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新たな西本部長と賢教の案内人 一頁目


「いらっしゃいませ! シェンジェン様御一行ですね! 今回の旅に関して長が………………」

「どしたの?」

「いえその………………随分と個性的な物に、お乗りのようで………………」

「あー別にそこまで遠慮しなくて、言いたいように言っていいよ」

「そ、そうですか。でしたら………………すっごくキモイものにお乗り何ですね皆様!」

「…………正直なのは美徳だけど、そこまでド直球なのもどうかと思うよ」

「とりあえず次の給与査定を楽しみにしておいてね! パパに言いつけてやるからさ!」

「え゛っ!?」


 午前11時35分。3時間ほどの移動を終えシェンジェンら十数人が最初の目的地である西本部へと到着するが、その際の顔色は二つのグループに分かれていた。


「も、もう嫌ですの………………私コイツの事が大っ嫌いですの」

「あー………………今度同じ方法で移動する際は、僕と一緒に乗るといい」


 過半数はさほど問題なく、頬に当たる心地いい風を楽しみながら周囲の風景を見る事が出来たのだが、背が足らず延々と揺らされていたメイは顔面蒼白になっており、守衛の人物が指摘していた気味の悪い機体に乗っていた我龍とガルゴネシアの二人は、他の機体と比べ安定性に欠けていたため甲羅部分に必死に掴む必要があり、絶えず力を込めていた影響で両腕がパンパンに膨れ上がっていた。


「VIP待遇ってのか? 慣れないな」

「そこまで驚くような物かしら? 普段でしたらここに、執事ら数十人がついてきますのよ」

「金持ち目線で語るなっての。こっちは下町育ちの一般人だぜ」


 そんな彼らであるが、我龍の口にする通り一般的な人らとは違う待遇で迎えられていた。

 賢教に入るために大勢の人らが入場ゲートで何らかの手続きを行っている中、彼等はその行列を避けて端にある『STAFF ONLY』という文字が記入された扉の中へ。

 端の方においてある機材を避けながら歩いていくと階段を登り、そこから更にしばらく歩くと最奥にある部屋に到達。

 シェンジェンはノックを三回行い、『入りたまえ』と答える重厚感のある声を聞くと中に入った。


「よく来たな諸君。この場所の主として君達を歓迎しよう」


 言いながら彼らを出迎えたのは、『本部長室』というネームプレートが掲げられた部屋の主。

 鷹のように鋭い瞳を携えた上で綺麗に切り揃えられた茶色い髪の毛と口ひげを蓄え、鍛え上げた肉体を男性用の黒いカソックコートで隠した西本部の長。

 大司教マージィア・ジ・アルファである。


「転送装置を使って来なかったという事は、手段までは知らないが何らかの乗り物に乗ってここまでやって来たのだろう? 長旅ご苦労だったな。お茶の準備をしているので飲んでいくといい」

「……どうも」


 彼はにこやかに笑いながら部屋の隅に置いてあったほうじ茶を部下の女性に持ってこさせ、学生たち一人一人に配っていくのだが、一緒にやって来た者達がありがたくもらう中、シェンジェンの顔は暗い。


 なぜならシェンジェンは彼の事があまり好きではなかった。

 それは今から数年前、初めて彼と会った時から変わらぬ感情で、目の前の男はどうにも掴みどころがなかった。

 穏やかな物腰で接して来るのだが本心というものが決して見えず、何か裏で企んでいる気がしたのだ。

 さらに言えば模擬戦を行う際は決して全力を出さず、そのくせこちらの全力は確実に捻じ伏せてくる。


 その意地の悪さを彼は心底嫌悪していた。


「で、案内役は誰がやってくれるの。まさかマージィアさん直々ってことはないよね?」

「どうしたのシェンジェン君。随分と語気がきついけど」

「というか普通に失礼ですね。立場をわきまえるべきでは?」

「………………失礼しました」


 そんな内心がそのまま出てしまうと良照とエラッタの二人が声を上げ、シェンジェンは形だけではあるが謝罪。

 受けたマージィアはさほど気にした様子もなく、朗らかに笑いながら持ち上げた腕を振り、


「子供の癇癪に付き合うほど気は短くないのでね。気にする必要はないさ。それよりも話を進めよう。君たちの案内役なんだが………………急用に出てから帰ってこないな。少々待ちたまえ」


 直後の物言いに対しシェンジェンは顔を歪めるのだが、案内人の話になると彼は顔を曇らせ、奥に置いてある端末を操作。


「………………むぅ」

「えっと、ここを押したら動かせると思いますよ」

「む、そうかすまないね。機械類の操作は苦手でね。助かるよ」


 家永馬郎が遠慮がちに指摘すると、彼は下の階に連絡。

 案内人が誰であるか知らないため、まとめ役のシェンジェンも含めた全員が黙って待つしかなく、


「これは………………」

「物音か?」


 しばらくしたところで廊下を大急ぎで走る音が届き扉の前にいる我龍とヌーベの耳に届き、気になった二人が背後を振り返ったタイミングで彼女はやって来たのだが、その姿は中々に刺激的だ。


「お、おおおおお遅れてすいましぇぇぇぇぇん!」

「「!?」」


 扉を開くと同時に飛び込んできた彼女は自身の容姿が全く分からないほど血で濡れており、勢いよく中に入ると同時に一番近い位置にいた我龍とヌーベの顔面に付着していた血液が飛散。


「あ、ワワワワワワァ!?」

「なん、なんなんでしょうかこの化物は!?」

「す、すいませんすいません! すすすすぐに拭きましゅ!」


 他大半がいきなり慌てる中、シェンジェンが冷静に見てみればどうやら付着している血は全て彼女自身の物ではないようで、懐から汚れていないハンカチを取り出すと突然の事に固まっている二人の元へと近寄って行き、


「ヘブッ!?」

「ギャァァァァァァァァァ!?」

「何をされるのですか! パパに言いつけますのよぉぉぉぉ!?」


 そのまま顔を拭こうとするのだが、腕に巻いていた包帯から伸びている部分に足を引っかけると横転。

 今度はお嬢様であるメイとユイの二人の体に血をべっとりと付着させる結果になり、


「ご、ごめんなさい! ごめんなさいごめんなさい! お、お役に立つので許してぇぇぇぇ!!」


 勢いよく取り乱した彼女は急いで立ち上がろうとするが、内心が反映されたように上手く立ち上がれず、再び横転。今度は良照や馬郎へとぶつかっていく。


「流石に落ち着き給えリイン君」


 それを止めたのは西本部長であるマージィアで、転びそうになった彼女を支えるように体を挟むと、皺と傷が幾重にも刻まれた大きな掌で彼女をキャッチ。

 こうする事で彼女の体はやっと動きを止め、


「ぶふっ!?」

「す、すいません! 殺さないでください本部長ぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 しかし止まりきらなかった腕がマージィアの顔面に直撃。真っ赤な線を彼の体に描く結果に終わった。


「うーん百点満点」


 それを見て、シェンジェンは初対面ではあるが彼女。

 優やアイビスに並ぶ回復術師の名手、リイン・アンリアルに好ましい感情を抱いた。

 

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


夏休み編が本格開始。

今回の話である程度傾向が見えてきたかもしれませんが、この夏休み編は四章から十年後の惑星『ウルアーデ』を見て回るのと同時に、新キャラクターの登場や、これまで出てきたキャラクターの変化に結構重点を置いてます。

その上でいくつか事件という名のドタバタ騒ぎだったりキャラクターの深掘りもするので結構なボリュームに。


まぁ全体的に気軽な話が多いので、気楽に楽しんでいただければと思ってます。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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