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新たな西本部長と賢教の案内人 二頁目


「さて、どこまで話したかな?」

「今しがた体を洗いに行った女の人が案内役って話までだよ。大丈夫? 定年前にボケちゃった?」

「あぁ、そうだったそうだった………………それと、いちいち煽るのは君の悪い癖だぞシェンジェン」

「へーい」


 顔を洗い、血で塗れたカソックを着替えてから数分後、マージィアが自身の私室に帰還。そこでただ一人待っていたシェンジェンに対する声は先程までと比べるとやや強張っており、そんな自分を戒めるように彼は一度咳き込んだ。


「………………話を戻させてもらおう。彼女を案内役に選んだのにはワケがあってね。端的に言ってしまえば、極度の人見知りを少しでもいいから直してほしい」

「別に問題はないけどさ、そもそもの問題としてそれって案内人には不適切じゃない。ここは世界に名だたる西本部なんだからさ、もっといい人材がいるでしょ」

「そんなことはない。君たちがどんな道筋で進むのかまでは知らないが、安全確保という面で言えば彼女を超える人材は四大勢力全てを見渡してもそうそういないと断言させてもらおう」

「………………なるほどね。そういう意図での選択ね」

「そうだ」

「だとするなら断るのも気が引ける、かな」


 それだけで彼は先ほどまでの余裕を取り戻し、感情の機微を感じさせない声で断言。

 彼が注目しているのがリインの持つ回復術師としての側面であると理解すると、シェンジェンも納得せざる得なかった。


「お話は終わったのシェンジェン君?」

「うん。不服な人もいるかもしれないけど、賢教で活動している間はリインさんが案内役で決定だ」

「いやいや不服なんて微塵もないよ。パパも言ってたけどあの人は回復術師としては凄いんだから。『旅の安全を確保する』なんて意味じゃ、これ以上ない適任だって」

「それは危険な場所に飛び込む場合の話だろ。今回の旅でそんな場所を回るつもりはないんだって」


 そこまで話し終えたところでシェンジェンは西本部長の私室から出て廊下へ。

 外で待っていた他の面々と合流しイレと話し始めると、その後を追うように西本部長のマージィアが出てきて、


「あの行列に並ぶのも大変だろう。従業員用の通用口を使うといい。ちなみに最初の目的地はどこかね」

「あ、はい。最初はここで、次はシェンジェン君が賢教総本山のエルレインを案内してくれる予定です」


 彼が穏やかな口調で尋ねると馬郎が返答。


「ふむ………………足はどうするのかね?」

「イレさんが作ったロボッチョ意外なのは確定ですわね」

「え~さ~み~し~い~」

「お黙り! あんな拷問器具になんて二度と乗りませんからね!」


 続く問い掛けに対してはメイの本気の怒りが炸裂し、となれば選ぶ道は決まっていた。


「車は乗れないし飛行機の当日券でこの人数が受け入れてもらえるとも思えません。ですから電車ですかね」

「………………電車か。ならば君たちに試練が訪れるだろう」


 ゆえに全員を代表してヌーベが返事をするのだが、帰って来た答えを聞き数人が眉を顰め、


「はぁ? それってどういう事さ」

「君たちに幸があることを願おう」

「返事になってないし!」


 今度はシェンジェンが全員の意見を纏めて口を開くが、マージィアは取り合わない。

 ロボットが決まった言葉を返すように慣れた様子でそうを返すと、踵を返し自室へと撤退。


「お、お待たせしましたぁ! 皆さん! よ、よろしくお願いしますぅ!」


 後を追って詳しい内容を聞こうと思ったシェンジェンだが、そうするよりも早く背後から声が聞こえてくる。

 ゆえに振り返ってみれば、女性用の黒いカソックに袖を通したリイン・アンリアルが医療関係者であることを示すように黒色のナース帽を被り、大量の荷物を詰め込みパンパンとなったボストンバックを抱えながら出現。


「あ、うん。よろしく」


 包帯を両腕と両足に巻き付けているという奇妙なファッション。それに先端部が綺麗に揃えられていない腰まで伸びた黒い長髪はあまりお目にかかることのない奇妙なもので、毒気を抜かれたシェンジェンはマージィアを追いかけるという主目的を忘れ返答。

 直後に良照に『とりあえずいこっか』と言われてしまえば今更追う気にもならなかったゆえ、シェンジェンは先導する他の者に大人しくついていく。


「うう、ぐすっ!」

「え? え?」


 そのまま一行は従業員用の通用口から出ていくのだが、外に出た直後、いきなりリイン・アンリアルがすすり泣き始めた。


「メェ!? いきなりどうしたんですかご婦人!?」

「す、すいません! お目付け役とはわかってるんですけど………………他人と旅行に行くのなんて初めてでして! か、感極まって涙が出てしまうんですぅ!」


 ガルゴネシアが慌てて理由を聞けばなんとも気の抜けるもので、一同は肩を落としたり安堵の息を吐くのだが、そんな彼らの前で一歩前に進んだリインは横転。

 なぜかと思って足元を見てみると側にあった小石につまずいたようで、額を切った彼女は自身の使う回復術ですぐさま修復。


「あ、あのぉ………………皆様にお伝えしておかなくちゃいけないことがありましてぇ」

「それはいいんだがあの電車に乗ったほうがよくねぇか。エルレイン行きって書いてあるぞ」

「え、えっとぉ………………………………」

「あ、話したいことがあるんですよね。とりあえず電車に乗った後に聞きますね」

「いえ、その………………」


 しばらく歩き続け駅まで到着したタイミングで彼女は何かを話そうとするのだが、一行は最後まで聞くことなくちょうどやって来たエルレイン行きの列車に乗車。


「な、なんだこりゃ」

「やっぱりそういう反応になりますわよね。私も賢教にはパパママにお付きの者達と何度か訪れたのですが、未だに慣れませんわ」


 賢教ゆえに内装は内装は近代的な物とは程遠く、電球は科学技術を用いた物ではなく粒子の研究によって開発された浮遊する球体。シートは貴族衆全域で使われているようなゆったりとしたものではなく、術式を施した事でベットのような反発力と座り心地の良い柔らかさを得た木製のベンチであり、戸惑う我龍を先頭に全員が乗車。


「それで、お話したいことってなにさ?」


 シェンジェンが慣れた様子で腰掛けを操作し他の者らも見よう見まねで弄り出す中、質問を投げかけられたリイン・アンリアルが両手の人差し指を合わせながら周囲を確認。


「あ、あのですね、実は私、異能持ちなんですよ」

「へぇ。それは素晴らしいね。もしかしてなんかの自慢だったりする?」


 その様子にあまり余裕がない事を察したヌーベが頬杖を突きながら軽い口調で尋ねるのだが、帰って来たのは全否定するかのように残像を残す左右への首振りで、


「ち、違います! 全然そんなんじゃありません! むしろ厄介だから皆さんに気を付けてもらいたくって!」

「気を付ける? それはどういうことですか?」


 慌てて口にした内容を聞くと、第二高校の副将を務めていたアレクシィ・ディノイアが探るような声色でそう質問。

 そこに籠っている猜疑心に似た感情を察したリインは自身が年上なのも忘れて肩を大きく揺らし、


「そ、そのぉ………………私の持つ異能は『不運』というものでして………………つまりですね、私と一緒に居る皆さんにもその影響が………………………………」

「うらぁ! 我々はアグラ団! この列車をいただきに来たぁ! 乗客は金品全部おいて窓から飛び降りろや!」

「キシャーキシャー!」


 説明を続けていたところで、右腕を巨大な大砲に変え顔をマスクで隠した巨体と、二足歩行のトカゲ男が出現。


「ふん!」

「「アギャ!?」」


 即座にシェンジェンがエアボムで爆破させ窓の外へと放り投げたが、


「………………………………あの人、クーリングオフってできないかなぁ」


 同時に窓の外に放り投げた小言は、まぎれもなく彼の本音であった。




ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


新キャラクター紹介回その2。トラブルメーカーなリイン・アンリアルの紹介です。

後々説明される事ではありますが、彼女が回復術に優れてるのは自分の怪我を治す事が異様に多かったためです。

ちなみに言うと彼女の異能『不運』は、『果て越え』の一角クソメガネの異能『幸運』の真逆に位置するものですが、流石にあそこまでぶっ飛んではいません。

今回の最後にあったようなかなり不幸な事態を招く事はあれど、埒外の結果までは起こさないくらいですね。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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