祭りの終わり 夏の始まり
ガーディア・ガルフとの遭遇に仇であった原口善との衝突。
上記の経験を筆頭に十六という若さにして数多くの経験を重ねてきたシェンジェンであるが、これほどの衝撃を受けたのは初めてだと確信をもって言えた。
「本当に…………君、いや貴方は賢者王なのか………………?」
「もちろん! そんな嘘をつくような事はしないよ!」
オルレイユに存在する八つの高校を巻き込み開催された夏休み特別対抗戦。
それが終わりを迎え茜色の空が世界を包んだ頃、仲間達を先に全員帰らせたシェンジェンは観覧車に乗り、向かい合う。
「けど来てくれてよかったぁ!」
「どういうこと?」
「結構しっかりと自己主張してたつもりだったからさ。これで誰にも気づかれなかったら、ウルアーデの現状をひどく嘆くところだったんだよ」
「………………そうならなくてなにより、です」
金髪をうなじの辺りまで伸ばした髪型に幼い顔つき。それに顔に張り付いた無邪気な笑顔に関してならば、類似する者は世界中を探せばごまんといるだろう。
けれどシェンジェンを見つめる虹色に輝く瞳が、全身から放つ『果て越え』のものに極めて近い領域のオーラが、上に立つ者が時折見せるような癪に障る態度が、目の前の存在が報告にあった超常の存在。すなわち『賢者王』を名乗っていた少年だと訴えかける。
「………………目的はなにさ?」
そんな彼と向かい合ったシェンジェンであるが、ガラにもなく緊張していた。
誰が相手であろうと多少の礼節ははらうものの好き勝手にする、風属性の使い手に多い自由奔放とした性格の彼が、相手の一挙一足を決して見逃しはしないと神経を張り詰め、難しい顔をしながら真正面に座る自分よりも小さな少年にそう尋ねる。
「そんなに緊張しないでよ! 今のこれはさ、ただの観光だよ!」
「………………………………観光?」
そんな姿を目にして小馬鹿にしたように腹を抱えて笑う少年の様子をシェンジェンは信じられずにいたのだが、彼は言葉を撤回しない。観覧車の最上部から見れる景色。
夕日を背景にして様々な文化がごった煮になったオルレイユの町を眺め目を細めながら、静かな声で語り出す。
「もうちょっと真面目な話をすると、賢教が気になってるんだよね」
「賢教が?」
「うん。多分知ってると思うんだけどさ、今賢教は結構ヤバめ何だよね。だから僕が直接出向いて、何とかできないかなって思ってるんだ」
「………………」
「信じてないって顔に書いてあるけどホントの事だよ。実は昔からたまにやってるんだよね。こういう世直し紛いの事をさ」
それに対しシェンジェンはこれ以上疑問を投げかけるようなことはしない。
数十秒のあいだ沈黙を貫き、ややあって一呼吸すると開口。
「貴方には、聞きたいことがたくさんある。答えてもらいたい」
かつて蒼野らの前に現れた時の事。
この世界の歴史に関して。
他にも様々な彼しか知らないであろう事柄を聞こうと思ったが、そううまくはいかない。
「それは別の機会にしよっか。観覧車、終わっちゃったしね」
二人を乗せていた観覧車がスタート地点に戻り、出入り口が開く。
するとシェンジェンよりも三頭身ほど小さな少年が飛び出し、綺麗に整備された石畳の上へ着地。
「けど冷たい態度を取り続けるとかわいそうになってくるからこうしよう。君達第七高校と僕の所属する第四高校の戦いが、次に行われる今季最後の対抗戦で行われるよね。もしそこで僕に勝ったのなら、君が抱えてる問題に対する答えを授けよう――――――無理だと思うけどね!」
振り返りながらそう言うと、シェンジェンが何かを言うよりも早く歩き出し、瞬く間にその姿を消した。
「願いを叶えたいのなら戦え、か。この星らしい方法でいいね………………勝ち方はまだ思い浮かばないけど」
張り詰めていた空気が溶け、朝から続いていた非日常的が終わりを告げる。
とすればシェンジェンは消えゆく夕日を眺めながらホテルに帰還し、まだまだ残ってる夏休みを堪能しようと考える。
「………………もしもーし。すぐに出れなくてごめんよ蒼野さん。で、新しい依頼かな?」
そのタイミングで仕事用の端末から連絡がよこされる。
そうなれば少々煩わしくは思うもののシェンジェンは気持ちを切り替え、
『仕事と言えば仕事なんだけど、得する話と言えば得する話だなこれは』
「どういうこと? 説明してよ」
『もちろんだ。実はお前に一つ頼みたいことがあって………………』
そんなシェンジェンの予想を裏切るように、神の座に就いた蒼野はある提案をした。
そしてその一週間後、八月の中旬に差し掛かるタイミングで、
「ホントに俺らもいいのかクソガキ」
「いーのいーの。なんせ上層部が、行きたい奴らは全員誘っていいって言ったんだからね!」
「それにしてもこれは多すぎる気がするんだけど………………あ、会長よろしくお願いします」
「うんよろしく」
シェンジェンは、ヌーベは、良照は、いや十数名の若者は、貴族衆から飛び出し賢教にいた。
「さて! まずは賢教の総本山が目的地だ! キリキリ歩こう!」
シェンジェンという少年にとって一生忘れることのできない夏の大型行事。
友人達との七泊八日の長期旅行が今始まる。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
申し訳ありません。投稿ボタンを押すのを完璧に忘れていました。
ですので急ぎ更新します。
そんな今回の話は十話以上続いた対抗戦最終話。そして夏の大型旅行の始まりです!
この旅行の目的は色々あるんですが、一つは十年後の世界観光。
これまでオルレイユという箱庭的な世界での話が進みましたが、賢教や神教の様子も見ていこうって感じです。
全体的にワイワイする話が中心となる気がします。
それではまた次回、ぜひご覧ください!
あ、次回は明日更新します




