表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薔薇や百合ではありません  作者: 小林 あきら
第一章 薔薇や百合ではありません
29/48

5-5

『姫の言葉で『黒百合騎士団』は立て直したみたいですね』

『そうですね。むしろ逆に士気は上がっていますね。流石は姫と言ったところでしょうか。不足な事態は起こるものですが、この不利な状況でも、それを力に変えていますね』

『おや?姫自ら進軍する様ですね。これはどういう事なのでしょうか?』

『そうですね、生徒会長への挑発かもしれませんね。例えば“私はここにいるぞ。かかってこい!”という事なのでしょうか?それとも別の作戦なのでしょうか?いやぁ読めませんね。しかし、これは相手にとってチャンスでもありますね。これは面白くなりそうですよ』



 さて、突然だが我が精鋭たる近衛兵を紹介しよう。


 騎士、葵君。

 白銀の騎士鎧に身を包むその姿は、正に勇者様って感じだ。

 彼はこのクアルトに騎士になる為に来たというその言葉に相応しく、その剣の腕はクラス一だったので、私の護衛に選ばれた。

 強く優しく、爽やかで甘いマスクの騎士様。

 本当にカッコイイ。無駄にカッコイイ。

 なんか、光属性の魔法とか、エクスカリバーとか持ってそうだ。

 異世界モノの物語ならば、彼は確実に主人公だろうな。


 斥候兼盾兼弓兵兼雑用、エロ川君。

 盗賊みたいな革鎧を身に纏いながら、腰に短剣、手に大盾、背に弓を持つ。

 近いものを上げるとしたら、凄腕の冒険者や傭兵だろうか?

 でも、エロ川君にその評価はなんかむかつくから、盗賊でいいだろう。


 エロ川君の負担が半端ないが、彼は『優勝した暁にはイイモノをあ・げ・る』と艶っぽく言ったら、数日で剣と魔法以外クラスの誰よりも強くなった。

 正直、彼の『エロ』への執着を舐めていた。

 流石はエロの巨匠(マエストロ)の名は伊達じゃない。

 ただ、まぁ優勝したら……いや、後の事は明日の私に任せよう。


 治癒魔術師、楓。

 どこかシスターの服を連想させる、真っ白な服を着ているが、服のサイズが小さいのか、楓の胸が大きすぎるのか、たぶん両方なのだろうが、胸の所の生地が悲鳴を上げそうなぐらいパツンパツンだ。

 何がとは言わないが、圧倒的存在感だ。

 楓の主な役割は、その笑顔で私の精神を回復させる役だ。

 ここで「そんな役本当に必要か?」と問われるかもしれないが、断固として必要である。

 誰にでも出来る訳じゃない。

 存在するだけで価値のあるポジションだ。

 むしろ、この戦で最も大切な役割と言ってもいいだろう。


 楓に危害を与えようものなら、私の風船がどうなろうと盾となる所存だ(錯乱)。


 そして、指揮官の私だけど……簡単に言うと『姫騎士』の様な恰好だ。

 自分で言うのもなんだが、きっと「くっ!殺せ!」というセリフがとても似合う、凛々しくも可愛さを併せ持った素晴らしい格好だと思う。

 この服装が戦闘に向いているか、いないかで問われれば、完璧に向いていない。

 ニーソックスはあるがスカートが短くて、ちょっと動いただけで、見えてはいけない所が見えそうで、めちゃくちゃ恥ずかしい仕様となっている。

 私は仮にも『魔女姫』なので、足や色々な露出を隠すためにもローブを羽織ろうとすると、なぜか男女問わず級友達に本気で怒られた。

 横暴だ。

 そして、服の作りが私だけガチだ。

 エロ川君と楓監修で、我がクラスの被服部が頑張って魔改造してくれた……というか、されたが正しいだろう。

 私の希望など1ミリも採用されていない、凄まじい服となった。

 横暴だ。



 さてさて、普通は総大将自ら遊撃に出てくるべきではない。

 ルール確認の時にも言ったが、このレクリエーションのルールでは、総大将がやられたら負けなのだ。

 そう、負けなのだが、やられたらやり返さないと気が済まない私は、のこのこと挑発に乗って、誘い出されてやったのだ……表向きは。


「さて、釣れるかな?」


 そう呟き周囲を警戒しながら歩く。

 あっちは最初の一撃で動揺させるか、もしくは、怒りを向けさせようとしたのだろう。

 ならば、あの鬼畜眼鏡なら立て直した後も、私の性格を読んで、こうして私を誘い出して、殲滅するつもりかもしれない。


 だが、それを逆に利用させてもらおう。

 残念ながら狩るのはこちら側だ。


「ぐあっ」


 周りから呻き声の様なくぐもった声が聞こえる。

 その声がした所で即座に足を止め、周囲を警戒する。


「ぐっ」

「敵がぁあああ!」

「退け!退けぇぐっ!」


 その声はひとつ、ふたつと増えていく。

 そして、また静寂が支配する。


「はの2、任務完了」

「はの4、任務完了」

「はの5、任務完了」


 姿は見せないが私の近くで、短く単語と任務完了の言葉だけを告げる。

 どうやら、暗殺部隊は確実に仕事をこなしている様だ。

 暗殺部隊は忍者の末裔や、軍の特殊部隊の子共など、戦闘に特化し、特殊な人達だけで組織した『S』の精鋭だ。

 実に素晴らしい戦果だ。


「くくくっ」


 私の口から笑いが零れる。

 見事に敵が罠にかかってくれた。


「総員、敵の武器を回収し、速やかに移動せよ!」

「「「はっ!」」」


 こうやって、釣りをしながらじわじわと追い詰めてやろう。




「大分狩ったね、悠さん」

「そうね」


 葵君の言葉に頷き周囲を見渡す。

 あの後、同じように二度ほど私が囮となって、狩りをした。

 大将が前線にいる、つまり目の前にエサをぶら下げた状況で、抑えが利かなくなった敵兵は、攻撃してくるが、こちらの暗殺部隊か、葵君によって倒された。

 エロ川君が大盾を構え防御しているうちに、暗殺部隊と葵君による強襲。

 これが鉄板だった。


「よしっ、一先ず本陣まで引きます」


 敵の遊撃隊と思われる部隊は狩ったので、これ以上は時間の無駄だろう。

 それに、流石にあちらもこっちの行動に気付いただろうし、対処しきれない数の敵で襲われても困る。私達は一度本陣に戻る事にした。

 その矢先――


「っ!?危ない!」

「え?」

「ぐっ!」


 その声が聞こえたと思ったら、視界が揺れ、地面に押し倒される。

 そして、なぜだか目の前には、青い瞳のイケメンの顔がある。


「え?え!?」


 軽いパニックになる私を他所に、葵君は大声で指示を出す。


「敵襲!暗殺部隊!」

「くそっ!」


 葵君の声に、暗殺部隊がすぐさま動く。


「我らが姫に!」

「万死に値する!」

「楽に死ねると思うなよ!」

「天誅!」

「ひぃぃいいいいっ!」


 少しすると、暗殺部隊のちょっと危ない声と、敵兵の悲鳴が聞こえる。

 いきなりの事で何があったのか分からなかったが、どうやら葵君は敵の襲撃から身を呈して守ってくれたのだろう。

 その行為に感謝は尽きない。

 いや、むしろ称賛に値するだろう。


 だ・が!


 目を動かし、手や足を動かし体の感覚を確かめ、更に、頭を回転させ、今の状況を確認する。

 そう、私は今葵君に押し倒されている。

 葵君の右手が私の頭の後ろに回され、倒れた衝撃から守ろうとしてくれたのだろう。

 なんて紳士的だ。

 しかし、葵君の左手が私の美乳(偽乳パット)に、押し当てられている。

 なんてラッキースケベだ。

 そして、葵君の右足が、私の股の間に押し付けられるか、押し付けられないかの、絶妙な位置取りをしている。

 なんてやくざ者だ。


 そしてそして、何よりも顔がめちゃくちゃ近いのだ。

 私が色々確認の為に動かしていた視線を戻すと、葵君と目が合い、互いに時間が止まった様に固まる。


「…………」

「…………」


 ここまで来ると、焦りや恥ずかしさを通り越し、逆に冷静になった私は頭の中で考える。

 ここで、私の取る行動は一つだろう。

 いや、一つしかないだろう。


「きゃーーーー!!!!」


 初心な女の子らしさを心掛け、私は精一杯大きな声で悲鳴を上げる。


「す、すまない!」


 葵君はテンパって顔を真っ赤にし、謝りながら私の上から慌てて退く。

 顔が近くて多少ドキドキしてしまったが、私は心の中で「流石は主人公属性の騎士様だな。この私にラッキースケベなんて馬鹿な事カマした男は初めてだよ」なんて、感心していた。

 まぁ、心の底から男に触られるのは嫌だけどな!


 だが、正直の所、私は女じゃないので、胸を触られた事に対して、そこまでとやかく言うつもりも無い。

 本来なら言うつもりはないが、今の私は『皆が愛する姫』である。

 ここは女としての行動を取らなければなるまい。


 私は胸を隠す様に手で抱き当てながら、体を起こし、少し上目遣いを意識して、葵君を軽く睨みながら、非難の声を上げる。


「あ、葵君!」


 きっと、これで葵君が「ご、ごめん」と謝って、私が「う、うん。わざとじゃないしね、それより、助けてくれてありがとう」みたいな事を言って、今の事を無かった事にすれば、全てが丸く収まるだろうと思ったが……そうはならないようだ。


 私のこの完璧な予測を打ち砕いたのは、まさかの楓だった。


「あ、葵君!私だって触った事ないのに!ズルイ!」


 楓が葵君に対して様々な感情が混ざった様な顔で叫ぶ。

 楓は非常に動揺している様で、変な事を口走っている。


 え?動揺しているんだよね?

 楓さんや?普通は女の子同士でも胸は触らないよ?

 変な漫画でも読んだのかい?


「僕は葵君の事を誤解していたようだ!ナイス!ラッキースケベ!」


 エロ川君は、エロ川君で、流れる鼻血をそのままに、葵君の肩を叩いて、グッと親指を立てた。

 葵君はなんとも言えない顔をしたが、エロ川君の顔はあまりにも爽やかで、どこか賢者の様でもあった。


「姫!お怪我は?ご無事でしょうか!?」

「騎士葵よ!姫を守った事は見事だが……見事だがぁぁアぁああ!!」

「くぇrrちゅいおp@あsdfghjkl;zxcvbbmん」

「くそっ!くそぉぉおお!!姫の貞操を守る事が出来なかった!」

「この罰は我が死を持って……」

「何の為に我らが存在しているというのだぁあ!!」

「私は何の為に生きていたのだ……」


 姿を見せなかった暗殺部隊の各員もパニックを起こしたのか、全員姿を見せて私の周りに集まり、口々に何か言っている。


「……あ〜うん…………撤収!!」


 あまりにもカオスな状況に、私はこの場の事態を収拾する事を放棄して、当初の予定通り、我が遊撃部隊の撤収を命じた。


 愛されてるな〜、私。





次の更新は明日の12時です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ