表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/21

夜中に友達の彼女と二人きり

「うわっ! ここで疫病神を俺に押し付けるか!?」


 目の前には大型モニターがあり、某すごろく系ゲームが映っている。


「ふふふふ、1位を狙うのは当然だよねー日野君?」


 友情破壊ゲームとして名高いこのゲームは割とバランス調整が良くできていて、1位の人間を結託して嵌めれば中々差がつかずに良い勝負をできる。


 先程から白石さんは誠二を狙っては妨害工作をしていた。


「じゃあ、次は俺か……とりあえずブロック落として前後を封鎖したからしばらく誠二は動けなくなるな」


「てめぇっ! 死体蹴りは卑怯だろ!」


 何やら騒いでいるが、誠二はこのゲームの持ち主だ。当然このゲームを熟知している。真っ先に倒すべき相手だろう。


「あははは、ナイス日野君」


 白石さんが俺に笑いかけてくる。


「任せておけって!」


 俺はそんな白石さんに対し明るく答えるのだった。




「だーーーっ! 負けたっ!」


 数時間にも及ぶ激闘の末、ゲームはエンディングを迎える。

 1位が俺で2位は白石さんだ。


「大体なんで俺ばっかり狙うんだよ愛華っ! 裕二を蹴落とした方が自分が1位取れただろうがっ!」


「うーん、誠二君の叫ぶ姿が楽しかったからかな?」


 唇に手を当てると無邪気な表情を浮かべる。

 白石さんが執拗に誠二を狙ってくれたおかげで漁夫の利を得た形になる。


「うわっ。もうこんな時間になってるな……」


 スマホを取り出してみると時間は19時だった。俺は泊まることになっているので平気だが、白石さんはそろそろ帰る時間だろうか。


 俺は内心でほっとしながら誠二が切り出すのを待っていた。


「じゃあ、晩飯はデリバリーで済ませるとするか」


 ところが、誠二の口から出たのは違う言葉だった。


「あっ、じゃあ私はピザ屋さんのパスタが食べたいな」


 それどころか白石さんまで乗っかる始末だ。


「と言ってるけど裕二はどうだ?」


「ああ、俺も別にそれでいいよ」


 再び緊張が蘇ってくる。俺はなるべく白石さんの方を見ないように答えるのだった……。






 食事を摂った後は映画観賞を始めた。

 俺としては浜野監督が手掛けた映画を推したいところだったのだが、誠二と白石さんがさっさと決めてしまったので今見ているのは去年の冬に上映された恋愛映画だ。


 内容は結婚していた若い夫婦だが、ある日夫が行方不明になる。妻は嘆き悲しむのだが、5年後に再会を果たす。その時には夫は違う女性と結婚している。

 お互いの事情を把握した3人が話し合いの末記憶を取り戻させるために色々やりながら共同生活を送るという少し重たい話だ。

 

 良くある話だなと思って見ていると……。


「…………ぐすん」


「えっ?」


 白石さんが泣いていた。膝に手を置きじっとモニターを見つめている。

 俺はあっけにとられると視線を外すことを忘れる。白い頬を涙が伝う。それでも涙を拭うことをしない白石さんを見ていると俺の心臓が大きく脈打った。


 結局、俺は何も言わずに映画へと戻る。そしてそれからすると映画は終わった。



「ふぅ……終わっちゃったね」


 映画の最後では男が記憶を取り戻し、どちらの女性と共に生きていくか選択を迫られていた。

 結局男は元の女性ではなく今の女性を選んだ。


「まさかこんな結末になるなんて思わなかったなぁ」


 映画の感想をぽつりとつぶやくと……。


「あ~っ! 誠二君寝てるよ!」


 随分と反応がないかと思ったら誠二は舟を漕いでいた。


「ちょっと誠二君。寝るなら部屋に戻りなよ」


 白石さんは誠二の肩を揺すると……。


「ん。そうだな……俺寝るわ……」


「えっ? ちょっと!?」


 誠二は立ち上がるとドアへと向かった。そして半分閉じた目で俺たちを見ると……。


「そんじゃおやすみ」


 そう言うと出て行ってしまった。


 夜はもう遅い。てっきり白石さんを駅まで送るのかと思っていたのだが…………。

 俺はあっけにとらわれると慌ててスマホを確認する。それなりに遅い時間だがまだ電車が無いわけではない。仕方ないので彼氏の代わりに見送りをするしかないと考えているのだが…………。


「ねえ、日野君」


 白石さんの声に心臓がドキリとする。気が付くと彼女が近づき俺を見上げている。

 目元は少し赤くなっており潤んだ瞳が俺を見つめている。


 その妙に落ち着かない表情に俺の頭が混乱していると…………。


「話をしたいの。ここじゃ何だからベランダに出ない?」


 彼女の手が俺に触れる。その手は夏だというのに冷たく……心地よかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ