2-5
次の日、起きると少しだけすっきりしていた。
鏡に映る自分の姿は、昨日と変わらず金髪碧眼の美少年だ。
うん、これなら大丈夫だ。
「さて、今日も一日頑張ろう!」
気合いを入れて部屋を出て、食堂で朝食を食べる。
朝食は美味しかったので、ついついおかわりをしてしまった。
寮生の人達と他愛のない会話をしてから、寮生の人達と別れ、鞄を取りに行き学園へ向かう準備をする。
その後、涼さんと一緒に一足先に学園へと向かう。
「ふぅ……転校初日は緊張しますね」
「ん?そうか?」
「ええ、まぁ。それに、僕にはアレがあるじゃないですか?」
「ああ……まぁな。でも、葵君は美少年で通ると思うぞ?」
「そうですかね?」
「大丈夫。俺が保障しよう」
「なら、心配ないですね」
涼さんと学園について色々と会話をしながら登校すると、あっという間に学園に着いた。
きっと、涼さんが会話をコントロールしていたのだろう。
学園に着くと涼さんが職員室に寄り、教師達の朝礼というか朝の会議?みたいなのが終わるまで廊下で待ち、合流して教室に向かう。
あードキドキしてきたなぁ。
こういうのは何度やっても慣れない。
そんな僕の心の中を見透かしたのか、涼さんは僕の肩を叩きニヤリと笑う。
「大丈夫。俺のクラスは……色んな意味で優秀だから、直ぐに馴染める」
「はい」
「よし、少し待ってなさい」
その言葉に少し気持ちが軽くなる。
涼さんは僕の顔見て頷いた後、いつの間にか着いていた『2−S』と書かれた教室に入っていった。
「ほいほい、諸君おはようさん!んじゃ、出席取るぞ〜、朝倉」
「はい!」
教室からは涼さんの明るい声と、それに返事をする元気な声が聞こえてくる。
出欠を取り終えると、涼さんの不敵な笑いが廊下まで聞こえてくる。
「ふっふっふっ。さて、もう誰かから聞いている奴や、会っている奴もいると思うが……なんと!今日はお前らの待ちかねた、転・校・生だ!はい!リアクション、ドン!」
涼さんが盛大に煽ったおかげか、教室から雄叫びにも似た声が聞こえてきた。
「おおおおおおお!」
「先生!美少女ですよね?」
「ひゃっはー!ひゃっはー!」
「馬鹿がっ!ここはショタ系の美少年と相場がだな――」
「先生!それはつまりエロい展開が――」
「はいはい、リアクション終了!静粛に!」
涼さんが騒ぐ生徒に向けて、両手をパンパンと叩いて鎮める。
とても訓練されている変な集団だと思ってしまった。
いや、違う。きっとこれは、ノリがいいと表現すべきだろうね。
それに、日本人は空気を読むのが非常に上手なのだ。
そう思おう……うん。
「おーし、流石お前らだ。場も温まったし、じゃあ、葵君入って〜」
ついに来た。失敗しない様にボケを……いや、普通で良いんだ。
彼らのノリに合わせなくても、普通に無難に行こう。
きっと涼さんがフォローしてくれるだろう。
「よしっ!」
気合いを入れて、教室のドアを開け中に入る。
クラスメイト達の息を呑む声が聞こえる。
きっと、僕の容姿の事だろう。
この特殊な街でも、金髪碧眼はやはり珍しいのかもしれない。
注目されるのは少し照れるが、恥じる必要はない。
この髪と目はお父様とお母様の子の証だ。
この名前はお爺様とお婆様の孫の証だ。
昨日も寮で変な目で見られる事なく、受け入れてもらえた。
卑屈になることなく、堂々としていればいい。
僕は胸を張り、教卓の涼さんの横に並び、出来るだけにこやかに笑いながら喋る。
「みなさんはじめまして。僕の名前は葵=フォン=アインスブルクと申します。この容姿と名前から分かって頂けるかもしれませんが、僕は外国の人間でもありますが、祖父が日本人で、四分の一はこの日本の方と同じ血が流れております。所謂クォーターですね」
「うおおおお!なんかカッケぇな!クォーター」
「ああ、良く分からないがスゲぇな!クォーター」
僕の言葉に何人かのクラスメイトは反応した。
奇異の目で見られるのは仕方がないが『カッコイイ』や『スゲェ』などの好意的な反応は、正直有難い。
「ほれ、静かに聞け!葵君が喋れんだろ!」
涼さんもしっかりフォローしてくれる。
大丈夫だ、何の問題も無いじゃないか。
そう思うと、心に少し余裕が生まれる。
「ふふ、ありがとうございます。名字では呼びにくいと思いますので、気軽に『葵』とお呼び下さい。では、これから至らぬところもありますが、仲良くして頂けると幸いです」
僕はそう言いながら胸に手を当てて軽くお辞儀した。
このお辞儀は、涼さんが登校時にウケルからと言って教えてくれたお辞儀だ。
「ほぉぅ」
どこからか感嘆の声が漏れる。
どうやら、本当に合っていたらしい。
ホッとしながら顔を上げると、一人の女生徒と目が合った。
「あっ」
「あっ」
そして、目が合った瞬間固まってしまった。
まさか、こんな所で再会できるなんて……偶然と呼ぶには出来過ぎている気がする。
その女生徒――悠さんも、僕と目が合ってしまった事で、固まってしまった。
悠さんも訳が分からないのか、顔を赤くして、また慌てているようだ。
無論、僕もそうだから分かってしまう。
彼女から目が離せない。
息が苦しくなって、なぜだか胸が締め付けられる。
昨日の訳の分からない感情がぶり返すようだ。
それに、なぜこんなにも胸が高鳴るのだろう?
これは何かの冗談なのだろうか?いや、そんな事ある筈がない。
だって、そんな事……あってはならないのだ。
どこか使い古されたお約束の様な形での美少女との出会い。
これが物語なら、きっとそれは『運命の出会い』となるのだろう。
しかしながら、僕はこの出会いにあまり良い感情を持つ事が出来ない。
僕と同じぐらいの年頃の男子なら、美少女とあんな事があれば、運命という物を信じてしまうのかもしれない。
夢見がちな男の子なら、このままあの美少女に愛の告白でもしてしまうかもしれない。
でも、僕は違うのだ。
調子に乗っているとかそんなのではない。
彼らとは一線を画すと言ってもいい。
ここで、僕の秘密を明かそうと思う。
なぜなら、僕は――いや、私は女なのだから。
お読み頂きありがとうございます。
さて、ここまでお読みいただいた皆様ならお分かりだと思いますが、この作品は女装男子と男装女子が、互いに同性だと勘違いしたまま恋に落ちるという、なかなかファ○キンなラブコメです。
タグ通りですね。
こんな感じで続けていきますので、想像と違った方には申し訳ありません。




