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友人の彼女とプール

 気まずい雰囲気が俺たちの間に流れていた。

 白石さんはパーカーを着けなおし、周囲にはその姿を嘆いては恋人に睨まれている男たちが多数存在する。


 全ては俺の不用意な一言のせいなのだが、こればかりは仕方ないだろう。


「ごめん、変なこといって」


 沈黙が気まずく、他にかける言葉も思い浮かばなかった。


「えっ?」


 白石さんは俺の声に反応してこっちをみた。


「う、ううん。ちょっと吃驚しただけだから。でも、日野君……ちょっと言い過ぎだったかな?」


 愛想笑いを浮かべる白石さん。


「確かに言い過ぎたかもしれない。女の子の水着姿の感想なんて初めてきかれたからさ。ここで嘘を言うのも違うと思ったし、あまりにも可愛くてつい口から出てしまったんだよ」


 俺は混乱しながらも自分の心境を白石さんに整理して伝えるのだが……。


「ふぇっ!?」


 すると彼女は先程までよりも取り乱すと目を泳がせ、そして…………。


「うぅ……。そ、そういうとこだよっ! 日野君!」


 何故か恨みがましい目で俺を睨みつけてくるのだった。







「へぇー、本当に色々あるんだねぇー」


 施設に入ると案内版に目が行く。

 現在地から左に行くと屋外のプール施設があり、右側に行くと天然温泉の施設があるらしい。


 そのほかにも建物の屋上には露天風呂があり、高いところから景色を見渡せると施設のアピールがされていた。


「まずはどこから行こうか?」


 色々ありすぎて目移りがする。俺は白石さんにどこから回りたいか確認をするのだが……。


「やっぱり夏と言えばプールでしょう!」


 彼女の答えは実にシンプルだった。




「さて、ロッカーを借りようか」


 プールのフロアに辿り着くと、流れるプールや25メートルのコース。子供が泳げる底の浅いプールに滑り台など、様々なプールが目についた。


 俺たちはタオルや財布などを持ってきていたので、それらをロッカーに預けることにした。


「結構大きいロッカーだから1つ借りればいいよね?」


 元々大した荷物を持っているわけではない。白石さんはそういうとタオルが入った手提げを中へと押し込んだ。


「白石さん、そのまま入るつもり?」


 だが、まだパーカーを脱ぐ気配がないので、ロッカーを閉める前に確認した。


「えっと…………」


 何やら言いよどんでいる。彼女は自分の身体を抱きしめるようにして悩む素振りを見せると……。


「うん、せっかくだから脱ごうかな……」


 覚悟を決めたのかパーカーを脱いでロッカーへと入れた。

 周囲の視線が一気に集中する。これだから白石さんも躊躇っていたのだろう……。


「行こう日野君!」


 彼女は俺の手を握るとプールサイドへと引っ張っていく。まるで恥ずかしさを紛らわせるような行動なのだが、顔が赤いのでまるわかりだった。





「水が冷たくて気持ちいいねー」


 準備運動を済ませてプールに入ると彼女は眩しい笑顔を浮かべた。


「それにしても白石さんには感謝だな」


「えっ? 何急に。どうしたの?」


 水に入ると先程までの悶々としていた気分が洗われるかのようだ。


「こうしてここに来れたのも白石さんがチケットを使ってくれたからだし、俺1人だったらクーラーの効いた部屋に籠ってアイスを食いながらゲームをしてるだけだっただろうからさ」


「そんなことないよ。お礼を言うのはこっちだもん。日野君には散々迷惑掛けちゃったし。今日だって私の我儘に付き合ってもらったようなものだし」


 どうやら強引に誘った負い目があったらしい。


「そんなことはないよ。俺も白石さんと遊べるのが楽しかったりするし」


 誠二にたいする後ろめたい気持ちはある。

 だが、今だけは彼女のためにも俺の本心を告げるべきだろう。


「ほ、本当にそう思ってくれてるの?」


「勿論だよ」


 彼女はパシャパシャと水をかきわけると俺の傍へとくる。そしてじっと見上げてくると……。


「じゃ、じゃあささっき日野君が言った遊びもやってみたいな」


「俺が言った遊び?」


 何か言った覚えがない。俺は首を傾げると……。


「その……クーラーの効いた部屋に籠って家でアイスを食べながら遊ぶの」


 ぽそりと呟く。次の瞬間俺は言葉の意味を察すると…………。


「さ、流石にそれは……」


 お家デートというやつではなかろうか?


「誠二君に話をしておくからお願い」


 そう言われてしまっては俺としても断れない。俺が頷いて見せると……。


「やった! 楽しみっ!」


 白石さんは新たな約束を取り付けたことで喜びを露わにするのだった。

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