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『では、これより一回戦の『フィールド』を決めたいと思います。ポチっとな!』
そんな涙目の私を他所に、中央にある大型モニターにルーレットの様なものが映し出されて、実況の言葉でルーレットは回り始める。
『そうですね、この『フィールド』によって戦い方が変わりますからね。では、私も、ポチっとな!』
解説の人の言葉でルーレットが止まり、ステージが決まる。
『出ました!一回戦のステージは『旧市街』だぁああ!!!ここはどうなるでしょうか?解説の山田さん』
『そうですね、旧市街。荒廃した街をテーマに作られたフィールドですね。崩れた壁や物陰が多く、荒廃した家など隠れる場所もたくさんあります。それを如何に利用できるか、そして、敵に利用させないかが勝負の肝となるでしょうね』
『ありがとうございます』
こちらもありがとうございます。
解説の山田さんは本当にいい仕事をしてくれる。
情報は大切な武器になるからな。
そして、両方のチームは距離を取って、開戦の合図を待つ。
『では、第一回戦。『黒百合騎士団』対『デーモンアーミー』戦闘開始です!』
実況の開始の掛け声と同時に、パァンと銃声が聞こえる。
「え?」
気が付くと、山本さんの頭に着いた紙風船が割られていた。
『おーっと!?いきなりの攻撃か!?』
『そうですね、これは『デーモンアーミー』の遠距離攻撃でしょうか?気になる所ですね』
実況と解説の声が聞こえるが無視だ。
今は正確な状況の確認が先だ。
開始早々にやられた山本さんの死に、級友達は動揺するのが分かる。
「!?……やまもとー!!」
「山本がやられた!」
「くっ!?総員物陰に隠れなさい!早く!急ぎなさい!」
私の声で各々近くの壁や物陰に隠れる。
そして、倒れた山本さんを引きずりながら、物陰に隠れた級友達が叫んでいる。
「め、メディーック!山本が、山本がぁぁあああ!!」
「馬鹿、落ち着け!山本さんの紙風船はもう……」
「くそぉ……くそぉ、山本ぉぉ……仇は俺がとってやるからな」
その声を横目に、山本さんはむくっと立ちあがり、そそくさと戦死と書かれたエリアに引っ込んでいった。
そんな彼らのやり取りを見ていたら、騎士鎧を着た級友が私の元に膝をついて報告した。
「隊長!山本さんの死因は……おそらく魔法銃による狙撃です」
「魔法銃ですって!?」
開始早々にやってくれたな、鬼畜眼鏡め!
相手チームが用意していた銃は、水鉄砲ではなく魔法銃だったのか……いや、待て?魔法銃って、殺傷能力のある武器じゃないのか?
『どうやら今入った情報によると、先程の攻撃は魔法銃による狙撃らしいですね』
『そうですね。あの距離から当たるだけの魔法銃を用意するとは、生徒会長のこの試合に、このレクリエーションに対する情熱が伝わってきますね。しかし、最も注目する点は、あの距離で当てたスナイパーの腕でしょうね』
実況と解説がそんな事を言っているが、こちらの被害は甚大だ。
主に精神面でだが。
「おいおい、魔法銃なんてアリか?」
「馬鹿、相手は生徒会長だぞ?アイツが武器を審査するんだから、アリなんだろうよ」
級友達が口々に文句を言う。
これはマズイな。
この動揺を含めて、あの鬼畜眼鏡の狙いか。
『お〜っと、ここで『黒百合騎士団』は浮足立っていますね』
『そうですね、魔法銃という強力な武器が、敵にあると分かりましたからね。動揺するのも分かりますね。魔法銃は危険があるので、このレクリエーションでは禁止されていそうですが、どんな手を使ったのでしょうね』
『そこは謎としておきましょう、山田さん。この学園の闇は深いですからね』
実況と解説さんの言う通りだ。
アイツが生徒会長の時点で、何でもアリというのは分かっていた事だ。
更に言うと、武器は事前に生徒会の認可を得なければならないので、生徒会長はこちらにどんな武器が、あるかも知っている。
なるほど、戦況は始まる前からこちらが不利だったのだ。
―――だが。
「だが、それがどうしたというのです?」
「「「え?」」」
私の言葉に級友達――いや、我が兵士達はこちらを見る。
「こんな事で一々動揺してはなりません!山本さんの死を無駄にする気ですか!?彼女の尊い犠牲で、私達は奴らの武器の情報を得ました!あんな遠くから、ちまちまと撃ってくるだけの奴らに、このまま何もせずに負けていいのですか!?」
動揺する皆を叱咤激励する。
こんな所でやられてたまるかと!憎き敵を倒せ!我が友の仇を討てと!
「顔を上げなさい。貴方達の目は敵を捉える為にあります。武器を取りなさい。貴方達は搾取されるだけの存在ではありません。私の声を聞きなさい。我が声を聞き、戦場を掛けるのです。貴方達の命は私のモノです。決して、奴らのモノではありません。私を信じ、私に付き従い、私と共に戦うのです!」
そして、周りを見渡すと、私の声に動きに注目していた皆は、もう諦めや、暗い顔をしていない。
私の言葉に導かれ、皆の顔つきが変わった。
そう、狩られる側から、狩る側へと。
「よしっ!良い顔になりました!それでこそ我が兵です!少々予定は崩れましたが、まだ想定内です。こちらも作戦通りに行動します!各班に別れ、まずはあの忌々しい遠距離攻撃を潰します!」
「「「はっ!」」」
私の命令に我が兵は、はかったかの様に声を合わせて返事をする。
私は満足そうに頷いて、右手を前に突き出し、力の限り声を張り上げる。
「斥候隊は無理をせず敵兵を探り、報告を密に行いなさい!特にあの狙撃兵には気を付けるのよ!」
「はっ!」
「重兵隊は大盾を構え、敵の攻撃を引き受けなさい!絶対に後ろに通してはなりません!」
「はっ!」
「弓兵と魔法兵は優先的に狙撃兵を狙いなさい!遠距離攻撃があちらだけのものではない事を、思いしらせてやりなさい!」
「はっ!」
「剣士諸君は弓兵と魔法兵を優先的に守りなさい!敵が不用意に近付いてきたら、思う存分暴れてやりなさい!」
「はっ!」
「何かあれば参謀の上P君の指示に従うように!これより、プランBを実行します!暗殺部隊と私の近衛兵は共についてきなさい!私自ら遊撃に出ます!」
「「「はっ!」」」
「奴らに、我らの恐ろしさを教えてやりなさい!」
「「「「「御心のままに!」」」」」
私の言葉に我が兵達は一糸乱れぬ敬礼をする。
めちゃくちゃカッコいいけど……こいつらクアルト式の敬礼を練習でもしていたのか?
やるなぁ!
まぁ、皆のやる気が出たので何も文句はないけどな。
さぁ、次はこちらの番だ。
山本さんの仇はしっかり取らせてもらおう。
その血を持ってなっ!




