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【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第二章 Ambush

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混迷―⑤―

当作品の無断転載、AIを含めたあらゆる二次利用を禁止します!!

Do not reupload / use my writing for any purposes, including for AI!!

「動くなよ?」


 ブルースの前に、ブレザーを着た眼鏡の男子生徒がいた。


 眼鏡の男子生徒は、昇降口でブルースに向けて鋭い視線を送る。


「原田 龍之助」


「ブルース先生?」


 龍之助の目と眼鏡越しに茶色のジャケットと白いストレートパンツを身にまとった自らの姿を、ブルースは認める。


 "政市会"と"政声隊"――"S.P.E.A.R.(スピア)"も含める――という朝の雑音ともいえる活動家団体に、ロックと斎藤 一平という二人が大立ち回りを繰り広げていた。


 全校生徒の注目を集めるなと言うのは、無理な話だろう。


「ブルースで良いよ……リュウ?」


 龍之助が左足を引くが、


「"命導巧(ウェイル・ベオ)":"セオリー・オブ・ア・デッドマン"……周囲の空気を電気分解して水を生成。加圧水流(ウォータージェット)で攻撃する。"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は"記述者"」


 龍之助がブルースの言葉に、足を止める。


()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()もな……」


 ブルースは一歩踏み出し、


「三条、()()()()()()()!?」


 龍之助が、身悶え始める。


 崩れながらも、右膝で立つ龍之助。


 彼の右目を中心に顔の半分ほどが、蒼い光に包まれた。


 赤い光と共に少女も出る。


 彼女も胴と喉をかきむしり、苦しんでいた。


「欧州で"ゲッシュ"を使ったテロを"()()()"()()()()()()()()、決別したら()()()()()……何が目的だ?」


『あなたの様な人に言うと思いますか?』


 声が少女の方から聞こえてきた。


 妙齢の女性の声が()()()()()()()()若干の違和感を、ブルースは覚えながら、


「ということは、龍之助を手放すつもりはなく、俺らに投降する気もないということ?」


『改めて聞くようなことかしら?』


 少女の口からではない。


 しかし、"()()()()"()()()()()三条の声が発せられるたびに、龍之助と彼女から苦しみが伝わる。


「"命導巧(ウェイル・ベオ)":"パラノイド"……確か、石碑型で召喚しか使えないはずだが……これはどういうことだ?」


 ブルースは、苦しむ龍之助と少女を見る。


「ブルース?」


 龍之助が、訝し気に問いかける。


 彼の人間として残る左眼の中で、ブルースが眉をひそめている。


「三条の"命熱波(アナーシュト・ベハ)"は、"破宴の王母"。どちらかというと、リュウや、その赤い女の子に()()()()()()じゃない。それに"命導巧(ウェイル・ベオ)"との組み合わせも縛られる」


 ブルースは外の喧騒の声に耳を向ける。


 炎が爆発し、氷が大地を震わせていた。


 呼応する様に、雷鳴も轟き合う。


 その中でもロックと一平が"政市会"と"政声隊"を迎え撃つ様子が、狂騒曲として流れていた。


「確かに"パラノイド"は、召喚型の攻守両用で、炎、氷に雷を使う。しかし、外の"政治に声を張り上げ隊"に"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の能力を一部与えるというのは聞いたことがない」


 本来、"命熱波(アナーシュト・ベハ)"と"命導巧(ウェイル・ベオ)"の持ち主は一致している。


 しかし、武器は()()()()使える様にしなければならない。


 その対策を"ブライトン・ロック社"は施していた。


 ブルースは、龍之助に向けて肩をすくめる。


 彼は三条の声に注意を払いつつ、校門前の騒ぎを考えた。


 特に、"政声隊"の用意した赤、白、青緑という三色の人型について。


「こちらで調べた限りだと、"政声隊"が首にしている"トルク"は"コーリング・フロム・ヘヴン"という代物らしいな……端的に言うと、人造"命熱波(アナーシュト・ベハ)"を召喚できる。赤い炎を出すのが"ブレイザー"、白で氷が"フロスト"、青緑が雷の"アンペア"……と言ったところか?」


 ブルースは膝をつく龍之助を見下ろしながら、


「"ゲッシュ"という"命導巧(ウェイル・ベオ)"の起動を登録した人格を無効化して使える様にする素子(プログラム)の発展形の兵器で、"トルク"を媒介にしている様だが……?」


 ブルースの言葉に、龍之助のそばに立つ赤い少女から返答はない。


 "ゲッシュ"。


 ()()()()の"命導巧(ウェイル・ベオ)"に搭載された"命熱波(アナーシュト・ベハ)"の保護人格を無効化させるカギの様なものだ。


 所有者のいない"命導巧(ウェイル・ベオ)"が使われた事件の背景には、これが絡んでいた。


「だが、そういった"命熱波(アナーシュト・ベハ)"を弄れるのはサロメの十八番……つまり、"()()()()"()()()()()()……何をしやがった?」


 ブルースは龍之助を見下ろす。


 蒼く輝く龍之助の顔の左半分に映るブルースの目線は回答次第で、攻撃に移れる剣気を含んでいた。


『察しが悪いようですね……まあ、"ホステル"にいなくても()()を手に入れられましたからね』


 ブルースは、三条の言葉を酩酊する。


 その言葉の意味を反芻し、龍之助に映るブルースの表情が強張った。


「まさか、"ロスト・テキスト"か!?」


 龍之助が、ブルースの単語に苦悶の表情で戸惑いながら、


『手に入れられましたから……()()()()で』


 そう言って、現れたのは白い少女である。


『"レン"!!』


 飛び出そうとするが、苦しむ龍之助の姿に、"赤い少女"が我に返る。


 ブルースは、"赤い少女"と"白い少女"を交互に見ながら、


「"ロスト・テキスト"……それもあり得ない。そもそも、"ワンダーウォール"にアクセスしないといけない……それに、"()()()"に喰われる……」


『"第二世代(アン・ダーニャ)"なのに……そういうことも分からない。優越感もここまでくると笑えてきますね?』


「そもそも、"第三世代(アン・トレアス)"がアクセス出来ることがあり得ない……」


 ブルースは肩をすくめると、


『"第四世代(アン・ケフラム)"の筈の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()?』


 "赤い少女"からの抑揚のない三条の声が、ブルースをあざ笑うかのように、


『無駄なことは止めることです……どちらにせよ、()()()()()()……そのために、あきらめるつもりはありませんから』


 僅かに感情が含まれた三条の声が途切れると、龍之助から苦悶の色が消える。


 ブルースは戸惑いながら、校外で行われている乱闘の喧騒に耳を傾けた。

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© 2026 アイセル

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