ここはパパの力を頼りますか!」

「それでしたら私にお任せくださいな。貴方よりも素晴らしい宿を見つけて差し上げますわよ!」

「おぉ、心強いね言葉だね! じゃ、どっちの方がいい結果を出せるか勝負だね!」


 なにせここに居るメンツの中には親が大富豪であるものが少なからずおり、イレ・スペンディオと猫目メイの二人が親に連絡。


「二人が親と連絡を取ってるあいだに、我々は足を使って探そう。リインさんはエラッタと共に、メイさんやイレ君と共にここで待機していてください。それでいいかいエラッタ?」

「かまいませんよ。動きさえしなければ襲って来る不幸のレベルも大したものではないでしょうし、時間があるうちに私の能力で彼女の不幸に対処できるか試してみます」

「そ、そそそそ………………そんなことができるんですかぁ! ぜ、ぜひお願いしますぅ!」

「よし。なら二十分後にまたここに集合だ。いいね?」


 そうしている間に他の面々は数人ずつのグループに分かれエルレイン一帯の探索を開始。

 それはまとめ役で会ったヌーベが告げた通り二十分ほど続き、午後五時を過ぎしばらくしたところで、誰一人欠けることなく元の場所へと帰還。


「僕と馬郎君は駅付近を見て回ったんですけど空いてる場所はなかったです」

「四、五人ほどなら受け付けてる場所もあるんですけど、それ以上は無理な場所ばかりですね」

「私とアレクシィさんは周辺を回ったんですが、成果はそれ以下です」

「王城周りの人気は凄いですね。シングルルームさえ全て埋まっていました」

 

 足で探した組の成果は上記の四人含め、みないまいちであり、


「まぁ全力ダッシュで探すわけでもなければその程度でしょう。私は八件、候補地を見つけましたわよ」

「おろろ。数は同じなんだね。もしかして場所も同じ?」

「流石に全部が被ってるわけではないでしょう。確認させてくださいな」

 

 対するメイとイレは、相応の地位についている両親の力を使ったこともあり、相応の成果を叩き出した。

 とはいえそれはそれで悩む事態ではあった。


「しかしそれはそれで困ったな」

「何がですの? 一応言っておきますと、宿代はこちらで全て支払いますわよ。非常時ですもの。お父様も良いとおっしゃっていましたわ」

「当然それもありがたいが、候補地が多いと迷うんだよね。いい選別方法があればいいんだが」

「そんなのホテルごとのレビューを見ればいいではありませんか」

「十数ヶ所のレビューを見るのは大変ではありませんか」

 

 理由は上記の通りで、メイと狗椛ユイが顔を突き合わせながらそう言い合い、かと思えば言い争いを開始。そんな二人を置き去りにして、過半数が持っている携帯端末で評価のレビューや内装などに目を向け始める。


「そうやって探すのもいいが、実際に見て決めるってのもありじゃないですかい?」


 そんな面々の考えを変えるように口を挟んだのは一行の中で最も大人びて見える刃渡東一郎で、大勢の視線が彼へ。


「いえその…………これから探して全員の意見を合わせるとなると、日没の時間を過ぎてしまう気がしましてね。候補の中に入ってる宿が近くに一件あるようですし、ひとまずそこを見てみるというのはいかがかと思いましてね」

「一理あるな。行ってみるか」


 意見を聞いたところで我龍が動き出し、他の者らも彼に引っ張られるような形でそのホテルへと足を運んでいくのだが、たどり着いたのは繁華街の端にあるホテルで、五階建て石造りのやや古びた建物であった。


「いらっしゃいません。当ホテルへようこそ。ご宿泊の予約をされてるお客様でしょうか?」

「実は予約はしていないものでして。ただこちらが本日十人分以上の空室が空いていることを確認して伺ったのですが、宿泊する事は出来ますか?」


 良照やエラッタを筆頭として数人がホテルの内装を確認。少々古ぼけた見た目とは違いビジネスホテルを遥かに上回る、金の装飾が施されたシャンデリアやピカピカに磨かれた家具を見て息を飲み、他の面々が受付からすぐのところにある待合スペースに座りやって来たスタッフから飲み物を貰う中、ヌーベが受付に立つ黒髪をオールバックにした長身痩躯の男性と会話。


「確認しましたがおっしゃる通りお部屋は空いていました。いかがいたしますか?」

(レビューを見ましたが問題なさそうですわ)

(内装も悪くねぇしここでいいんじゃねぇか?) 


 受付の男性がそう返事をしたタイミングでレビューの確認をしていた面々がそう返答。


「でしたらここにいる人数プラス一人でご宿泊をさせてもらってもよろしいでしょうか」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 彼らは一夜の宿をエルレインの繁華街端にある、ホテル『バンピーロ』へと泊まることにしたのであった。


 自身らの身にどのような不幸が降りかかるかも知らずに。


ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


皆様お久しぶりです。そしてあけましておめでとうございます。二週間ぶりに帰ってきました。

やや日を開けていたのもあり、今回のお話は振り返りと出てくるキャラクターの再確認多め。

そして一日目の舞台。不穏なモノローグを入れられたホテル『バンピーロ』に到着です。


ここでどのような物語が繰り広げられるか。それは速めにお伝えする事ができるかと思います。


それではまた次回の明後日に、ぜひご覧ください!

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