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本日2話目。
ラスボスという存在をご存じだろうか?
RPGなどをやった事がある人は分かるだろうが、最後に出てくる、とても強い人やモンスターや邪神の事だ。
例えば、攻撃力が99999だったり、半分までHPを減らしたら、HPを全回復する奴だったり、倒しても、倒しても蘇る奴だったり、第三形態まであるような奴だったり、紅白の最後に必ず出てくる御方の様な存在を思い浮かべてくれたいいだろう。
まぁ、とても簡単に、一言で言えば「とても理不尽な相手である」とだけ理解して頂ければ問題ないかな。
さて、話を戻そうか。
私達は辛くも初戦を勝ち抜いて、強敵を打倒した事で、少しばかり調子に乗っていたのかもしれない。
そんな思いが神にも届いてしまったのか、まさか次の戦の相手があんなチート集団となんて、誰が想像する事が出来ただろうか?
『では、次の対戦は『黒百合騎士団』バーサス『魔王軍』ですっ!!』
「うおおおおおおお!!!」
「わーーーーーー」
「エローーーい!!」
「まじかぁぁああああ!!!」
「すげぇええええ」
「かっけぇぇえええ!!!」
凄まじい歓声と共に、私達の前に現れたのは……黒を基調としたチームカラーの異様な集団。
漆黒の騎士鎧を身に纏い、馬鹿デカイ両手剣を背負った涼さん。
邪悪な魔女の様な格好をし、大きな帽子で顔を隠した赤松先生。
背中に翼をつけ、妖艶なサキュバスの恰好で歓客に手を振る五十嵐先生。
阿修羅のお面を付け、鬼の様な格好をした教頭先生。
賢者が闇に魅入られた様な、黒のローブを着た高等部学園長。
そして、悪魔の様な角を付け、漆黒のマントを着て、正に魔王の様な恰好で玉座に腰掛けるのは、我らが総学園長様だ。
そう、私達の次の相手は『魔王軍』と名乗る教員チームだった。
『魔王軍……これが、これこそが『魔王軍』だぁぁあああ!!!』
『そうですね。解説の私が説明しないでも、もう皆さんはあの姿を見れば分かるでしょう。あの凄まじい威圧感と貫録。そして、全てを呑みこむ理不尽なほどの圧倒的な力。つまり、今我々の前におられる方々こそが『魔王軍』ですね』
魔王軍の衝撃が強すぎて、実況と解説が何か言っているが耳に入ってこない。
「お、おい。アレは……ないんじゃないか?」
「反則……だろ……え?反則だよな?」
「……オワタ……」
「ひゃっはー。ひゃっ、はぁ……あー……これは無理だろ?」
級友達がそんな事を口にする。
私も同意見だが、目の前の魔王軍から目が離せない。
試合の合図はまだだが、目を離した隙に全滅している様な、嫌なビジョンが見えてしまう。
そんな私達の姿になのか、総学園長――いや、魔王様が可笑しそうに笑いながら語りだした。
「くっくっくっ。生徒会は一つ大きなミスを犯した。今期の生徒会長は中々姑息な奴だったが、まだ詰めが甘いわい。己が本当に勝ちたいのならば、なぜこの学園で一番強い者が参加できない様なルールを作らないのか?儂には不思議でならんかったわ」
そう、この学園で一番強い存在。
それは三年の先輩や生徒会長や、大学部の先輩方ではなく……この学園の教師達だ。
各分野で飛び抜けた才を持つだけではなく、他の分野でもそれなりの知識を持ち、大抵の事は涼しい顔でこなす猛者達。
性格が酷くぶっ飛んでいて、普段の態度はアレな人もいるが、彼らは私達を教え導く為に、総学園長が自ら集めた精鋭中の精鋭なのだ。
外の普通の学園ならば『生徒たちが楽しむレクリエーション』に教師勢を集めて、ガチで参加などしない。
あったとしても、体育祭や運動会の保護者参加リレーで、若手教師が出たりするぐらいだろう。
しかし、この学園は、この都市は、教師達も含めて普通ではないのだ。
きっと、これまでのルールブックも当然の事過ぎて『教師のレクリエーションの参加を禁ずる』とは書いてなかったのだろう。
いや、書く必要が無かったのだろう。
だが、ルール上問題なければ参加出来ちゃうのが『レクリエーション』であり、このふざけた学園だ。
そして、会場はこの盛り上がり……生徒会も『鬼畜眼鏡』も、今更参加禁止なんて言える筈もない。
いや、いくらぶっ飛んだ教師が多いからと言って、常識があり善良な先生もいるので、教師陣は参加しなかったのだろう。
というより、これはきっと「生徒会長の癖にクリーンなレクリエーションを汚した罰」のつもりだったのだろう。
きっと「初戦に勝って、喜んでいる所に絶望を与えてやる」という演出と、みせしめだったのかもしれない。
だが、蓋を開けてみると、私達が勝ってしまった為に『魔王軍』の相手が私達となったのだろう。
正に、とばっちりだ。
ふざけんな!クソ眼鏡!
なぜ私達が公開処刑されなければならないんだ!?
『では、これより『黒百合騎士団』対『魔王軍』の戦闘開始だぁああ!!』
ビビる私達を他所に、無情にも開始のゴングが鳴り響く。
魔王様率いる『魔王軍』は、私達が動くまで待ってくれているのか、動く気配が無い。
ええい、こうなったら自棄だ!もう知らん!
私は慌てふためく級友達に喝を入れる為に、大声で叫ぶ。
「みな聞きなさい!教師一人一人が化け物で、単独で私達を壊滅可能です。私達は……生きて帰れないでしょう。でも!でも、このまま何もせずに、ただ負けるなんて嫌でしょう?」
級達の顔を一人一人見ながら叫ぶ。
「せめて、せめて!一撃でもいい!かすらせるだけでもいい!一矢報いてやりましょう!皆に命じます!あのいけすかない魔王の首を獲りなさい!無理なら、髪の毛一本でも毟り取ってやりましょう!」
私は息を大きく吸い、力の限り叫ぶ!
「逝くぞ!全兵!突撃!」
「「「「「うぉぉおおおおお!!!!」」」」」
私の鼓舞で級友達は、震えながらも声を張り上げ、各々の武器を持ち突撃する。
総学園長は正面から突撃する私達の姿に口角を上げ笑い、左手で頬杖ついたまま、右手をゆっくりと私達の方に向け、魔王軍に告げた。
「蹂躙せよ」
――滅びの言葉を。
「「「「「はっ!」」」」」
こうして、私達の『レクリエーション』は二回戦負けで幕を閉じた。
次の更新は明日の12時です。




