表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイド―紅黒の翼―  作者: アイセル
第二章 Ambush

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/257

混迷―⑤―

「動くなよ?」


 ブルースの前には、ブレザーを着た眼鏡の男子生徒が立っていた。


 教室が太陽を背にしているためか、廊下を影が差す。


 眼鏡の男子生徒は、喧騒が遠い廊下でブルースに向けて鋭い視線を送る。


「原田 龍之介」


「ブルース先生?」


 龍之助の目と眼鏡越しに茶色のジャケットと白いストレートパンツを身にまとった自らの姿を、ブルースは認める。


 ”政市会”と”政声隊”――S.P.E.A.R.(スピア)も含める――という朝の雑音ともいえる活動家団体に、ロックと斎藤 一平という二人が大立ち回りを繰り広げている。


 全校生徒の注目を集めるなと言うのは、無理な話だろう。


 一呼吸おいて、


「ブルースで良いよ……リュウ?」


 龍之助は左足を引くが、


命導巧(ウェイル・ベオ)“セオリー・オブ・ア・デッドマン”……周囲の空気を電気分解して水を生成。ウォータージェットで攻撃する。命熱波(アナーシュト・ベハ)は“記述者”」


 龍之助はブルースの言葉に、足を止める。


「ロックから話は聞いている……三条と動いているのはわかるぜ……」


 ブルースは一歩踏み出し、


「三条、見ているんだろ!?」


 龍之助が身悶え始める。


 崩れて右膝で龍之助は立つ。


彼の右目を中心に顔の半分ほどが、蒼い光に包まれた。


そして、赤い光と共に少女も出る。


 彼女も胴と喉をかきむしり、苦しんでいた。


「欧州で“ゲッシュ”を使ったテロをサロメ達と引き起こして、決別して今回は日本……何が目的だ?」


『あなたの様な人に言うと思いますか?』


 声は少女の方から聞こえてきた。


 妙齢の女性の声が、少女から聞こえる若干の違和感を覚えながら、


「ということは、龍之助を手放すつもりはなく、俺らに投降する気もないということ?」


『改めて聞くようなことかしら?』


 少女の口から声は出ていない。


 しかし、()()()()()()()()()三条の声が発せられるたびに、龍之助と赤い少女の苦しさが増している。


命導巧(ウェイル・ベオ)“パラノイド”……確か、石碑型で召喚しか使えないはずだが……これはどういうことだ?」


 ブルースは、苦しむ龍之助と少女の前で話す。


「ブルース?」


 龍之助が訝し気に問いかける。


「三条の命熱波(アナーシュト・ベハ)は、“破宴の王妃”。どちらかというと、リュウや、その赤い女の子に干渉する力はない。それに“命導巧(ウェイル・ベオ)”との組み合わせも縛られる」


 ブルースは外の喧騒の声に耳を向ける。


 炎が爆発し、氷がぶつかり、雷鳴がとどろき合っていた。


 その中でもロックと一平が、”政市会”と”政声隊”を迎え撃つ様が狂騒曲として流れている。


「確かに“パラノイド”は、召喚型の攻守両用で、炎、氷に雷を使う。しかし、外の“政治に声を張り上げ隊”に命熱波(アナーシュト・ベハ)の能力を一部与えるというのは聞いたことがない」


 本来、“命熱波(アナーシュト・ベハ)”と“命導巧(ウェイル・ベオ)”の持ち主は一致している。


 しかし、武器は()()()()使える様にしなければならない。


 そのための対策をブライトン・ロック社は施していた。


 ブルースは龍之助に向けて肩をすくめる。


 ブルースは三条に視線を向けつつ、校門前の騒ぎを考えていた。


 特に、”政声隊”の用意した赤、白、青緑という三色の人型について。


「こちらで調べた限りだと、“政声隊”が使うのは“コーリング・フロム・ヘヴン”……端的に言うと、人造“命熱波(アナーシュト・ベハ)”。赤い炎を出すのが“ブレイザー”、白で氷が“フロスト”、青緑が雷の“アンペア”……と言ったところかな?」


 ブルースは膝をつく龍之助を見下ろしながら、


「“ゲッシュ”という“命導巧(ウェイル・ベオ)”の起動を登録した人格を無効化して使える様にする素子(プログラム)の発展形の兵器を“トルク”を媒介にしている様だが……」


 ブルースの言葉に、龍之助のそばに立つ赤い少女から返答はない。


 ゲッシュとは()()()()の“命導巧(ウェイル・ベオ)”に搭載された“命熱波(アナーシュト・ベハ)”の保護人格を無効化させるカギの様なものだ。


 所有者のいない“命導巧(ウェイル・ベオ)”が使われた事件の背景には、これが絡んでいた。


「だが、そういった命熱波(アナーシュト・ベハ)を弄れるのはサロメの十八番……つまり、“ホステル”から門外不出。何をしやがった?」


ブルースの目線は回答次第では、攻撃に移れる剣気を含んでいた。


『察しが悪いようですね……まあ、“ホステル”にいなくても()()を手に入れられましたからね』


 ブルースは三条の言葉を酩酊する。


 その言葉の意味を反芻し、表情が強張った。


「まさか、“ロスト・テキスト”か!?」


 龍之助は苦悶の表情で戸惑いながら、


『手に入れられましたから……()()()()で』


 そう言って、現れたのは白い少女である。


『レン!!』


 飛び出そうとするが、龍之助が苦しみ、赤い少女は我に返る。


 ブルースは、赤い少女と白い少女を交互に見ながら、


「“ロスト・テキスト”……それもあり得ない。そもそも、“ワンダー・ウォール”にアクセスしないといけない……それに、“()()()”に喰われる……」


『“第二世代(アン・ダーニャ)”なのに……そういうことも分からない。優越感もここまでくると笑えてきますね?』


「そもそも、“第三世代(アン・トレアス)”なのにアクセス出来ることがあり得ない……」


 ブルースは肩をすくめると、


『“第四世代(アン・ケフラム)”の筈のロック=ハイロウズは出来て、私に出来ない……そんな理屈が通じると思いますか?』


 赤い少女からの抑揚のない声は、ブルースをあざ笑うかのように、


『無駄なことは止めることです……どちらにせよ、私は取り戻す。そのために、あきらめるつもりはありませんから』


 三条の声が途切れると、龍之助から苦悶の色が消える。


 ブルースは戸惑いながら、校外で行われる乱闘を見下ろしていた。

面白ければ、評価、ブックマークをお願いいたします。



© 2025 アイセル

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ