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薔薇や百合ではありません  作者: 小林 あきら
第一章 薔薇や百合ではありません
13/48

2-5

 次の日、起きると少しだけすっきりしていた。

 鏡に映る自分の姿は、昨日と変わらず金髪碧眼の美少年だ。

 うん、これなら大丈夫だ。


「さて、今日も一日頑張ろう!」


 気合いを入れて部屋を出て、食堂で朝食を食べる。

 朝食は美味しかったので、ついついおかわりをしてしまった。

 寮生の人達と他愛のない会話をしてから、寮生の人達と別れ、鞄を取りに行き学園へ向かう準備をする。

 その後、涼さんと一緒に一足先に学園へと向かう。


「ふぅ……転校初日は緊張しますね」

「ん?そうか?」

「ええ、まぁ。それに、僕にはアレがあるじゃないですか?」

「ああ……まぁな。でも、葵君は美少年で通ると思うぞ?」

「そうですかね?」

「大丈夫。俺が保障しよう」

「なら、心配ないですね」


 涼さんと学園について色々と会話をしながら登校すると、あっという間に学園に着いた。

 きっと、涼さんが会話をコントロールしていたのだろう。

 学園に着くと涼さんが職員室に寄り、教師達の朝礼というか朝の会議?みたいなのが終わるまで廊下で待ち、合流して教室に向かう。


 あードキドキしてきたなぁ。

 こういうのは何度やっても慣れない。

 そんな僕の心の中を見透かしたのか、涼さんは僕の肩を叩きニヤリと笑う。


「大丈夫。俺のクラスは……色んな意味で優秀だから、直ぐに馴染める」

「はい」

「よし、少し待ってなさい」


 その言葉に少し気持ちが軽くなる。

 涼さんは僕の顔見て頷いた後、いつの間にか着いていた『2−S』と書かれた教室に入っていった。


「ほいほい、諸君おはようさん!んじゃ、出席取るぞ〜、朝倉」

「はい!」


 教室からは涼さんの明るい声と、それに返事をする元気な声が聞こえてくる。

 出欠を取り終えると、涼さんの不敵な笑いが廊下まで聞こえてくる。


「ふっふっふっ。さて、もう誰かから聞いている奴や、会っている奴もいると思うが……なんと!今日はお前らの待ちかねた、転・校・生だ!はい!リアクション、ドン!」


 涼さんが盛大に煽ったおかげか、教室から雄叫びにも似た声が聞こえてきた。


「おおおおおおお!」

「先生!美少女ですよね?」

「ひゃっはー!ひゃっはー!」

「馬鹿がっ!ここはショタ系の美少年と相場がだな――」

「先生!それはつまりエロい展開が――」

「はいはい、リアクション終了!静粛に!」


 涼さんが騒ぐ生徒に向けて、両手をパンパンと叩いて鎮める。

 とても訓練されている変な集団だと思ってしまった。

 いや、違う。きっとこれは、ノリがいいと表現すべきだろうね。

 それに、日本人は空気を読むのが非常に上手なのだ。

 そう思おう……うん。


「おーし、流石お前らだ。場も温まったし、じゃあ、葵君入って〜」


 ついに来た。失敗しない様にボケを……いや、普通で良いんだ。

 彼らのノリに合わせなくても、普通に無難に行こう。

 きっと涼さんがフォローしてくれるだろう。


「よしっ!」


 気合いを入れて、教室のドアを開け中に入る。

 クラスメイト達の息を呑む声が聞こえる。


 きっと、僕の容姿の事だろう。

 この特殊な街でも、金髪碧眼はやはり珍しいのかもしれない。

 注目されるのは少し照れるが、恥じる必要はない。

 この髪と目はお父様とお母様の子の証だ。

 この名前はお爺様とお婆様の孫の証だ。

 

 昨日も寮で変な目で見られる事なく、受け入れてもらえた。

 卑屈になることなく、堂々としていればいい。


 僕は胸を張り、教卓の涼さんの横に並び、出来るだけにこやかに笑いながら喋る。


「みなさんはじめまして。僕の名前は葵=フォン=アインスブルクと申します。この容姿と名前から分かって頂けるかもしれませんが、僕は外国の人間でもありますが、祖父が日本人で、四分の一はこの日本の方と同じ血が流れております。所謂クォーターですね」

「うおおおお!なんかカッケぇな!クォーター」

「ああ、良く分からないがスゲぇな!クォーター」


 僕の言葉に何人かのクラスメイトは反応した。

 奇異の目で見られるのは仕方がないが『カッコイイ』や『スゲェ』などの好意的な反応は、正直有難い。


「ほれ、静かに聞け!葵君が喋れんだろ!」


 涼さんもしっかりフォローしてくれる。

 大丈夫だ、何の問題も無いじゃないか。

 そう思うと、心に少し余裕が生まれる。


「ふふ、ありがとうございます。名字では呼びにくいと思いますので、気軽に『葵』とお呼び下さい。では、これから至らぬところもありますが、仲良くして頂けると幸いです」


 僕はそう言いながら胸に手を当てて軽くお辞儀した。

このお辞儀は、涼さんが登校時にウケルからと言って教えてくれたお辞儀だ。


「ほぉぅ」


 どこからか感嘆の声が漏れる。

 どうやら、本当に合っていたらしい。

 ホッとしながら顔を上げると、一人の女生徒と目が合った。


「あっ」

「あっ」


 そして、目が合った瞬間固まってしまった。

 まさか、こんな所で再会できるなんて……偶然と呼ぶには出来過ぎている気がする。

 その女生徒――悠さんも、僕と目が合ってしまった事で、固まってしまった。


 悠さんも訳が分からないのか、顔を赤くして、また慌てているようだ。

 無論、僕もそうだから分かってしまう。


 彼女から目が離せない。

 息が苦しくなって、なぜだか胸が締め付けられる。

 昨日の訳の分からない感情がぶり返すようだ。


 それに、なぜこんなにも胸が高鳴るのだろう?


 これは何かの冗談なのだろうか?いや、そんな事ある筈がない。

 だって、そんな事……あってはならないのだ。


 どこか使い古されたお約束の様な形での美少女との出会い。

 これが物語なら、きっとそれは『運命の出会い』となるのだろう。

 しかしながら、僕はこの出会いにあまり良い感情を持つ事が出来ない。


 僕と同じぐらいの年頃の男子なら、美少女とあんな事があれば、運命という物を信じてしまうのかもしれない。

 夢見がちな男の子なら、このままあの美少女に愛の告白でもしてしまうかもしれない。


 でも、僕は違うのだ。

 調子に乗っているとかそんなのではない。

 彼らとは一線を画すと言ってもいい。



 ここで、僕の秘密を明かそうと思う。




 なぜなら、僕は――いや、私は女なのだから。





 お読み頂きありがとうございます。

 さて、ここまでお読みいただいた皆様ならお分かりだと思いますが、この作品は女装男子と男装女子が、互いに同性だと勘違いしたまま恋に落ちるという、なかなかファ○キンなラブコメです。

 タグ通りですね。


 こんな感じで続けていきますので、想像と違った方には申し訳ありません。


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